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07 (休日の過ごし方)

 ナオ(オレ)は自室でベットに寝転がる…今日は水曜日で砦学園都市では休日になる…暇だ。

 さて、休日と言うからには 休まないと行けないのだろうが…如何(どう)すれば休めるのだろう?

 今日は まだ始まったばっかりだ。

 これから明日まで何をやろう?

 ここに来てから 周りの事で忙しくて ロクに考えてなかったが…何をして過ごそう…。

 そう言えば、転生前は何をやっていただろうか?

 確か…掃除、洗濯などの家事…ジョギング何かのトレーニング…。

 うん、休めてないな…と言うより平日もやっている…。

 テロリストをやっていた時は 原付で買い出しに行っていたな…。

 そこから、トニー王国に亡命(ぼうめい)して テストパイロットになったけど…。

 整備師と開発責任者のおっちゃんに休日の概念(がいねん)は無く オレ達は休日もDLの事で話し合ったり(いじ)ったりと平日と同じ事をしていた…。

 うん…考えれば考える程、休日って何だろう?

 あ~こりゃ、レナに文句は言えないな…。


 さて、如何(どう)するか?漫画でも読むか?…だが これも難しい…。

 そもそも今の時代 漫画の数が極端に少ないし、漫画がデジタル媒体(ばいたい)になった事で 漫画の効果音やセリフに機械の音声が当てられ、ほぼアニメになってしまった。

 しかも AIが本人の趣味趣向に合わせて、1人の購買者の為に作品を作ってくれる時代になっている…。

 良い作品とは その人の脳にどれだけ感情の電気信号を出力出来るかで決まる。

 なら、それを数値化して 最大限の感動を脳から出力できるような、映像と音を作れば最上級の感動を体験出来るようになる…。

 これを『オーダーメイド芸術』と言い、今の芸術はそう言う物らしい…。

 一度、興味本位で作って貰って見たが、剣とリボルバーと魔法があり 今では史実とされている中世ヨーロッパ世界で、男の主人公が冒険に出るストーリーで 主人公のパーティメンバーが10歳から13歳位の少女達だ…。

 初見だと言うのにオレの性癖を完全に把握した作品になり、無理やりを嫌うオレの好みに合わせて、主人公がやる事は やるが紳士的で好感が持てている…。

 結局全12巻を読み切り大変良い作品であったが、全12巻全体に計画的に伏線を張り、一字一句無駄の無いその作品は 感動出来るし ロジックがしっかりしていて 芸術的だと思うが人間味が無い。

 人の作品は もっと雑なストーリーで良いんだ…現実の物語も そうそう計画通りに行かないのだから…。


 クオリアは どう休日を満喫しているのだろう?

 内緒話通信で参考までにと聞いて見る…。

 最近、何か困ったらクオリアに相談するクセが付いているな…。

『そうだな…。

 生産性の無い娯楽と言うと、私はレトロゲームをしている事が多い。

 それ以外だと何かしらの仕事をしているな…。』

『休日なのに?』

『そう…自分がやりたいと思っているなら、やって良いんだ。

 仕事に のめり込めると言うのも、ちゃんとした目的なのだから…。

 私達にとって目的の消失は、存在意義の消失にも繋がる。

 私達は 稼働する事に何かしらのメリットが無ければ、動かないからな…』

『オレも さとり病に片足を突っ込んだ感じかな…。』

 人の目的は基本、生命の維持に関係している。

 『飯を食べたい』何かは 特にそうだ。

 ゲームも相手と戦う競争系や、仕事系、シミュレーション系とオレ達が生きる為の仕事や、相手に対して優位に立ちたいと言う感情を刺激する物だ。

 なら、電気を食料にしているオレらは 人の食事をしなくても良い訳だし、機械チートで 最強の性能を出せるオレらは 上がいない位に優位なのだから、競争する意味も無い…これの極致(きょくち)が さとり病だ。

『仕事が出来ている内では 問題にならないがな…。

 そうだな…トヨカズに相談して見るのは如何(どう)だろう?

