表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
345/354

21 (量子通信は 過去も繋ぐ)

「数が多いな」

 ワームの数は おおよそ1億…。

 ただ、生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)だと言うのに 小惑星だけで、地球型惑星が無い…ハズレを引いたか?

 とは言え、こちらから 地球を持って行くから問題は無いんだろうが…。

 オレの背中を守ってくれている クオリア機は ワームに攻撃を加えつつ 周囲を見渡して、星の位置から現在地を観測しようとしている。

『ここは…そう言う事か…。

 ここは ネオアース星系だな。』

 クオリアが言う。

「なっ…いや、ラプラス戦で ブラックホールに 飲み込まれたはずじゃあ…。」

『その(はる)か前に 私達が来ていた と言う事だ。』

「過去の空間と繋がったと言う事か…じゃあネオアースって…」

 空間は時間()より高次元のはずだから、特定の時間の空間同士を繋ぐ事も理屈的には 可能な はずだ。

『ああ…これから運んで来る地球だ。

 地形も陸地の形も変わっていたから気付かなかった。

 おそらく大規模な テラフォーミングをしたのだろう。』

『そっこれが この作戦の本来の目的だ。

 これでワームホールを通じて あらゆる過去に量子通信を繋げられる。

 通信が繋がれば エレクトロンをデータ化して現地に送れる。

 これで将来、ラプラスに対抗 出来る様になる訳だ。』

 ナオキが言う。

『だが、これも問題がある…今が西暦何年なのか 分からない事だ。

 もしかしたら ラプラスが来るのは 数千、数万年後先になるかもしれない…そうなったら、私達が残す記録も確実に消失しているだろう。』

 リアが言う。

「まぁそうなるよな…。」

 人類の歴史は 実質300年程度だ。

 数万年前からいたと言われているホモ・サピエンスも大分部の時間は 猿と大差ない生活をしていたとされ、まともな 文明を持ったのが 紀元前数千年…。

 そこから戦争やらで 技術を失って何度も文明をリセットをされつつ、やっと産業革命が始まったのは、オレが生まれた2000年から250年前…。

 そして、そこから50年経った2050年で、旧人類の文明の頂点に辿(たど)り着き、そこからは機械人の文明が始まり、人類は大戦で文明が滅び、長い停滞(ていたい)に入る。

 人類の歴史だけでも、これだけリセットが掛かっているんだ。

 今から数千年後に今の情報が残っているのか、それを情報として正しく受け取れるか如何(どう)か非常に疑問になって来る。

『だけど私達には 最後の鍵がある…。

 私は ラプラスと道連れで ブラックホールに落ちたゲマとの量子の結び付きを維持し続けて帰還した。

 そして その結び付きは 今は 私の予備義体にある。』

 クオリア機がオレに指を差して言う。

「オレか?」

 オレの義体は クオリアの予備義体を改造して作られている。

 となると元は ゲマとの通信維持の為に残されていたのか…。

『そう、これを使えば ゲマ側に情報を送れる。

 私達が残していた最後の手だ。

 ただ、向こうとパスが繋がっていて 情報も送れるが、ゲマ側からの返信が一切無い。

 ブラックホールの特異点近くにいるから量子レベルで影響が出ているのだろうが…。』

『私は ゲマとは 仲が良くなかったから この手を使うとは 予想外だった。

 となると ラプラスとの初戦は 止められ無いが、これからのラプラスは止められるな。

 現在、ワームホールを通ったコロニーからの情報を解析中だ。

 もう しばらくすれば ワームホール自体は造れなくても、ワームホールの空間座標の変更技術の解析が終わるだろう。

 現状で 分かっている範囲だと 1度は、通信機を現地に物理輸送しなければ ならなかったが、ナオがいるなら解析時間を大幅に短縮出来る。』

 リアが言う。

「それじゃあ…とっとと地球を呼んで…。

 いや…ナオキ達が ワームホールを使ってラプラスの(とこ)に行くなら、木星のブラックホール化は 誰がやる?

