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24 (不死鳥再び)

「はぁはぁはぁ…。」

 仮想の呼吸をしつつ 歌による効果が切れて ナオ機の後方に接近しつつある戦闘機型ワームを警戒する。

 後方の戦闘機型はミサイルを撃ち尽くした戦闘機と入れ替えでやって来た個体だ。

 下部にはミサイルが4本ずつ付いていて ミサイルをローテーションで運んでいるのだろう…。

 カナリアさんの歌には効果があったが、今ではその効果は無く、再び戦闘状態になっている。

 ナオ機がクオリア機を トヨカズ機がジガ機の手を(つか)みながら限界まで加速し、2機の推進剤が ほぼ空の状態になった所で オレとトヨカズの2人がクオリア機とジガ機の半開きになっているコックピットに乗り込み、ナオ機とトヨカズ機を放棄…後方のワームにDLを衝突させ、2段式ロケットの要領で推進剤を温存していた2機が更に加速…。

 加速した所で更にボックスライフルを追ってきているワームに向けて最大出力で撃ち込む…戦闘機型が次々と落ちて行き、更にコイルガンの弾が撃ちだされる時の反動を利用して更に加速…帰還速度に達した。

 追っ手を まけばファントムが使えるのだが…こちらをしつこく付けてくる。

 向こうも加速シーケンスらしく こちらと直線軌道になっているから当て易いのだが…数が多いし、それに このまま引き連れて 天尊カンパニー本店コロニーに連れて行くのも問題だ。

 天尊カンパニー本店コロニーは 現在いくつかのDLの腕によってコロニーが破損していて、内部の空気が宇宙に出てしまい、その空気が推進剤として機能してしまいコロニーの姿勢制御に支障を出している。

 木星との距離を長くする事で相手の補給ラインを伸ばしてミサイル運搬の頻度を下げる事も出来るが、今度こそコロニーの致命傷になりかね無い。

「クオリア…ファントムを使うぞ…。」

 半開きのクッソ狭いコックピットの後ろで装甲に(つか)まりながらオレが言う。

「待て、このまま行けば 味方のDL部隊と合流が出来る…そこで迎撃すれば…。」

「この状態じゃ被害が増えるだろう…それにワームにもフォースネットの類がある見たいだ。

 このまま観測機を連れて言ったらレーザー型の餌食になるぞ…。」

 例えレーザーサイトの照射を岩石を盾にしてガードしたとしても、戦闘機型ワームが こちらの位置を観測する事で最大出力で岩石を焼いて射線を開けてしまう。

 本当に対処(たいしょ)がしにくい…。

 ほんの少し前までは突撃だけしか能が無いワームが、初期のマスケット銃兵隊列を行い…戦闘機型ワームの出現…更にミサイルキャリアー戦闘機型にレーザー型…それに敵の位置情報を共有するデータリンクシステム…。

 この半年で原始時代の戦術から現代で使われている戦術まで駆け上がっている…。

 本当に恐ろしい相手だ。

 クオリアの言っている事も分かるのだが…けど…。

 クオリアとジガが戦闘機型とミサイル型を迎撃しつつ加速…味方との合流後、対処し易いように可能な限りのワームを減らして行く…。

 両機とも残り残弾が0…。

 今まで こちら以上の加速をさせて体当たり攻撃をされないように迎撃していたが、もうそれも無理だ。

『限界だな…。』

 クオリアが そうつぶやく…。

 と、その時、いきなり機体が加速コースから外れ、半開きのコックピットに入っているナオ(オレ)は機体から振り落とされそうになる。

「おっと…。」

 次の瞬間に現れたのは高さと長さが限界まで圧縮されて見える巨大な筒…コロニーだ。

 空間波状航行が終わってワープアウトしたのだろう…。

 縮んでいた空間が元に戻り、圧縮されているように見えていたコロニーが急激に膨らみ、通常の大きさに戻る。

 重力異常なのか コロニー側に身体が引き付けられ DLも寄って行く…クオリア機の推進剤も残り少なく振りきれない…。

『全く…長期的視点を重視て短期的な判断に遅れる…エレクトロンの悪い所だよな…。』

 通信?…その直後、後続の戦闘機型が上からの赤い光の線を受け 次々に撃墜されて行く。

 レーザー?

 いや…レーザーは照射地点以外では目視出来ないはず…これは…。

「荷電粒子砲か!!」

『そのと~り~』

 女性の声がし、赤いDLが戦闘機型の注意を引き、引き離して行く…。

『その機体はもう使えない…とっとと ファントムを展開しろ!

 レーザー型まで来たんだ もう出し惜しみする必要はねぇだろ!

 よし、マリア、援護する…。』

 引き離した戦闘機型を別の赤いDLが撃墜して行く…。

『ありがと~ラズロ~。』 

『遊んでないで…すぐに行くよ…。』

 飛んで来たミサイル型の爆発を赤い機体がシールドで受け止め、赤い荷電粒子砲を撃つ。

 形状は少し違うが アイオーン都市のQDLフェニックスで…そのパイロットはネスト攻略戦で核融合による爆発で爆死したと思っていたフェニックス小隊のメンバーだ。

『分かってる…マル姉ぇ』

『ヨハネ、イオアンはコロニーの援護…ヤコブは2機の落下の阻止』

『あいよ』『了解した』『問題無い。』

 ヤコブ機がコロニーの重力に引かれてコロニーに激突寸前のクオリア機とジガ機の腕を(つか)み、スラスターから赤い量子光が吹き出し、減速速度を緩和させて筒状になっているコロニー外壁に機体を着地させる。

 外壁には『ノスタルジア ごう』の文字が大きく塗装されていて、多分このコロニーの名前だ。

「ノスタルジアってトヨカズの店の名前だよな…。」

 駐機姿勢状態になったクオリア機とジガ機からオレとクオリア、トヨカズとジガが降り、それぞれが持っているキューブからファントムを召喚する。

 乗り込めるまでに1分は掛かる。

如何(どう)してフェニックス小隊が生きている?

 死んだんじゃ無かったのか?」

『誰?』

 マリアがオレに聞く…オレの声を忘れているのか?

「ナオだ。」

『あ~日記の人~』

 日記?

『詳しい話は後で…こっちは もうそろそろ片付くから…そこにトヨカズと言う人はいる?』

 マルタか?

『オレだが…。』

『良かった…ファントムを展開したら前方のハッチから艦橋(ブリッジ)に中に入って…コレは あなたのコロニーなんだから…。』

『オレの?』

『そう、私達は 冥王星から このコロニーを あなたの所に届けに来ただけ…。』

 トヨカズはコロニーを買える程 稼いでいたのか…。

 いや…トヨカズを見て見るが 本人には覚えがなさそうだ。

「取り合えず行こう…ワームは如何(どう)にか なりそうだしな…。」

『ああ…。』

 ファントムの生成が終了し、最短で乗り込んで起動…フェニックス小隊の戦果を見つつ 問題が無いと判断し、ナオ機とトヨカズ機のファントムはコロニー前方のハッチを開けてコロニーに乗り込んだ。

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