 トヨカズは 純粋種(じゅんすいしゅ)の生身だけあって目的の生成が上手い…。』

『トヨカズか…。

 分かったありがとう…。』

『別に良い…この相談も目的の一つだ…。』


『え?オレはいつもVRゲームをしているけど…。

 最近アクセス率が悪くて成績が落ちてたから上げてる(とこ)

 トヨカズに通話して見ると パイロットスーツを着ているトヨカズの映像がARウィンドウに表示されるが、背景が荒廃した世界になっている…あーこれは…。

「DLマスターズをプレイ中なのか?」

「そ…と言ってもDLは 使って無いんだけどな…。」

 DLマスターズは 地球で架空の大戦が始まり主人公は傭兵としてDLで戦うゲームだ。

 だが、基本はVRMMO RPGの形を取っている事もあり、治安維持任務としての歩兵戦も多い。

 何よりDLは 歩兵と比べて現場に行くまでの輸送コストと修理する為の整備費などと維持費が高く、何より破壊されたら、復活出来ず そのままなのが痛い…。

 歩兵なら死んでも10分で復活出来るからだ…。

 なので基本は歩兵戦になる…。

 今はトヨカズはVRで その世界にダイブしていて、そちらから通話している事になる…。

 本当に現実と仮想の区別が無いんだな…。

『なんなら、オレの小隊(プラトゥーン)に入るか?

 今 3人だから まだ空きがあるし…。』

『3人?』

「ああ、オレとカズナとレンだな…レンは、オレの店の店員だ。

 見た事はあるだろう…。」

「あ~あの()ね…。

 話した事は無いけど…。」

「てな訳で待ってるよ…着いたら連絡くれ‥。」

「ああ…。」

 ARウィンドウが閉じて通話が終了…。

 確かにトヨカズは目的に困っていない見たいだ。

 カレンが生身の義体にこだわるのは こう言う事か…。

「生身ね…」

 オレはそう言った。


 ナオ(オレ)はベットで横になり、ダイブする。

 まずは、オレのプライベートルームに入り、そこからDLマスターズに繋ぐ…。

 目の前に扉が現れて 中に入り、DLマスターズに向かった…。


 規格化された高層ビルが いくつも並び、日当たりが悪く道路に電灯が点けられている。

 文明レベルは 砦学園都市と(ほとんど)ど変わらない…。

 ただ、街を歩くヒトは アサルトライフルやサブマシンガンを持っている事が圧倒的に多く、ここが危険地帯であると示している。

 オレの持っている銃は 6発式の安いリボルバーだけだ…。

 今までは DLのシミュレーターや作戦に必要なDLを支給してくれる任務に参加していたので 人に撃った事が無い…。

 歩兵戦もやってみようかと思った事はあったのだが、義体のオレにとって、そこらにうろついている人は 現実と同じ人に見え、遊び感覚で射殺する気には慣れなかった。

 トヨカズに連絡を入れる。

 ARウィンドウが現れ、トヨカズは助手席座って車が走っている光景が映し出される…。

「今、入った…。」

『ああ…今戻ってる…後、30分位掛かるかな…。』

 ガタガタに揺れるオフロードの地面を車で走るトヨカズが言う。

 うわっ…トヨカズの背景に見える光景に驚く…。

 座席を限界まで前にして運転しているのは カズナだ。

 後ろにいる上半身が車の天井を突き抜けていて下半身だけが見えるのは、多分仲間のレンだろう…。

『まぁ歩兵戦は初めてだろう…装備を買って来たらどうだ?』

「分かった…そうする。」

 予算はDL戦で稼いでいた為 それなりにある…装備を買うには十分だろう…。

 オレは ガンショップで ウジプロ事ウージープロを購入…。

 これは ウージーマシンピストルと基本的は ほぼ同じ物だ。

 流石に ノリンコ製のウージーマシンピストル何て言う マイナー銃は無かった。

 オプションは 発射レートを毎分600発に下げ、トリガープルが200g…レーザーサイトにダットサイト…。

 正直、昔とは違い、義体側で命中する位置が分かるのでダットサイトで狙う必要も無かった…のだが、今の身体はゲーム用アバターだ。

 このアバターは 人の上限に制限されていて、狙わずに撃つ事も出来るが それでも難しい…。

 なら大金を使って義体化手術を行い 全身義体化する事も出来るのだが、維持費が掛かるし 何よりゲームの難易度を大幅に引き下げてしまう為、あえてやって無い…つまり『縛りプレイ』だ。

