24 (技術者がいない)
階段を降り、ジガが ソイフードプラントのへの隔壁を開く為のコンソールに触る。
セキュリティも無いに等しく、今時4桁の数字のパスワードだ…総当たり計算で長く見積もっても0.1秒程度だろうか…。
即座にパスワードを割り出し入力…隔壁が開く…。
「うわあ…やっぱりな…。」
ジガは 人のように ため息を付いた。
中に入る…そこには、綺麗に区画分けされた空間に大量の機械が綺麗に並んでいる。
一番奥のデカいのがソイフードプラントだろう…作業員のドラムがいる…。
そして、別の場所にはドラムのメンテナンス機械に、ドラムの製造機械…。
そこに寝かされているドラムを修理しているのは 別のドラムだ。
ドラムを使った無人製造施設…。
部屋の隅には、機能が停止した大量のドラムの残骸が置かれており、共食い整備用のパーツだろう…。
つまり、人の技術者が一切いない状態で ドラムだけで運用しているのだろう…。
だからトラブルが起きても事態の把握も出来ず、対処が出来ないと…。
これが連絡が遅れた理由か?
「さてと…。」
警戒するドラムだが、職員IDを擬装する事で回避…ソイフードプラントのコンソールに辿り着き、キーを押してみる…。
反応なし…か…。
「ここの情報を持っている個体は いないか?」
ウチは 生き残っている3体のドラムに向かって聞く…。
「私です。」
仲間のメンテナンス作業をしていた1体のドラムが作業を中断してこちらにやって来る…。
ウチはドラムの手を握り、Fポート経由で情報を抜き出す…。
「面倒だな…。」
必要なのは作業ログ…表示された情報を片っ端から読み込んでいく…。
ソイフードプラントには問題無し…どうやら兆候も無く、急に止まった見たいだ。
となると他の可能性は…電気か…。
電気が無くては すべての機械が動かない…。
ソイフードプラントの電源ケーブルの通電状態を確認…コンソールが動かないので 近くにある電圧チェック用のテスターを持って来て、取り付けて見る…。
どうやら通電してはいるようだが…電気を大量消費するソイフードプラントを動かすには、明らかに出力が足りない…。
問題は発電所か…。
取りあえず、レナに連絡を入れておくか…。
『どうだった?』
『予想以上に酷かった…。』
『直せそう?』
『いや…直す事 自体は問題無いんだが…。
問題は…技術者かな~。』
『あ~そう言う事ね…。』
レナもこの事態を想定していたみたいだ。
『作業員は全部ドラム…メンテナンス作業もドラムがやっていた見たいなんだが…。
大半は 機能停止状態で共食い整備もされている。
で、ちゃんとした電力が来てないから、連鎖的に問題が起きている可能性が出て来た。
問題は発電所だ。』
『そもそも、この都市は何で発電しているの?』
『小型核融合炉…タイプは砦学園都市の物の小型版だな。』
『え?
核融合炉?
そんなの、どうやって…運用…あードラムに全部任せているのね…。』
『そう、人はチェックミスを起こす事が多いからな…。
機械側に マニュアルチェックさせた方が良いんだ。』
『でも、あくまでも人が苦手なマニュアル作業を そのまま進めているだけ…。
予想外のトラブルには対処出来ない。』
『そう…でも、ここで動いているのは自立式だから、トラブルが起きてもある程度は如何にかなるんだろうけど…。
技術者が全く理解していない…と言うより、完全にいないな…。
いくらドラムが優秀でも補修パーツが無きゃ正常に動かない。
その補修部品は、砦学園都市では都市内で製造可能なんだが、ここでは 輸入に頼っている。
パーツを理解出来なくて発注出来無かったのか…予算が無くて買えなかったのか…。
どっちにしろ、核融合炉を見ないと復旧は 出来ないな…。』
『分かった…確か2層にはクオリアとナオが到着しているはずよね…。』
『ああ…連絡を取ってクオリアに見させる。
それじゃあ 何かあったら また連絡する…。』
ウチはレナとの通信を切った。
「さてと…絶対数が少ないってのは、人員では無くドラムの数ですか…。」
「ええ…。」
「どう言う事です…。」
ジミーがレナに聞いてくる。
「要は この都市は、ドラムを使った完全自動で設備が動いているので、皆の腹を満たすだけの食糧を十分に作れると言う事です。
作れなくなったのは ドラムや施設の経年劣化ですか?
技術者がいないから直せなくて、生産数の減少をカバーする為に増税した…そんな所でしょうね…。」
私がマージを睨みつける…。
私の母親が増税で流浪民に落ちたと言う事は 13年も放置していた事になる…。
「何故放置していたのです…。」
「私が都市長になった時には もう私にはどうしようも無かったのです。
どうやら、100年以上前から若干の不調はあった見たいで…動くからと放置されていました。
私が都市長になった時に 補修しようとしましたが、技術者はいませんし、何より施設が古く、パーツ名ですら分からない有様でした。
更にその年は、天然物の生産量が落ち込み、財政が切迫している状態だったので見送るしかなかったのです。」
「後1年で任期が終わって、次の後任に全責任を押し付けられますからね…。
あなたは、今まで稼いだ金を持って他の都市に移住でしょうか…。」
「………。」
当たりね…。
「それで調べた所、原因が核融合炉の出力低下かも知れないとの事です…。
今、私の部下に見に行って貰ってます。
都市民の安全と何より あなたの安全の為にも都市の総点検が必要だと感じます。」
「でも…。」
「予算が…ですか?
なら、一回国連に倒産を申し入れて、再建の為の計画を立てたらどうです?
大量のドラムと資材があれば十分に再建も可能でしょう…。」
倒産申請をすれば、この都市の管理は国連に移る…。
人権上かなりの問題を起こしているので、国連の管理の元、資金を出して貰いつつ 都市の再建を目指す事になるだろう…。
現状 詰みまくっている状況でそれしか無いようにも思える…。
マージは今後の事を考えているのだろう…ソファーで頭を抱え黙り込んだ。
 




