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17 (高度な連係の前にはエースですら無力)

『ナオ…左舷(さげん)の敵部隊に対処出来る?』

 きっちり、味方の補給時間まで稼ぎ切り、追加で4機撃墜し、味方機が戦闘を再開し始める。

 ハルミ機は撃墜した敵の残骸からマガジンの補給をして、ナオ(オレ)がカバーに入った所で レナから通信が入った…。

 戦局は…指揮官機ぽい機体を撃墜したからだろう…敵部隊の連携が崩れつつあり、味方部隊がやや優勢と言った感じだ。

 ナオ(オレ)とハルミが抜けても、致命的な破綻(はたん)には ならないだろう…。

「OK…左舷(さげん)の勢力は?」

『小隊の連係力(れんけいりょく)が高い1個小隊6機がいる…恐らくエースパイロット部隊だろう…。

 ナオ機とハルミ機は、この小隊と120秒の遅滞戦闘をして欲しい…。

 時間と敵の練度(れんど)からして撃墜は多分 不可能。

 だが、味方部隊で 敵の一般部隊を削り切るまでの時間が欲しい。』

 クオリアが答える…。

「OK…相手が強いなら強いでやり方はある…。

 とは言え任務より、オレ達の生存を優先させるぞ」

『了解した…撃墜されない程度に頼む…。』

「了解…。」

 ナオ機とハルミ機が 左舷(さげん)の指定座標に向かって 機体を加速させた…。


 間に合わなかった…。

 目標まで後もう少し…光学カメラで戦場の状態を観測する…。

 左舷(さげん)のスペトラは 敵エースパイロット部隊に喰われ、何機もが航行不能に(おちい)っている…。

 搭載されているDLも総出でスペトラを押して角度を修正し、軌道を維持する…。

 推進剤が無くても軌道さえ正確なら慣性走行だけで火星まで行けるからだ。

 ただ、その為に多くのDLがスペトラの制御に使われていて、戦力が足りない…。

 敵エースパイロット部隊は、スペトラを制御しているDL部隊には見向きもせずに、味方機の攻撃を最低限の動作で回避しつつ スペトラを狩って行く…。

 味方のDL部隊を行動不能にさせるには良い手だ。

 そして、敵DL部隊が身動きが取れなくなった味方DL機を丁寧(ていねい)に狩って行く…。

 敵DL部隊には 炎龍(エンリュウ)…パワードタイプがいる…。

 大型の盾を持ち、銃はMP7型…デブリなど気にしなくても大丈夫な程 重厚な装甲に覆われたDL…。

 黒鋼(クロガネ)に比べ、機動力は低くなるが 弾薬コンテナを背負えて戦闘可能時間も長い機体…。

 そして、主力の黒鋼(クロガネ)…ベック部隊…敵を狩るエースパイロット部隊は疾風(ハヤテ)…スピーダー…。

 混成部隊によるハイローミックスだ。

 それぞれの機体の特徴を把握して、適切に運用している感じがする。

 これ本当に宇宙海賊か?正規部隊でも ここまでの運用は 難しいだろう…。

 機体を軽くする為、装備出来る弾数に制限を受ける疾風(ハヤテ)が、炎龍(エンリュウ)の弾薬コンテナから補給を受けて再度、狩りに向かう…。

 よし…もうそろそろ…着く…。

 ナオ機とハルミ機が疾風(ハヤテ)部隊に向かいフルオートで発砲…スペトラから引き離そうとするが、未来予測システムで当たらない事を知っている為、回避せず、狩りを続ける…。

 通常、スペトラが 周りにある状態での戦闘はしない…障害物になり機動力を削ぐからだ。

 だが、敵部隊はスペトラを盾にする形の軌道を取る事でこちらの射撃を防いだ…。

 宇宙空間では弾の減衰(げんすい)が起きない為、こちらが撃つ場合 直線状に何かしらのスペトラがあり、味方識別信号(IFF)に必ず引っかって撃てない…。

 逆に相手は 撃てるポジションを知り尽くしているらしく、こちらが射撃ポジションには 行けないように立ち回れている…。

 IFFをOFFにする事も出来るが 疾風(ハヤテ)の後ろには スペトラのスラスターがある…回避してこちらの攻撃を利用する気だな…。

「あ~確かに 勝てないな…。」

 即座に判断…接近戦に移る…。


 ナオ機とハルミ機が速度を上げて疾風(ハヤテ)部隊に突っ込む…。

 疾風(ハヤテ)部隊は、ファントムをエース仕様の特別機と判断したようで…狩りを止めて こちらに向かって来る…。

 まぁ機体中が量子光で光り、隠密性は 皆無だからな…。

 スペトラを巻き込まないように、疾風(ハヤテ)部隊を引き連れてスペトラがいない こちらに有利な戦場に誘導しようとするが…あくまで、戦場はココだと言わんばかりに、疾風(ハヤテ)部隊は追うのを止めてスペトラ狩りを再開し始めた…。

