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12 (合流-ランデブー-)

 翌日の出発の日…。

 ゲートを抜けて トヨカズは M4を返して貰い、その後は行きと同じで、エレベーターに乗り、月面の静かの海に出る。

「さてと…スペトラに戻るぞ…。」

「と言っても…またクオリアが引っ張るのか?」

 ナオ(オレ)がクオリアに言う。

「いや…ファントムがあるだろう…。」

「あ?ああ…そう言えば…てか、ファントムが あるならダイビングする必要が無かったじゃないか?」

「エアトラの中で ファントムを展開するのは スペース上無理だ…。

 いったん外に出て展開する必要があった…しかも2人乗りだから飛び降りた方が安全で早かったんだ。」

「はいはい…もう突っ込まないよ…。」

 この効率厨(こうりつちゅう)がぁ…。

 まぁ安全は確保されていたんだろうが、時間が掛かってもゆっくりと降りたかった。

 オレ、トヨカズ、レナ、は、リュックからファントムのキューブを取り出し、展開…。

 ナオ機には クオリアが…トヨカズ機にはカズナが…レナ機にはロウがそれぞれ乗り、ジガは生身に機械翼を展開して先頭に立ち、ファントムの誘導を担当する。

「機体に問題無し…OK…動かせる」

 オレは ファントムのチェックを終了し、ファントムが立ち上がる。

「おっと」

 低重力の為か 機体の動きが敏感(びんかん)過ぎて変だ。

 慎重に丁寧(ていねい)にファントムを動かす。

 ステータスに異常は無し…これで正常?

