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19 (新天地-フロンティア-)

『よっしゃああ!新天地(フロンティア)GETぉ!!』

 敵を示す赤いマークが 木星を埋め尽くすような状況で、コロニーを守っているナオキとリアが乗るタナトスを先頭に ナオ(オレ)達、キョウカイ小隊とフェニックス小隊が続き、後方からは ノスタルジア号の周辺から1個連隊のファントム部隊が ひたすら援護射撃をしている。

 そしてオレ達の後ろには現地で合流したコロニー船団が続き、木星に向けて突入していく…。

 各コロニーの護衛に付いている大量のファントムは 前方の攻撃のみに集中し、赤い敵マークで埋め尽くされたワームの中に最低限コロニーが通れるだけの穴を開けて行き、更に加速…。

 ワームが全星系中から 9999京匹の通常型ワームを この太陽系に呼び寄せる為に使ったワームホール型が、円を描く様に重なり中心に現れている球体のワームホールを利用して コロニー船団は 向こうの母星に向かう…。

 ワームホールの突入直前に 空間波状航行の原理を利用して 直径6km、長さが20kmもあるコロニーを分子程度のサイズになるまで 空間を折り畳んで 数十匹のワームが一気に出て来れる程の大きさのワームホールを余裕を持って通過。

 次々とコロニーが1つのワームホールに付き、6基ずつ入って行く…。

 空間自体を繋げている量子通信は 向こうの星系に行っても健在で、フォースネットを通じて 向こうの星系のデータが こちらにも送られて来ている。

 それぞれのワームホールの向こうの星系では 何も学習していない砦学園都市を(おそ)ったデフォルト状態の通常型ワームが、20万から100万程度…。

 DLなら難しいかも知れないが、ファントムならワームが学習して脅威になる前に 片づけられるレベルだろう…。

 そして、現地のワームを皆殺しにすれば 新しい人類の開拓地の出来上がりだ。

 これにより、天の川 銀河中にヒトが乗るコロニーを拡散させる事が出来、年速5光年の空間波状航行では 時間が掛かり過ぎていた銀河の開拓も効率良く進む事が出来る…と言ってもな…。

「ワームの星の侵略に民族浄化か…」

 ひたすら弾幕を放ってワームを片っ端から ぶっ殺しているオレが、思わず そう(つぶや)く…。

 各ファントムの周りには 12の魔法陣を展開して、ターミナルバレッドを亜光速で放ち、1回で12ヶ所 同時攻撃で、ワームを効率よく排除して行き、ワームの星に向かうコロニー船団を援護…。

 トリガーを握る この指を止める気は無いが、外交交渉も無く 相手種族の殲滅(せんめつ)…。

 向こうも駆逐(くちく)されないように こちらの技術を学んで必死に対応してきて、こちらもワームに駆逐(くちく)されないようにファントムをアップグレードし続ける…。

 そしてお互いの勝利条件が 相手種族の殲滅(せんめつ) (ゆえ)に外交の類は 一切成立しない…。

 このマインドが働くと損得関係無しに戦い、貴重な人的資源と大量の物資を食い尽くし、戦争が終結した頃には国土が焼け野原状態になって、国が機能不全に(おちい)ってしまう事も珍しくない…。

 つまり、オレらは そんな先人達がやらかした愚行(ぐこう)をやっている…。

 恐らく この戦闘では オレらは勝つだろう…だが、生き残ったワームは如何(どう)だ?

 いずれ故郷の星を奪還(だっかん)する為にワームが攻撃を仕掛けてきたり、テロ行為が発生する可能性も十分にある。

 しかも オレがいた現代では 次の世代に問題を押し付けて老衰(ろうすい)で死ぬことも出来たが、寿命の概念(がいねん)が無いネオテニーアジャストの場合 それも出来ず、トータルで考えれば 確実に損をする。

『悪手だが、今を生き残らないと次はないからな…。』

 ナオ機の隣で、オレが撃ちやすい様に援護してくれている クオリアが言う。

「分かってる…これが一番効率が良い事もな…。

 でも、オレの中の正義が()らぐんだよ…これって悪役の所業だろう?」

 オレはテロリストになっても 自分なりの正義を信じて戦ってきたが…これは如何(どう)だ?

「だが、いずれ誰かが やらなければ ならなかった事だ。

 そして 未来のキミは それをやった。」

「ああ…それも 分かっているよ…。」

 フォースネットを中継して送られてくるワームホールの向こう側のデータを見る。

 地球側の衛星軌道上から各コロニーに取り付いたファントムが、地上のワームに向けて アウトレンジから無数の弾丸が放ち、ワームの巣を攻撃して行く…。

 その中には当然、育成中の幼体ワームもあり、しばらくすれば こちらと戦う軍属になるとは言え、今は 非戦闘員の虐殺(ぎゃくさつ)行為になる…。

「ハルミが体験した気持ちは これか…。」

 木星付近では タナトスに乗るナオキ、リアが戦っており、数では圧倒的に負けているが、コロニーの援護は十分に出来ている。

 まだ 脱出 出来ていないのは 木星軌道上で(せま)り来るワームに 砲撃戦で対応しているシーランド艦隊が守る 地球と小さな恒星となった月だ。

『よし、目標の星系を見つけた。

 ノスタルジア号は、スターゲイザー号と一緒に空間波状航行の準備。

 地球と月をオレ達の合図と一緒に こちらが指定座標まで持って来てくれ…。

 キョウカイ小隊、フェニックス小隊は オレ達に続け!!』

 ナオキがオレ達に言う。

『分かった…コパイ…頼む』

 ノスタルジア号のAI…コパイにトヨカズが言う。

 コパイなら トヨカズの指示が無くても、地球と月を引っ張って来てくれるだろう。

『了解しました。』

 ノスタルジア号が地球に向かえに行く為 消え、残されたファントム部隊は引き続き、コロニーの突入を援護をする。


 ナオ(オレ)達は 木星の水素とヘリウムの大気圏(たいきけん)に突入…。

 タナトスを先頭に、オレ達は目的のワームホールに向けて ほぼ 垂直落下…。

 タナトスが空けたワームの大群の穴をオレ達がドリルの様に拡張して行く…木星の重力は地球の2倍…。

 だが、空間波状航行が出来た時点で、ファントムに掛かる重力の操作は ほぼ 完ぺきに出来ている…生身のチームも普段と同じ感覚で動けるだろう。

『見えた 入るぞ!!』

 タナトスを先頭にしたオレらは、球体のワームホールから次々と出てくるワームを撃墜しつつ、速度を殺さず ワームホールの中に突っ込む…。

 ファントムのサイズなら空間波状航行をしなくても余裕で入る。

「抜けたのか…」

 依然(いぜん)、ワームの大群で視界が 埋め尽くされていて前が見え無いが、計測器の数字を信じるなら もうワームホールを出て 別の星系に抜けている。

 フェニックス小隊が後方からの援護で、前方のワームを一掃した事でワームの切れ目が現れて、その後ろに宇宙空間が見え、タナトスとオレ達は ワームの大群を抜けて 暗い宇宙空間に出た。

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