 後に残るオレ達で出来るのか?」

 オレがナオキに言う。

『現状のクオリアの能力では直接は無理…。

 だが、恒星化した月を触媒(しょくばい)に使うなら行ける。』

「え?…なら、地球は?」

『ここは生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)だ。

 ここの恒星でも設置場所を工夫すれば、十分な熱量を確保出来る。』

「なるほど…。」

『会話中 失礼…そろそろ、地球とノスタルジア号が くんぞ…』

 トヨカズが そう言うと、ワームホールの前で列待ちになっていたワームの大群の中心から空間が膨張して、中からノスタルジア号と、外壁にしがみ付いている1個連隊のファントム部隊が現れる…空間波状航行の前にファントム部隊を戻したのか…。

 次の瞬間には 更にワームが吹き飛び、馬鹿デカイ黄緑色の地球が現れる…地球が(まと)っている量子光はバリアの役割があるようで、通常型のワームは弾き返されている。

 周辺に拡散したワームは 非常に狙いにくくなったが、地球と一緒に現れたシーランド艦隊が正確に撃墜して行く…。

 その艦隊の中には艦隊に守られているホープ号がある。

『この星系は 私達に任せて貰おう…。

 キミ達はホープ号に乗って太陽系に戻ってくれ…。』

 カルタ中佐だ。

「スターゲイザー号は?」

『移動を中止して待機だ。

 連絡を受けている…月を木星にぶつけるんだろう?』

「そうだ。」

 続いて、コロニーがもう1基ワープアウト…外壁には大きく『Eono(エオノ)』と描かれている…エスペラント語で アイオーンの意味か?

 となると あれが アイオーン都市か…。

 ただ 問題なのは、太陽系の田舎である冥王星(めいおうせい)には、この数日で急増した ファントムが行き渡らなかったらしく、大量のDL部隊が、通常弾で ワームに対処(たいしょ)している。

 どれだけ弾を積んでいるのか分からないが、弾切れ=死だ。

 無限弾でない限り、ワームの大群に対処(たいしょ)出来ない。

『ここで お別れだ。

 オレらは 自分達のコロニーを守りに行く。

 早くホープ号に…。』

 フェニックス部隊が、大量の弾幕を撃ちつつ アイオーン都市 周辺のワームを叩く中…。

 ラザロとマリアが こちらに向けて軽く手を振り、アイオーン都市に向けて加速し出す。

 オレ達 キョウカイ小隊は、シールド全開で量子光を放っているホープ号の前方ハッチ前に行き、全機 手を隣のファントムと握って動かない様にし、コックピットブロックを後ろにスライドさせて、背中合わせの状態にする。

 中から出て来たのは パイロットスーツを着たオレ達 キョウカイ小隊だ。

「ここでお別れだな…。」

『まっ…短かったけど オマエが来てから楽しかったよ…いろんな意味でな…。』

 オレの言葉にトヨカズが返す。

『レナもしっかりな…自分を見失うなよ』

『わかっているわよ 私達は、これからが長いんだから…。』

 ジガがレナに言い、レナが答える。

『さようなら…げんきでね』

『うん…ヒロムによろしく…。』

 カズナは涙の玉をヘルメット内に浮かべながらロウに抱きつく…。

『……。』

『おい…クオリアは 何か無いのか?』

 ハルミが、クオリアに言う。

『いや…感動のシーンに水を差すようで、言い出せなかったのだが『ホープ号』は『エクスマキナ都市』と『ノスタルジア号』と『スターゲイザー号』の4都市と すでに量子通信を構築している。

