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08 (空間波状航行)

「おお…」「すごい」

 ロウとカズナが 少し興奮した様子で周りを見ている…。

 コントロールルームは 巨大なドーム型構造になっていて、ドーム型の壁には 壁紙ディスプレイが張られ、夜空を映し出している…多分、外にある観測機器からのデータを元にして映像として生成した物なのでしょう…エアトラやスペトラの物より、かなり綺麗に見える。

 後ろ半分は観客席になっていて、偉そうな…と言うか実際に偉いのだろう…中年の男性達が座って星を眺めている…。

「ただ星を見に来ただけって感じね…。」

 レナ()が言う。

「ええ…それと空間波状航行を見たいのでしょうね…。」

 隣にいる天尊がそう言う中、グローリーは船橋(ブリッジ)の真ん中にある周りを見渡せるように高くなっている席に向い座る…。

 無重力の中 天尊が観客席に座り、私は静かに星を見ているトヨカズの隣の席に付く…。

「あれ?向こうに行かなくて良いの?」

 私が隣に座る天尊に聞く。

「ええ 僕が社長になったとは言え、このコロニー()は御爺様の持ち物ですから…。

 僕のコロニー…『スターゲイザー』は 僕が欲張り過ぎたせいで まだ建造中です…。

 本来 私の社長就任時には 完成しているはずだったのですが…。」

「スターゲイザー…天文学者って意味だっけ?」

「本来の意味は『星を見つめる者』…僕の船は最新技術を詰め込んだ恒星間航行用ですから…。」

「恒星間で商売でもするの?」

 天尊の話だと これから そう時間が経たずにファントム家電が普及して、物流の利益が下がる…その為の新事業の開拓をする感じかしらね…。

「まぁそれが出来れば良いのですが…多分無理でしょうね…。

 現地の物資で作った方が圧倒的に安いですから…でも人は別です。

 現状…個人が 他の船団に移籍する事は 物理的に不可能ですからね…。」

 確かに…恒星間航行を行う船団は 皆で進路を決めるので、個人が別の船団に移る事は出来ない…個人で別の船団に合流する手段が無いからだ。

「船団を繋ぐ船ね…何か需要がありあそう…。」

私はそう言って座席を傾け、星を見つめた…。


進捗(しんちょく)状況は?」

 艦長席に座るグローリー()が言う。

「計器に異常なし…支援AIも警告を発していません…予定通りです…。」

 左右合計12の椅子に座る人の一人が手を上げて言う。

 彼女は 航行用の責任者だ。

「よろしい…演算は?」

「既に終了しています…今は現地から量子通信で送られてくる情報と こちらからの観測情報の最終チェック中です…。

 残り15分以内に終わります…それと現地の船の退避は まだ終わっていません…退避に15分…。

 現在、15分後の現地観測部隊からのGOサインを待っています。」

 通信責任者の男性が手を上げて言う。

「よし…乗員は?」

「現在『30分前警告』を出しました。

 乗員は 最寄りの建物に避難中…事前連絡の効果もあり、ほぼ乗員が退避しています。

 問題ありません…。」

 コロニー内の乗組員への放送を担当している放送課の責任者が手を上げて答える。

「OK…マニュアル通り15分前から5分刻みで警告…。」

「了解…。」

「次…核融合炉エンジン…。」

「はい…問題ありません…現在出力30(%)にて該当場所(ポイント)に移動中…。

 最大出力での試運転も確認済み…OKとの報告…。」

 コロニー内エネルギー及び、推進機関担当の動力課の責任者が手を上げて言う。

「OK…チェック項目終了…GOサインを出す…予定通りに開始…。」

「「了解」」

 運航クルーがそう言い…作業を再開した…。


「そろそろですね…。」

 天尊が言う。

「ええ…何か緊張するわね…。」

「まぁ事故を起こす事は まず無いのでご安心を…。

 さあ…シートベルトを閉めて…最初と最後は揺れますから…。」

 天尊がレナ()に向かって言い 次にカズナとロウに向けて言う…。

「うん」「分かた」

『空間波状航行を開始します…揺れに注意して下さい…。』

 アナウンスがあり、私達は正面の壁紙ディスプレイを見る…。

 前方に見える星座が歪み、引き延ばされたように上部と下部に分かれ、流れて行く…。

 そして 空間がコロニーを乗せて移動する…コロニー中がガタガタと揺れ、画面中に光の線が現れ、前方から後ろに歪みながら流れて行く…その後…遂に光が見えなくなり壁紙ディスプレイが真っ暗な空間を映し出す…。

「光速を超えましたね…。」

 天尊が言う…。

「えっもう?

 加速Gも感じなかったけど…。」

「光速を越えていると言っても 実際は動いているのはコロニーじゃなくて コロニーが乗っかっている空間だからな…普通このレベルで加速したら確実に加速Gで潰れる…。」

 隣のトヨカズが言う。

「そう言えば そうね…。」

「後は、亜光速でのスペースデブリが()れてくれる事が一番の利点ですかね…。

 亜光速では小石サイズの天体でも核兵器レベルの威力を持ちますから…。」

 もう隣の天尊が言う。


『減速を開始します…揺れに注意して下さい…。』

 アナウンスがあり、また壁紙ディスプレイが光だし…上部と下部から歪んだバカでかい星が現れ、正面に集まって歪みが無くなって行く…木星だ。

『乗員へ…空間波状航行のシーケンスが終了…ご協力ありがとうございました…。』

 アナウンスが入り…観客席にいた偉い人達もゾロゾロと退出して行く…。

「さぁ…僕達も戻りましょう…それで…今後の予定は?」

「太陽系連合のコロニーでファントムのプレゼン…。

 一応、上を納得させられる程度には 自信はあるけど…。」

「行政手続きに そってプレゼンをしているだけで 状況から見ても ほぼ100%ファントムが採用されますよね…。」

「ええ…でも こう言う所こそ しっかりとやらないとね…。」

 私がそう言い、席を離れたトヨカズ達の後に続き、2人は船橋(ブリッジ)を出た。

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