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14 (ブロックチェーン)

「やっと来たか…。」

 キョウカイ小隊の皆がブリッジに集まり、プラネタリウムのようなドーム型のディスプレイに映る 拡大表示された木星のワームを見てナオ(オレ)が言う。

「ええ…ワームが来ました…相当早いですね…。」

 客席で天尊が見ながら言う。

「空間ハッキングにワーム達が使う量子ネットの処理能力を使っているだろうからな…。

 それで数は?」

 オレの隣にいるクオリアが言う。

「光学観測の予測では おおよそ10万…ただ卵?らしい個体も見つけています…。

 ワームは 哺乳類では無く、鳥類や爬虫類だったと言う事ですかね…。」

 天尊が少し笑いつつ言う。

「と言うよりアイツら木星の重力を脱出 出来るのか?

 木星の中心に落ちて抜けられ無くなって終わりじゃないか?」

「それが…少なくとも動いています…。

 地表が無い木星で落ちないと言う事は 何かしらの謎推進で身体を支えている事になります…。」

 空間ハッキングなのか?

 まぁワームの身体はコンピュートロニウムと言う演算素子で出来ているし…あり得ない話じゃないか…。

「対応進化だな…ヤツらの卵には 外界から守る装甲の他に、周りの環境を読み取る能力がある…。

 その状態で 身体を木星に大まかに適応させ、生まれた個体が 木星の環境でテスト…生き残った個体が次世代の卵を作り、また大まかに適応…世代を重ねる事で遺伝子が どんどん最適化されて行く…。」

「ダーウィンの進化論か…。」

「そう自然淘汰説(しぜんとうさせつ)…ワームの基本はコレだ…そして個体の基本寿命が30日+-1日…この為、短時間で多くの世代交代が出来るようになる…。」

 クオリアが言う。

「1ヵ月事にオレ達と戦っているのは これが原因か…。

 とは言え、毎回全滅させているんだから繁殖による世代交代は出来ないはずでは?」

「ああ…だが量子通信で生存情報を共有している為『死んだ』と言う事実は残る…。

 如何(どう)やってその情報を子供に受け継がせているのかは まだ分からないが…。」

「なら、今 叩けば簡単に全滅させられますね…。」

 天尊が言う。

「ああ…ただ平和的に解決するなら今の時期しかない…。

 意図的に友好的な個体の個体数を増やして、敵対的なワームは駆除して淘汰圧(とうたあつ)に掛ける…。

 こうする事でワーム内での友好的な個体の割合が多くなり共存が可能になる。」

「選別による品種改良か…。」

「そうだ…ただ これは戦闘個体の強化にも繋がる可能性もある…その辺りを慎重に見極めないと行けない…。

 まずは ここからワームを観察しつつ 向こうの文化の解析だな…。

 向こうの文化を知らないと外交も出来ないし、落としどころが無ければ泥仕合(どろじあい)になる…。」

 戦う前に落としどころ見つけるのは非常に重要だ。

 これをしっかりしていないと 要求がエスカレートして戦争が長期化…更に敵側も民族を滅ぼされる可能性があるので、利益度外視で必死に戦い…労働者である成人男性を消耗しつくす…。