 なので、私達が過去に行ったとしても、通信自体の時間軸は一緒なのだからVR空間でなら いくらでも会える。』

『うわっホントか…確かに感動シーンが台無しだな…ははは…。』

 トヨカズが笑う。

 それを聞いたカズナは、顔を赤くして下を向いた。

「てな訳で 落ち着いたら連絡をくれ、そんじゃあ、ジガとハルミ、ロウは ホープ号に、オレとクオリアは ホープ号の援護…それじゃあ戻るよ。」

 キョウカイ小隊 全機が、コックピットブロックを閉じ、ジガ機、ハルミ機、ロウ機が 前方ハッチからホープ号に入り、オレ達は ホープ号の左右に付いて援護する。

 ワームの数も 皆の活躍で激減させた事で 今は太陽系側からワームホールに対しての逆流入が始まって来ている。

『ナオト…もう解析が終わっている…早く戻れ!』

 ナオキの声にオレが反応し、盾になってくれた艦隊とファントム部隊が離れ、それと同時に ジガとハルミが動かしているホープ号がオレ達の後ろに付いてくる。

『ホープ号、空間波状航行 準備OK…天尊、座標地点の確保を頼む。』

 ホープ号に乗ったハルミの声だ。

『こちらスターゲイザー…現在、座標地点のワームを掃討中…空間波状航行は 30秒にセット…。』

『ホープ号、30秒…了解…。

 ナオ、クオリア…。』

「分かってる」

 ナオ機とクオリア機は ワームホールを維持しているワームホール型を殺さない様に周辺のワームに撃ちながら、ホープ号をワームホールの直線状に誘導し、オレ達は外壁にしがみ付く…。

 前方では タナトスが、こちらの退路(たいろ)を開いてくれている。

『3…2…1…GO』

 目の前が一瞬 光り、ワープアウト…周辺に大量のワームの死骸(しがい)と小規模なワーム部隊…。

 そして、後ろには光り輝く 高熱源体…月だ。

 機体側で光量を落としてくれているが、それでも(まぶ)しい。

 木星側は?

 オレが木星を見ると次々とワームホール型が破壊され、太陽系と切り離されて行く。

 その中の1つ…オレ達が出て来たワームホールから出て来た タナトスが、周辺のワームを撃ちながら ワームホールを維持している。

『天尊、早くしろ!!』

『ワープ!!』

 月をけん引していたスターゲイザー号が、オレ達と入れ替わりで空間波状航行で、ワームホールを通り、ネオアース星系にワープアウト。

 タナトスは 即座にワームホール型に背を向けて 左手を当て、近寄るワームを攻撃しながら 座標の書き換え始める…。

 ワームホールが消え、ネオアース星系に行けなくなった。

『こちらトヨカズ、ワームホールの消滅を確認、残敵を掃討中(そうとうちゅう)…こちらは問題無し…。

 ナオ…通じているか?』

 トヨカズが不安そうに聞いてくる。

 落ち着いてもいないのに早速の連絡か…。

「こちらナオ…感度良好…ふう…」

 だが、空間を結ぶ量子通信は通じる…理屈では 分かっていても回線がまだ繋がっている事に オレは安堵(あんど)する。

『クオリアは 準備、データを送る。

 ナオは こちらに…。』

 リアから座標が送られてくる。

 すぐにオレは 空間波状航行でタナトスの元に向かう。

『ここに手を…。』

 タナトスの12の魔法陣から発射される誘導弾で攻撃し、場所を維持しながらタナトスの右手を出す…もう片方の手は ワームホール型に触れられている。 

「ああ…。」

 オレは タナトスの右手を握り、リアがタナトスとファントムを中継させてオレをハッキング…自分の中に侵入されている不快感がオレを襲う。

「うぐっ…。」

 ゲマとの通信が何処(どこ)にあるのか オレ自身が 把握していないのでしょうがない。

『見つけた…これか…。

 通信を構築した…キミは退避しろ…お別れだ。』

『ああ…本当に倒しに行くんだな…真白(ましろ)姉ちゃん』

 オレは 初恋のリアの偽名で呼ぶ。

『それが 私の目的だからな…では、キミ達の未来に幸運を…。』

 タナトスが右手に胸に手を当て、左手は背中で組み、頭を下げるエレクトロンの最上級礼をして ワームホールの中に入り、向こうからワームホール型を殺したのか、ワームホールが消える。

「さよなら、真白(ましろ)姉ちゃん」

 オレはそう言うと、空間波状航行でクオリアの元に戻って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