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01 (天然物は『オイシイ』)

挿絵(By みてみん)

 砦学園都市から4時間程かけて やっと着いたエアトラFを駐機場に降ろし、アントニー()が降りる…。

 目の前には大きな透明なドーム型の建物…インダストリーワンがある…。

 俺は()()()()()()と共にインダストリーワンのドームへと向かった。


 入り口には入国管理官がいて、高圧的な態度で色々とチェックをされる…。

 だが、俺達が 予約を入れている砦学園都市の都市長だと気づいた事で それ態度が一変…。

 明らかに待遇が良くなり、俺と娘はドームの中に入れた…。


 ドーム内は まるでタイムスリップしたような17世紀イギリスを再現したであろう街並み…。

 ここの都市長(いわ)く、まだ人工知能に汚染されていない人間が一番美しく人間らしかった時代…らしい。

 事前に調べた情報によると 貧困格差が(ひど)く、色々な人権団体からも抗議を受けているが、ここの都市長は それを変える事はしない…。

 『下の立場から上に はい上がる事が人の美徳(びとく)』だと彼は言うからだ…。

 なるほど…都市管理システムのケインズ何かを入れたら、完全監視でどんな不正でも明るみになってしまう為、不正をしつつ権力を握り続ける事は難しい…。

 『なら、完全に人工知能を無くした都市に作り替えてしまえばいい』…彼の先祖はそう考えたのだろう…。

 彼らは 上の立場から下の立場の人が足掻(あが)く姿を見て楽しむのだろう…彼らが 下の立場になる事は無いのだから…。

「本当に良い趣味しているな…。」

 天井からは 壁紙ディスプレイの光では無く、わざわざ天井を透明にして 太陽からの光をドーム内に取り入れ、ビニールハウスの中の作物達に降り注ぐ…。

 俺と()のクオリアが歩く…。

 銀色の長い髪を持つ、クオリアは 今はメカ耳を外して人の耳に換装されており、見た目から人の子供と見分けがつかない。

 俺とクオリアは土を固めただけの道を歩く…。

 両側は 大規模な畑になっており、栽培作物は 果物系や、コーンに小麦の穀物…。

 すべてが天然物だ。

 天然物の食材は 高効率の人工食料が出来た事と、氷河期で日照時間が減った事が原因で(ほとん)ど絶滅しており、実際に栽培され作られた 天然物には かなりの()が付く…。

 そして、天然の物の食べ物の生産が この都市の主要産業だ。


 道を歩いているとオフロード車が止まり、中から背広の男が降りて来る…。

「ようこそ…お越し頂きありがとうございます…。

 私が都市長のマージ・インダストリーワンです。

 マージとお呼び下さい…。」

「初めまして、トニー王国 砦都市の砦学園都市の都市長をしています。

 アントニー・トニーです。

 互いに良い取引が出来るよう 頑張りましょう…。」

 俺の握手にマージが応じ握手をする。

「それで…そちらのお嬢さんは娘さんでしょうか?」

「ええ…リア。」

「はい…。」

 俺が下がり、クオリアが前に出る…。

「リア・トニーです。

 よろしくお願いします…。」

 クオリアが可愛らしく優雅(ゆうが)に頭を下げる…。

「はい、よろしくお願いします。」

 クオリアと比べ身長の高いマージは 少ししゃがみ、握手をする…。


 マージが運転席に乗り、俺は乗るタイミングをクオリアと合わせ 同時に車に乗る…。

 これは俺より重い 体重80㎏のクオリアは サスペンションを不自然に沈ませてしまうからだ。

 車が進み、6m程の高い防壁に囲まれている…この都市の中心の政府区画に入った…。


 政府区画は3階建て位の低い建物が多く、不断(ふんだん)にスペースの無駄遣いをしている。

 中心には 大きな城が見え、多分中身は 分厚い装甲材なのだろうが、17世紀イギリスの景観を損なわない レトロな城になっていて、更に中心に天井まで(とどく)く程の塔が立っている…。

