26 (見ているだけしか出来ないオレ達は…)
翌日の11月20日木曜…夜…。
DLマスターズ内のキョウカイ小隊のギルドハウス。
スーサイドの事件は 太陽系のネット中を駆け巡り…カナリアの歌もセットで話題を独占した…。
特にカナリアが弾丸を避けながらダンスをするシーンが好評でネットでのチャットや掲示板、SNSでの書き込み件数が凄い事になっている…。
歌の方は 機械を挟んでいる為、生声のような特殊な効果は発揮できないが、それでも かなりの人気だ…。
「犯人は?」
トヨカズが隣にいるカズナに言う…。
カズナは ソファーに座り、ARウィンドウを開いて、光る球にX状の羽が生えたサポートAIのナヴィと一緒に検索を掛けている…。
そして、その後ろからロウが見ている…。
ここは DLマスターズ内のキョウカイ小隊のギルドハウスだ…。
先日の DL強奪作戦で得た報酬で 買った土地にコンテナを複数連結させたギルドハウスを建てて、そこを拠点にしている…。
今は夕食後で 別の寮にいるカズナは出歩けないので、VRでよく集まっている…。
内装は 皆がアレコレ持ってくるので、カオスな状態に成りかけているんだが…。
「うわさ レベル だけど シンギュラリティガードっでてる…。」
「あそこか…。」
多分、これはシンギュラリティガードへの牽制だな…。
大方クオリアが 噂を意図的に流したんだろう…。
「シンギュラリティガードって?」
ロウがソファーの後ろで、カズナのARウィンドウを見ながら言う…。
「ああ…知らないのか…まぁそうだよな…。」
ロウは 外の世界から こっちに来たばかりだ。
知らないのは当然か…。
「トヨ兄ぃ…ロウ、じゅぎょうで ならった…。
わすれている だけ…。」
「……。」
そうなのか…。
「むう…。」
ロウがジト目でカズナを見る…。
「はいはい分かった 教えるって…。
シンギュラリティガードってのは、簡単に言えば、機械を使った快適過ぎる生活を止めようとしている組織だな…。」
「じゃあロウもシンギュラリティガード?」
「うーん、ロウは 快適な砦学園都市が嫌いか?
前見たいな外の生活が良い?」
「ここも良いけど、外の生活が もっと良い…ここ、自然のルールに 反してる…。」
「自然のルール?」
「うん、食べるのに 狩らないし、狩られない…間違ってる…。」
ロウは弱肉強食の自然循環の考え方か…。
「ここだって、自然循環はしてないけど、ヒトの技術で循環させているさ…。
それで、ロウはその考えを 殴って無理やり ヒトに押し付けようとするか?」
「押し付けない…どう生きるかは 動物の自由…。」
ロウがはっきりと言う…。
「だろ…それを殴って押し付けているのがコイツら なんだよ…。」
「悪い奴?……殺す?」
「そう単純に解決出来れば良いんだけどな…。」
「すこし まえ までは、へいわ だったのに…。」
カズナが言う。
「そうだよな…。」
おおむね500年間平和で 安定していた地球に、ワームの侵攻事件をきっかけに それを利用した私利私欲の勢力が参入してきて、再び混沌とした時代に戻って来ている…。
エクスプロイトウイルスに 弱った企業の買い叩き…最近ではネスト攻略戦の傭兵部隊の仲介問題で エクスマキナ都市から抗議があって 話題になったし…。
仕舞いには、経済的に詰んで自殺者するしかない ヒトをビジネスにする…。
この状況が人類の滅亡に繋がらないと良いんだけどな…。
「さて、この後はどうする?
また、適当にクエストを受けて行くか?」
「ロウは狩りがしたい…。」
「狩猟か…。
確かにやった事ないな…。」
このDLマスターズでは ヒトの都合の良いように遺伝子改良されたと言う設定のモンスターも結構な数いる…。
これは 現実世界でも同じで、氷河期で文明崩壊の可能性が有った為、原始人でも生活に困らないように いろいろ作られた…。
例えば抗生物質の草…これは、病気になった動物に種ごと食べられる事で種を運んで貰い、栄養価の高い糞と一緒に排泄されて移動する草だ。
その他に面白いのではリボルバーのシリンダーの変わりになるレンコン…。
コイツは、茎から斜め45度の角度で成長し…種が内蔵された45口径弾を飛ばす事で移動する…。
レンコンが種を飛ばす時期は 危険極まりないが、その前に回収してしまえば、火薬や生成が面倒くさい硝酸を手に入れる事が出来て…リボルバーのシリンダーの変わりに入れれば、銃弾になる…。
外でサバイバルする事になったら、ナオの持っているリボルバーが活躍するかもな…。
ロウが 狩場の一覧をARウィンドウを開いて見ている…。
「で、何を狩るんだ?」
「猪…結構美味い…。」
「イノシシ…ああボアか…。」
「そうボア…。」
ロウが 地図から狩場を割り出し、指を差す。
「じゃあ…狩りに行くか…。
カズナ…位置は?」
「ここから、30ぷん…。」
「よし決まりだな…準備して行くぞ…。」
「おう!」
ロウが両手を上げて言った…。
 