 

 服は緑色の汎用パイロットスーツ…右のホルスターにウジプロを…。

 左のホルスターにリボルバーを入れ、腹部のマガジンホルダーには50発マガジン×6本の計300発…。

 リボルバーには 軍用車の装甲を貫通出来る高額なタングステン弾…その他、各種特殊弾を背中のリュックに積める。

 リュックは4次元ポケット化していて、処理の軽減の為なのか 入れると物が消えるが、重さは残る為 筋肉量に合わせて入れる量を決めないと行けない。

 この中には 特殊弾と回復アイテム、更に接近戦用のシャベルのエンビが入っている。

 ちなみにゲームの設定上、オレのアバターは140cmの小柄の為、筋力が低く、リュックの重量や重い銃や高反動の銃にはペナルティが掛かり これはレベルを上げて底上げするしかない。

 利点としては、ハンドガン、サブマシンガンなどの低反動の銃や素早さにボーナスが掛かり…更に小柄なので被弾面積が低い事など上げられる…。

 とは言え この世界の平均身長が150㎝なので、そこまでアドバンテージがあるかは謎なのだが…。


 店の前で待ってると、トヨカズ達が乗る車がやって来て路上に止める。

 乗っているのは、背が縮んだ現代人に合わせて一回り小さくなった軍用車のハンビーだろう…。

 上からレンが上半身を出している。

「アンタが レンか?」

「ええ…名前はナオのまま?」

「ああ…ナオだ、よろしくレン」

 後部座席にオレは乗り込み、限界まで座席を前にしているカズナがアクセルを踏み、ハンビーが進みだした。


「それで今日の目標は?」

 後部座席のナオが助手席に座るトヨカズに聞く。

「ああ…難易度が高くて、オレらだけじゃ手が出せなかったDLの奪取かな…。

 これを見てくれ…。」

 トヨカズはARウィンドウを開き地図を表示させる…。

「これは?」

「現場の地図な…DLの機数は12…1個小隊ごとにローテーションして稼働している…。

 歩兵は50人ですべてNPCで 傭兵の気配は無し…。

 武装はアサルトライフルに弾が50×6の300発、ハンドガン持ち、手榴弾、フラッシュバンは持って無かった。

 これが威力偵察の結果だ」

「ガチじゃん…4人で潰せる訳 無いだろう…。」

 RPG-7や、スティンガーミサイル、C4をなどを使えば 歩兵でもDLを倒せる…。

 ただDL単機ならともかく、複数機が稼働している状態で歩兵が勝てる可能性は限りなく0に近い…。

 1機がダメージを受けたら その情報が瞬時に味方機に伝わり、位置を特定されて即座に反撃されてミンチになるからだ。

 この為 発砲した部隊は確実に生還出来なく、命が無くなる事を恐れない洗脳されたテロリストや人生が壊滅的になり、失う物が一切無い『無敵の人』などが良く選ばれる。

「まっ通常ならな…通常は DL1個中隊以上での規模が必要なんだ…。」

「なら…」

「何だが、そんな大規模なら雇う為の経費も馬鹿にならんもんで、成功した場合の報酬も規模に比べて少ない…。

 諸々(もろもろ)引いたら確実に赤字になるんだな…」

 トヨカズが言う…。

「でも…歩兵なら別…。

 しかも4人で1個中隊分の報酬なら大儲け…。」

 上半身を天井の上に出して周りを警戒しているレンが言う。

「それでプランは?無策(むさく)って訳じゃないんだろう…。」

 オレが言う…。

「ああ…そこでナオだ。

 正直ナオから連絡が来なかったらやらなかった…。

 作戦はこうだ…。」

 ………………。

 ………。

 …。

「出来るか?」

「ああ…ゲームじゃなきゃ、こんな無茶 断ってるんだが…。」

「だが、ここはゲームだ…こう言う方が燃えるだろう…。」

 トヨカズが笑顔で言う…。

「そうだな」

 砂埃を巻き上げつつ、ハンビーは砂地の真ん中にある敵のアジトに向かって走り出した。

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