 俺とクオリアは 城に通され、応接室に向かう…。

 調度品も時代に合わて レトロ品が多く、下品に成らない程度に豪華になっており、マージの感性に好感を持てる…。

「さて…事前連絡では、天然物の食べ物をご所望との事ですが…。」

「ええ、我が都市は 2030年の人工知能が 人を追い抜く前の最後の10年をモデルに運営されています…。

 その為、今は製造していない天然物の食べ物に 需要があるのです…。

 そして 天然物は金持ちには高く売れ、金は私の財布に入ります。

 あっもちろん公費ではありませんよ…あくまで、私の財布からです。」

 建前を言いつつ、公費で天然物を買って 懐に入れようとしている事を暗に示す…。

「ふむ…それでは、具体的な食べ物は どう(いた)しますか?」

「そうですね…牛、小麦、ワインでしょうか…。

 これらをそれぞれ100㎏…。」

「お目が高い…。」

 牛は大量の飼料がいる為、それを育てる為の食料に大量の面積を必要とする…。

 しかも、ソイフードで美味(うま)い肉が食べられる 今では 家畜の必要性が無く、家畜がいなくなり、現存する数は 絶滅危惧種(ぜつめつきぐきゅ)に近い…それだけに 希少性がある…。

 小麦は、汎用性が高く 日持ちするので色々な料理に使える。

 ワインは 年月が経てば経つほど値段が上がって行き、投資対象としてはピッタリな商品だ。

「良いでしょう…正確な数字は後で出させますが、値段は1000万UM程掛かります…よろしいですすか?」

 ソイフードの1000倍 位か…確かに現状の希少性から考えれば妥当(だとう)な数字ではある…か…。

「分かりました…細かい値段交渉は商品が届いてからするとして…まずは品質の確認です。」

「データは公開しているはずですが…。」

 確かにこの都市のHP(ホームページ)には ちゃんとデータが公開されている…が。

「いえ、私達は公開されていないデータに興味があります…。」

「と言いますと?」

「作物を生産している労働者です…。

 正直、味やコストなら調整が利くソイフードの方が断然良いのです。

 ですが天然物の場合、 消費者は その希少性や生産工程で生じる付加価値を買うのです。

 つまり、どれだけ苦労して作り上げたかで 価格が大幅に変わってくる事になります…。」

 金持ちが欲しいのは 美味しい天然物では無く『食べた』と言う事実で『どれだけ、付加価値が高い物を食べたか』を他人に自慢出来れば それで良い…。

 つまり、重要なのは『生産過程で付加価値をどれだけ出せるか』になる。

「マージ都市長…私達に1週間の視察(しさつ)期間を下さいますか?

 都市の中を見ながら どれだけ付加価値を出せるか見極めたいのです…。」

「分かりました…許可を出しましょう…念のため、護衛もつけて…。」

「いえ、護衛は結構です…自分の身は 自分で守ります。

 背広をめくりホルスターに入るマシンピストル…マック10を見せる…。

「分かりました…それまでに 商品はそろえて起きましょう…。

 購入と金額はそれからと言う事で…。」

「ええ…良い取引を…。」

「良い取引を…。」

 俺とマージは握手をした。


 さて、自由にこの都市を見学出来るようになり、まずは拠点となる宿屋の確保になるのだが…。

 だが これは問題 無い…。

 ゲートの横に観光客用のホテルがあったからだ。

 城のフリーのネット回線を使ってホテルにアクセスし、スイートルームを一部屋 借りる…。

 別に一般用の部屋でも良いのだが…確実にこっちの情報は抜かれているだろうから、こちらの交渉の為もあり、あえて高い部屋にする。

 そして…クイクイとオレの袖を引っ張るクオリアの方向を見ると、ハンドサインでOKと合図…。

 こちらが部屋を借りている間に量子通信機の設置が終わったらしい。

「それじゃあ…見て周りますか…。」

「うん」

 クオリアが 可愛らしく(うなず)いた。

【読んで頂きありがとうございます】

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