 結果、戦争に勝利して 損害賠償を無理やり相手に飲ませた所で 総合的には 大幅な赤字となる…戦争は人も含めて物資を大量に消費するからだ。

 なので多少の妥協をしつつも 戦争を早期終了させる事が一番利益率が高い…。

 まぁ視点を人類全体として見れば 技術開発が飛躍的に伸びるので泥仕合(どろじあい)にも一定の価値はあるんだが…。

「なら、良い人材がいますよ…と言うより、これから必要になるから呼んでおいたのですけど…キース」

「キース?」

 聞きなれない名前だな…。

 天尊の紹介で客席からジャンプし、無重力状態の空中を移動して天尊の横に着地する来たのは少し小太りの男性だ。

「お久しぶりです…。」

 キースがトヨカズとレナ…それとロウに向かって言う。

「え?すみません…何処(どこ)かで会いましたっけ?」

 レナが考えながら言う…本当に見覚えが無い見たいだ。

「前は『キース・ピースクラフト』と名乗っていました。

 随分(ずいぶん)と体型が変わりましたが…。」

「「ええ!?あのピースクラフト?」」

 トヨカズとレナが驚く…まぁ…驚いても無理はない…。

 オレは直接は会って無いがデータで見た姿では、体重が100㎏を超えている完全食のソイフードがある この世界では珍しい肥満体型の人物だ。

 トヨカズに聞いた話だと まともに走る事が出来ない程だったとか…。

 それが少し小太りのオッサン程度になっている…食生活が変わったからか?とても同一人物とは思えない。

 クオリアも視覚情報から同一人物と認識出来無いのか首を傾げている。

「確か 誰かに射殺されたって聞いたが…。」

 ピースクラフトは ピースクラフト都市でテロリストが起こした政変に巻き込まれたて何者かに射殺されたはずだ…ネットでは テロリスト(パラベラム)の生き残りと言う噂も出ていた。

「ええ…民衆に殺されるだけだった僕を 天尊が僕の死を偽装して救ってくれました。」

「キースは 行動解析のエキスパートです。

 人とワームとのコミュニケーション構築の為には如何(どう)しても生きて貰う必要がありました…。

 実際、ワームの進路からのネストを特定する際には かなり役に立っていましたし…。」

「あ~あの時から(から)んでいたのか…。」

「はい…そう言う訳で、ピースクラフトの名前は返上して今は『キース』です。

 よろしくお願いします。」

「はい…よろしく。」

 オレとピースクラフト…いや『キース』が握手をする。

 

「で、コミュニケーションの方法は?」

 クオリアがキースに聞く。

「えーワームのコミュニケーション手段は量子通信と電波の2種類になります。

 ただ電波の通信距離は短く、短距離大容量の無線方式だと予測されています…。

 有効範囲は500m以下なんですが…真空中では大気による減衰が起きないので、それなりの距離からでも電波の解析が出来るはずです…。

 同時に音や光でのコミュニケーション手段を模索します。

 量子通信に関しては僕の専門じゃないのですが、直接接触による読み取りが必要です。

 ただワームを捕まえて解析をしようものならワームの量子通信のネットワークから外され、スタンドアロン状態になります。

 恐らくネットワークの汚染を回避する為の物でしょうね…。」

 キースがARウィンドウを表示して現時点での解析結果を言う。

「あ~そっちの通信方式はもう分かっている…。

 と言うより、ワームの中に記録されている『行動基準データ』が書き換え、もしくは物理的に破損した場合にネットワークから切り離されるんだ…。」

 客席に座ってキースの話を聞いていたハルミが言う。

「『行動基準データ』ですか?」

「ああ…ワームが活動する為に設定された大まかな行動方針だな。

 ワームは ワームのネットワークで『行動基準データ』を互いにチェックさせ続けて『行動基準データ』の劣化を阻止している事がワームのネットを解析して分かっている…。」

「それってブロックチェーン方式だよな」

 ナオ(オレ)がハルミの方を向いて言う。

 ブロックチェーンは、互いにデータを監視する相互監視システムを採用してデータの信憑性を保障するシステムだ。

 その為、情報の書き換えれば 即座に把握され、ルール規定に乗っ取った処置が行われる…。

 ワームの場合なら、ネットワークから外されると言う処置が行われる訳だ。

 これにより このシステムのセキュリティは より堅牢な物となり、オレらとワームの戦いが終わる事は無い…。

 ただ、その堅牢なシステムのせいで システム自体のバージョンアップが困難で『ルールを守る ずる賢い不正ユーザー』を排除する事は かなり難しいと言う欠点が存在する…ハルミがロウを使ってやった『偽装ワーム作戦』でネット接続が出来たのが良い例だ。

「となると…私達は その行動基準データに乗っ取ってワームに無害であると証明する事になるのか…。」

 オレと同じ結論に行きついた クオリアが言う。

「そう言う事…行動基準データは 今解析中…なんだけど 実際のワームの行動から意味データを解析しないと行けない…結局キースの協力が不可欠って訳なんだ…。

 正直、専門家がいてくれて助かる…。」

 ハルミがキースを見て言う。

「後でデータの共有をお願いします…。

 それと近日中に木星での護衛任務をお願いする事になります。」

 キースがハルミに言う。

「だよな…だけど まずはファントムのプレゼンだよな…。

 オレが終わってからになるが…。」

 オレが言う。

「ええ…その間に遠距離からの観測で作戦内容を詰めます…。

 まだやれる事は多そうですし…。」

 キースがそう言い…その日はそれぞれの目的の為に解散になった。

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