 あ~コレもダメか…。

 警告…真上…黒鋼(クロガネ)部隊6機がグレネードランチャー付きのF-2000を構え、こちらに向けている…。

 逃げ場が無いようにバースト射撃で こっちの動きを制限させつつ…3機が こちらに向けて グレネードを発砲…回避出来ない…。

 シャベルシールドで受け止める…受け止めたらすぐに移動だ…囲まれたDLは()われるしかない…。

 シャベルシールドを構えて弾幕の中を強行突破し、数発をシールドで防ぎ、包囲網を抜ける…。

 疾風(ハヤテ)部隊は?

 光学カメラで索敵…見つかった…加速…アレ…左腕の関節の動きが悪い…潰しきれなかったバグがまだあったのか?

 うわっ…。

 先ほどシールドで防いで飛び散ったグレネードの中身が関節に喰らったらしく…白く粘りけの強い粘着弾が関節の動きを制限する…。

「トリモチランチャー?」

 正式名称は 分からないが…その系統だと見立てを付けた…マズイ…。

 こちらの動きが(わず)かに止まり…トリモチランチャーのグレネードを背中から直撃…コイツら…ファントムを回収して解析するつもりか?

 可動部が制限されて、姿勢制御が上手く行かない…。

 ハルミ機が少し遅れてトリモチランチャー部隊に発砲…1機の足を撃ち抜き、部隊は後退…。

 欲張らず、引き際が良い…。

『120秒()った…ナオ機、ハルミ機はスペトラに帰還…。』

「全然、足止めになってねーよ…。」

『生きていれば、それで良い…そろそろ そこも チャフエリアに入る…。

 トヨカズ機、カズナ機は、機体信号もバイタルサインもロストしている…。

 以降、内緒話通信に切り替え…。』

 チャフエリアに入って 電波が通らなくなり…味方からのデータリンクも途切れた…。

 だが、オレの義体とクオリアは量子通信が可能な為、通信が出来る。

 ハルミ機がまともに 動けないナオ機の腕を引っ張り加速…こっちの推力は生きているが 真っすぐにしか進まず、ハルミ機が上手く姿勢の調整を行い推力に変えている…。

 取りあえず オレ達は 帰還は出来るだろう…。

『それで、トヨカズ達は?』

『チャフエリアに入る直前の状態では こちらに向かっていた。

 恐らく合流は出来るとは思うが…はぐれても回収は行えない…。

 海賊部隊の救助を待つことに なるだろうな…。』

『捕虜か…。』

『そうなるが…身代金を請求する為の大事な商品だ。

 乱暴な扱いは されない…。

 それに 宇宙海賊保険が効くから 後は 保険会社が宇宙海賊と交渉して金を払って終わりだ…。

 1週間程 時間が掛かるがな…。

 敵部隊の戦闘は終了…チャフに紛れて撤退中…。

 スペトラの脱落が4分の1…左舷の損害がヒドイな。』

『あ~すまん…。』

『だから、生きていれば それで良い…。

 前方のスペトラからコパイ経由での量子通信…進行方向からの大型宇宙船団…機体にドクロ…宇宙海賊だと判明…だが、白塗りの赤十字マーク…回収用の医療船だな…。

 攻撃は厳禁…後、20分程ですれ違う…早いな…いつもは もっと掛かるんだが…。

 回収も含めて12時間程度か…漂流した大半は生き残るだろうな…。』

『OK…宇宙海賊側が大儲けって事か…。』

『大量の船団が行き来する 2年に1度の狩り時だからな。

 普段はこんな金の掛かる手の込んだ事はしないだろうし…。

 取りあえず帰還してくれ…今コパイが通信で帰還名簿を作っている…。

 別のスペトラに回収されていれば、名簿に名前が乗るだろう…。』

『分かった…。』

 オレ達のスペトラを目視で確認…スペトラの後ろには ハーネスが後方にぶら下がっており、ナオ機とハルミ機はハーネスを(つか)み、巻き取られて回収…ファントムを分解してキューブを回収し、オレは ハルミ機の手に(つか)まり、タイミング良く開いた4番シリンダーから帰還した…。

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