「全機へ、ナオ機にトラブル…機体の動きが敏感(びんかん)過ぎる…これは コチラだけのトラブルか?」

『いや…トヨカズ機も同じ…。』

『レナ機…私も同じ…動かせるけど、戦闘は無理…。』

 各機体、同じ症状…再現性はあるか…。

「地球とは重力が違うせいで、マリオネットが 利き過ぎている?」

 ファントムの各関節は運動エネルギーの操作を行う『マリオネット』と言う空間ハッキングで動かしている。

 更に銃弾の運動エネルギーを相殺して無効化する『通行止め』の装甲にも運動エネルギーの操作…原因は 運動エネルギーをコントロールする空間ハッキングの異常か…。

 ナオ機が身体を動かして見る…ちゃんと動くが戦闘は無理だろうな…。

「クオリア…このトラブルを如何(どう)見る?」

 オレは 後ろに座るクオリアに聞く。

「機体が現地の環境に適応しきれてないのかもしれない。

 重力の違いが(わず)かなノイズを生んで、運動系の空間ハッキングに影響していると考える。」

「やっぱり、そう来るか…上がる事は出来るよな…。」

「それは問題無い…。」

「なら、火星への移動中にデバックかな…それで、軌道は?」

「発進するスペトラを目印に後に付いて行く事になる。

 悪いが手動だ…今回のノイズもそうだが、宇宙での自動航行には不安要素が多い…。

 私もサポートをするから、致命的不具合が発生する確率は 許容範囲内だ。

 勿論、後でデバックをするが…今回は問題無いだろう…。」

 クオリアがそう結論付けた。

「全機へ…設計したオレとクオリアが話し合った結果…スペトラに辿り着くまでは問題無いと判断する。

 勿論、その後はスペトラ内で直す事になるんだろうけど…。

 レナ…如何(どう)する?」

 オレはレナに聞く…今言ったのはあくまで エンジェニアとしての意見だ。

 キョウカイ小隊の隊長のレナの判断が優先される。

『クオリア…ファントムのモニタリングは しているのよね?』

「ああ、トラブルが起きた場合 すぐ分かるし、最悪、皆でまた飛び降りて月面に戻ればいい。」

 うわっまた飛びるのか…イヤだな…。

『うん…OK、それで行きましょう…。

 クオリア…スペトラに着くまで私達の指揮を取って…。』

「レナ大尉、了解した…スペトラに戻るまで 私が指揮を取る。」

 クオリアそう言い、各ファントムの情報が リアルタイムで見れるように作業に取り掛かった。


「さて、準備は良いな…。

 カウント30…20…10…」

 クオリアがカウントを始める。

 カウント10で静かの海都市の宇宙港からスペトラが勢いよく飛んでいった。

「5…4…3…2…1…GO」

 ジガを先頭に各ファントムが追うように速度を上げながら一気に高度が上って行く…。

 地球の6分の1の重力しか無い為、加速時間はかなり短く、打ち上げられたスペトラを追う形で オレ達は待機軌道に入れた…。


 高度200km…月の待機軌道には大量のスペトラが集まり、綺麗に船団を築いている。

 加速がし終わった ファントム達は 高度を上げつつ、月の自転方向に加速する事で相対速度を落とし、ジガの誘導で オレ達が乗るスペトラに向かう…。

 そのスペトラは、各ユニット用の連絡用パイプを組み合わせ、エアトラS2を飲み込むように変形しており、機体の上でハーネスを接続した黒鋼(クロガネ)が手を振っている…。

 パイロットは…ハルミか…。

「相対速度、合わせるぞ…。」

 クオリアがそう言い、減速しているファントムとスペトラの相対距離が近くなり…スペトラの上に表示されている数字が どんどん下がって行く…。

 スペトラの上部からの進入…。

 前方から侵入してデブリ対策用のネットに衝突して拾われるのが一番安全で一般的なのだが、前方のスペトラが近い事もあり、そのコースは取れない…。

「マニュアル操作だとキツイな…。」

 大きさの感覚が(つか)めないし、しかも機体が過敏に動き過ぎる為、ヘタに操作するとスペトラに接触しかねない。

 そう思っていると、ハルミ機がスペトラをジャンプして飛び上がり、ファントムの衝突コースに入った。

 ハルミ機は両手両足を開き、構える…受け止める気か…。

「トヨカズ機、レナ機は、ハルミ機の腕に(つか)まれ!…ナオ機は足だ。

 細かな調整はハルミ機 側で合わせてくれる。」

 クオリアが後ろで各機体に指示を飛ばして行く…。

『トヨカズ機 了解…こっちが右手で行く、レナは左手』『レナ機 了解…。』

 ハルミ機の足をナオ機が(つか)み、ハルミ機のスラスター噴射され相対速度と姿勢を合わせてくる。

 続いて、トヨカズ機はハルミ機の右手をしっかりと(つか)み…レナ機は距離感を見誤り コースから外れ、咄嗟(とっさ)に足をハルミ機に向けて、ハルミ機に足を(つか)ませた。

