表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
254/354

19 (収穫祭)

 白に塗装され赤い十字架のマークと宇宙海賊を示すドクロマークが描かれたデブリネットを付けている…白い船体で何基ものスペトラのパーツを連結させて巨大になった船だ。

 宇宙海賊の非戦闘船『キングストン号』が戦利品を回収する為の部隊が宙域に辿り着いた。

「さてと…おお大量、大量…高い金掛けて下準備を念入りにした甲斐(かい)はあったな…。」

 キングストン号のラカムが操縦席に座って言う。

 辺り周辺には撃墜された大量のDLと航行不能になって漂流しているスペトラの山…。

 いつもなら、戦闘から2~3日後に回収するんだが…今回は物が多いと言う事で 他の海賊との合同での回収だ。

 漂流している物資を全て 回収した後で、それぞれの海賊に配分…4つの海賊が集まり、オレらは4分の1の報酬が貰える…出したDLはこちらが一番多いが、経費に使ったDL分の機体は 報酬とは別に戦利品から貰える事になっている…割と良心的な取引だ…。

「アンとメアリーを先行させる…。

 せっかくの人質だ…商品を傷つけるなよ…。」

『分かっているって…マスター…。』

『そんじゃあ行ってくるね~』

 1番シリンダーが開き、肩にドクロと赤十字マークがある白いボディのパワードに乗る 救助部隊のアンとメアリーが先行して 現場に向かった。

「さてと…1番隊は 宙域内のDLの救助…。

 2番隊、3番隊は漂流中のスペトラの回収…4番隊は宙域に散らばっている物資回収…。

 手早くやれよ…。」

『アイサー』

 薬室内にいるDLパイロット達が一斉に答えた…。


 普段は 弾薬コンテナを背負う所を推進剤を大量に入れた増槽(ぞうそう)を背負い、活動時間が大幅に伸びている白のパワード2機は、コース外に行ってしまったDLを蹴り飛ばして 味方の回収ポイントまで送る…。

 今回は 飛ばされているヤツは少ないな…これならすぐに終わりそうだ…。

 大半の機体は破損しつつも自力で回収軌道に乗っている…。

「壊され方が やけに丁寧だな…。

 敵側に狙撃が出来るエースパイロットがいたのか…腹部を一発で仕留めている…。」

『直すのも楽そうね…そのパイロットに感謝しないと…。

 あっアン…あれが 飛ばされた最後の機体じゃない?

 その後ろには 救難信号は無いし…。』

「救難信号が壊れている人がいるかもしれない…。

 もうちょっと奥まで探して…。」

『はいはい…と言っても、救難信号は コックピットブロック内蔵の物とパイロットスーツにある2種類…これが作動していないって事は…正面からコックピットブロックを()かれて ミンチになったって事よ…。』

「分かっている…でも、死体だとしても遺族に渡せるかもしれないでしょ…。」

『ミンチの死体を~?見せない方が 良いんじゃない?

 真実が正しいとは限らない…行方不明にしといた方が 良い事だってあるんだよ…。

 さて…探索はして見たけど、ミンチはいない見たいね…これ以上の捜索は私達じゃ無理だし、時間も労力も掛かるから見捨てるしかない…集めたDLを運ぶよ…。』

 メアリー機が推進剤をやられて漂流していたソーラーセイルを両手両足で広げているベックの右腕を左手で(つか)み、アン機と一緒に加速する…。

「パイロットは?生きてる?」

 アンが聞く…。

『えーと…今 接触回線で情報を抜き出してる…終わった。

 パイロットは2名…漂流していた仲間を回収したのかな?

 これは多分、仮死状態…心拍数も体温も生存ギリギリまで下がっている…。

 生命維持は 特に問題無い見たいだけど…戻って点滴が必要ね…。』

 仮死薬を撃ち込んだ場合、蘇生には それなりの専門技術がいる…ゆっくりと臓器に負担を掛けないように回復して行かないと、後遺症が残りかねない…。

 とは言え、その専門技術さえ整っていれば 確実性が高い方法だ。

『第1部隊から…ウチらの海賊部隊は全員生存だって…。

 今 回収している…スペトラの回収に行った部隊は、大収穫で はしゃいでいる見たいね~。』

『そりゃあ…これで 物資不足は解消出来るだろうし、少しは生活がラクになるかね…。』

 アンがそう言う…。

『こちら、ラカム…アン…漂流者は どうだ?』

『マスター…探知出来る範囲では全員確保…全員助けられる範囲です。』

『OK…そいつらは、こっちに積み込め…丁重に扱えよ…商品価値が下がるからな…。』

『了解です マスター』

 アン機とメアリー機は、とりあえず蹴り飛ばして 移動を止めて置いたDLを引っ張り、スペトラに積みに向かった…。


【6日目】

 床に座って警戒しながら眠り、その翌日…出発から6日目になる…。

 各船には あちこち破損したDLが山ほどあるが、スペトラにはSFに出てくる戦艦のような整備デッキや補修パーツの類は一切無い…。

 破損した機体は、薬室に入れたまま そのまま放置し、別の損傷の無い機体を使う…。

 1機のスペトラにDLパイロットが6人か12人…つまり、後1戦は出来る事になる。

 損傷機体は、整備設備があるコロニーに行った時にスペトラから降ろされ、代わりに損傷していない新しい機体が入れられる…。

 スペトラで修理する場合、整備員や整備ドック…更に直す為の資材など、余計な重量が多くなる為だ。

 なら一括で修理して、DLを戦闘ごとに代える方が効率が良い…。

 破損しているスペトラは破損しているスペトラを同士を組み合わせる事で航行能力をギリギリ維持しており、船体が大型化している。

 今後、火星の軌道に乗る際に減速が出来ないと外周に飛ばされて帰って来れなくなるので、減速をする必要があるのだが、これはDLが前から押す事で減速する方法を取る事になった。

 次…キョウカイ小隊のスペトラの損害…。

 スペトラ、エアトラS2共に損傷は無し…ファントム、ナオ機は損傷が無く無傷…今は他の機体へのインストールも再開していて、途中で無理やりインストールを中止した為、細かなデータ破損が生まれてしまっているが、それも含めて、後 3時間ほどでインストールが終了する…。

 次、ハルミ機…敵からの攻撃は すべて回避しているが 中破…原因は高機動戦闘による細かいスペースデブリによる損傷だ。

 まだイエローゾーンなので使えるが、機体は まだ余っているし、新しい機体に乗り換えた方が安全だろう…。

 続いて、未帰還機…トヨカズ機、カズナ機…チャフエリアに入るまでは無事だったが、その後 何らかのトラブルで スペトラの船団と合流出来ず、現在 戦闘中行方不明(MIA)…。

 コパイが作った船団の帰還者の名簿には トヨカズ、カズナの名前は無く、それを見たレナは指揮官として平静を保っていたが、一粒の涙を流していた…。

 親しい仲間がMIAなんだから当然の反応…なんだが…ナオ(オレ)は、トヨカズ達が 生きていると思っているからなのか…戦力の損失と言う感じが強く 悲しみの感情には ならない…。

 ここでは、悲しんで泣くのが人としての正しい行動何だろうが…こうやって戦力を分析している時点で それは望めないだろう…。

 クオリアとジガは、理屈的に考えて高確率で宇宙海賊に救助されるので無事だと確信していて、早速 保険会社に問い合わせたが…また救助中で身代金のリストを作ってないのか、宇宙海賊がリストを送信していないのか…トヨカズとカズナの名前は無い…。

 火星で合流出来るか…いや…生きていたとしても、漂流した時の多大なストレスが問題になって小隊に復帰出来ないかもしれない…それなら、負傷兵扱いで砦学園都市に戻り 退役だろう…。

 戦うメンタルに問題が出たり、負傷したにも関わらず無理やり戦場に出ても戦果は望めないだろうし、何より戦友として して欲しくない…。

「戦力の大幅な低下は避けられないか…。」

 オレは そう結論付けてポツリと一言 言い…近くにいるレナが こちらを向く…。

 表情解析アプリがレナが若干(じゃっかん)の怒りの表情を(とら)える。

 ああ…仲間を戦力としか見てないオレに感情的に反応したのか…。

 だけど レナもトヨカズとカズナを戦力と考えた場合 同じ結論だったようで、オレに怒るような事はしない…。

 気を付けないとだな…オレはそう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