『よし、お帰り…。』

 ハルミからの通信だ。

 ハーネスが巻き取られ、ハルミ機が後ろを向いた形で引っ張られる形で加速して無事にスペトラのシリンダーユニットの上部にファントムが着地した。

『危なかった…。』

 息を荒げながらレナが言う…。

『まぁ離れても、またやり直しは出来るからな。

 むしろ一発で成功する事の方が珍しい…。』

『そう…ありがとう…。』

『それじゃあ…中に入るか…コパイ、1番シリンダー解放…。』

『了解、1番リボルバーシリンダー開きます。』

 ハルミの指示で、オレ達のファントムが乗っている1番シリンダーの先端にあるリボルバーシリンダーが開き、薬室にはDLが5機入っており、ハルミ機の薬室が開いている。

『ファントムを薬室には入れられないから キューブに戻して移動な…。』

「OK…コックピット内減圧…OK…ブロックを開ける…。

 クオリア…サポート頼む…。」

 オレはそう言い、クオリアに右手を出す…。

「了解した…。」

 クオリアは オレの手を強く握り、コックピットを出た。

 緑色の量子光を光らせ、キューブに戻ったファントムを回収する。

 命綱も無しの宇宙空間…低重力でシリンダーにくっついてられるから まだマシか…。

 そこは、ひたすらに暗く、怖く…そして、心細い…。

 オレはクオリアの手を再び強く握った。

 トヨカズ機から降りるトヨカズはカズナを抱きしめ…背中のタンクの酸素を上手く使い空中でキューブを回収して着地…。

 レナとロウは、ジガに(つか)まり 降りて来た…キューブはジガが持っている。

 ハルミ機は、ハーネスを付けたまま空いている薬室内に潜り込み、オレ達の為の ガイドロープを作ってくれる。

 オレ達は 左右の腰のベルトに繋がっている巻き取りメジャーの先端に付いているカラビナを引っ張ってワイヤーを取り出し、ガイドスロープの下から通して1周させ、こっちのワイヤーにカラビナを引っ掛け ネジを回して閉める。

 ガイドスロープにカラビナを直接掛けないのは、DLへの給電と通信に命綱の能力をまとめたハーネスは 拳程の太さがあり、物理的に取り付けられないからだ。

 そして、親指で巻き取りメジャーをロック…ゼンマイで巻き取るこの機構は宇宙での作業時の身体の固定や、(わず)かだが、巻き戻る力を推進力に変える事も出来、船外活動には必須のアイテムとなる…。

 左右の2本のワイヤーをガイドスロープに取り付けるのは 常に命綱が1本が掛かっている状態を維持する為だ。

「ふう…これで大丈夫だ。」

 オレが一息付く頃には、トヨカズは慣れた手つきでワイヤーを(とお)していて、カズナの分もやっている…。

『トヨ兄ぃ…じぶんで、できるって…。』

『可愛い娘が 飛ばされて どっか行っちゃったら嫌だからな…オレがやる。』

『VRでは何度もやってるけど…やっぱり怖いわね…。』

『そう?ロウ 大丈夫…。』

 続いて、レナとロウも付け終わる…クオリアとジガは当然ながら付けておらず、オレ達のワイヤーの確認をしている。

『こちらハルミ…受け取り準備OK…一人ずつ順番に寄こしてくれ…。』

 黒鋼(クロガネ)から降りたハルミが両腰の巻き取りメジャーを引っ張って両手を上に(かか)げ、ライトのスイッチを入れ、側面に付いているライトから白色の光が放たれる。

 そして、こちらが視認した所でライトの光を赤に切り替えて腕をクロス…しばらくして黄色に切り替え、さらに青色に切り替えて 手を前後に振る…OK見たいだ。

『こちらクオリア…ワイヤーOK…そちらに送る。』

『それじゃあ…オレからだな…。』

 トヨカズは、ワイヤーの輪っかを少し たるませて、ハーネスを引っ張り薬室までスムーズに向かって行く。

『トヨカズ回収…次 OK』

 その次は、カズナ…少し慣れない手つきではあるが、少しずつ確実に向かう。

『はい次…。』

 ハルミのOKサインが出て、オレが薬室に向かう…。

 ハーネスの下は月面で 高度200km…。

 慣性の法則に従い 真っすぐ飛ぶが減速が出来ず、ハルミに受け止められる。

『ほい…OK…次…。』

 そして、レナ、ロウと無事に到着…。

『こちら、クオリア…全員渡った…残りは 私とジガ…。』

 ハルミが こちらの顔をヘルメット越しに確認…。

『全員を目視で確認…置き去り無しと…よし、ワイヤーを外してDLに(つか)まってくれ…。

 命綱が無いんだ…離すなよ…。』

 ハルミの指示でオレ達はハーネスからワイヤーを外し、DLに(つか)まる。

 オレ達は 観光レベルでの宇宙遊泳の講習しか受けていないので、資格持ちのハルミとジガの言う事は絶対だ。

 そして、クオリアとジガが飛んで来た。

『よし、ハーネスを外す。』

 DLの背中に付いているハーネスを外し、シリンダー上の巻き取り機がハーネスを巻き取って行く。

 そして、DLと皆を薬室に詰め込んでギチギチになった状態でゆっくりとシリンダーが収納され、ハッチを開けてオレ達は 気圧調整室に入って行った。

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