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02 (最強の小隊)

「皆集まってくれた見たいだね…。」

 都市長の席に座るアントニーが言う。

 先日…都市長名義で『いつものメンバー』に日時、時間、場所の連絡が来て 呼び出された。

 多分、今後の作戦についてだろう…。

 部屋には 向かい合ったソファーがあり、そこにナオ(オレ)達が座っている。

 ドアから見て左側には、オレ、クオリア、レナ、トヨカズ、右側にはロウ、カズナ、ジガが座っていて、中央の都市長席にアントニーだ。

「それで?このメンバーって事は、遊撃(ゆうげき)部隊の話?」

 レナが アントニーに言う。

「それも 有るが、君達には 作戦開始前に 現地に飛んで貰う事になった。」

「現地?」

 オレがアントニーに聞く。

「シーランド王国船の『シーランド』だろうか?」

 隣のクオリアが単語が曖昧(あいまい)だった為、当たりを付けてアントニーに確認を取る。

「あれ?公国じゃ無くて…と言うか あの国ってまだ存在しているのか?」

 自称 世界最小の国家…。

 イギリスが放棄したトーチカを不法占拠(ふほうせんきょ)し、ラジオで海賊放送する為に独立宣言したのが あの国の始まりだ…。

 法的には合法であり、規模が限りなく小さいシーランド公国は、周辺国から国として認識されているものの国として正式な承認はされておらず、国連に加入していない(出来ない)永久中立国だ。

 まぁ実際の扱いは『原住民の土地』と言った所だろうか?

「2020年位に運営資金の問題から競売にかけられて、メガフロート製造企業や造船企業など複数の企業が出資して、今の価値で40億トニー位で買い取られ、シーランド王国になった。

 独立国家だから規制に縛られ無いで、海上都市の運用実験が出来たんだ…。」

 クオリアが答える。

「へぇ…てことは、メガフロートの都市国家なのか?」

「そう…北大西洋に複数ある海上国家の物流を支える重要な国だ。」

「それで、この海上国家にワームの索敵(さくてき)(おこな)って貰っているんだ。

 今月末には 探査海域のすべてを調査出来る見通しらしい。」

 アントニーが言う。

「出発は来月の1日…。

 物資運搬で 北大西洋の海上都市を回っているシーランド船が最接近するから、それに乗って作戦海域まで行く…。

 君達は その間に作戦の立案、検討…来月末に作戦開始になる。」

「作戦規模が1個連隊だって聞いてるけど…それだけの数の輸送はどうするつもりなんだ?」

 オレが気になりアントニーに聞く。

「月にエレクトロンが管理している国連の所有の機体が2個連隊あるから…6個大隊は 地上でかき集めて…後の6個大隊は 月から現地に直接下ろす…。」

「低軌道からのパラシュート降下?」

「だろうね…ただでさえ、海上輸送は DLや弾薬 兵士達の兵站物資を運ぶので負担が掛かるだろうから、それなら 宇宙から落とした方が早いしコストも安いって考えただろうね…。」

 昔なら 推進剤節約の為に何年もかけて現地に向かう都合上、人間は積めず、遠隔操作と探査衛星の自己判断のセミオートシステムが主流だった。

 だが、軌道エレベーターが実用化した事で、安くても1㎏当たり50万UMもしたロケットでの輸送費が、1㎏当たり1万UM程度の価格で物資を運べるようになり、その資源で月基地から資源を供給出来るようにして、低重力と無重力を生かしてスペースコロニー群を作って 太陽系の物流が活発になり、地球の資源を使わずに生活出来るようになった。

 そして、地球が氷河期になった事で 地上の物流網は崩壊したが、天候に左右されない宇宙の物流網は それ以降も発展し続け、太陽系全体を繋ぐまでになった…。

 その為、昔とは真逆に物流網がしっかりしている宇宙側から地上に落とすのが最も効率が良くなっていて、降ろしたDLも、製造コストの2倍の輸送費をかけて宇宙に上げるよりか月で生産した方が安いので、生き残った機体は安価で地上で売られる事になる。

「という訳で『責任者レナ』『戦闘用ヒューマノイド、クオリア、ジガ』『戦闘員、ナオ、トヨカズ』『予備員、ロウ』」

「え?ロウも?断ったはずよ…。」

 アントニーとの話が違っていたのかレナが言う。

「ロウは予備員扱いになってる…。

 連れて行くかは 自由にしていい…が優秀なS(ランク)パイロットを遊ばせて置くのは難しい。

 戦況が悪化すれば 確実に出るだろうし、そうなった場合、一般部隊より独立部隊の方が役に立つだろう。」

 まぁそう なるか…。

 砦都市のDLの部隊は『高度な連携をしつつ敵を叩く』事に重点を置いていて、吐出(としゅつ)した能力を持つ者は それ専用の中隊に回されるか、平均値に慣らされる…。

 いくら優秀なS(クラス)パイロットであろうと、一般パイロットが乗るDL6機で囲めば苦戦は強いられるし、優秀な指揮官が いれば、単体の戦力がどれだけ高かろうが 数の暴力には敵わない。

 ロウの場合、個人能力が高いだけで連携は まだまだだ…。

 なら、異種族部隊に入れてしまった方が 学園都市側としても対応が楽だし活躍も出来る…。

「カズナ、いない…。」

 ロウが言う。

「わたしは しねないからね。」

 カズナは調整された新人類と言う事らしいので、レナが戦場に行くと最悪、新人類が絶滅する可能性が出てくる…その為 一緒には行けない。

「いや…遺伝子データと細胞は保存しているから最悪クローンを作れば 絶滅は防げるから、これも本人の意思次第だね…。」

 アントニーが生命倫理を完璧に無視して話す…いや…ここでは普通なのかも知れない。

「なら、いこうかな…。

 DLのせいびし めんきょ、もってるし…。」

 カズナが言う。

「良いのか?」

 トヨカズが聞く。

「うん…だって このたたかい まけたら おしまいでしょ?

 なら、いしょうけんめい やって しにたい」

 他人に任せて失敗した場合、後悔するからだろう…。

 なら…連れて行くとしても…問題は技能だ。

「まぁメカニックなら死ぬことは無いだろうけど…。

 カズナってそんなに使えるのか?」

 オレがトヨカズに聞く…。

「小型二足に大型二足2種…DL整備師1級…。

 身体が出来てないから現実での戦闘機動は させられないんだが、VRならAAA判定…。

 何より DLのクッソ メンドクサイ書類関係が出来る…。

 いなくても如何(どう)にかなるが、ラクしたいならカズナは必須だな…。」

 トヨカズがカズナの頭を撫でながら言う。

「娘と一緒に『DLマスターズ』をやってた成果?」

 レナが皮肉を込めてトヨカズに聞く。

 ああ…そう言えば前にそんな事も言ってたな…。

「そうだな…オレはそれ位しか 教えてやれなかったし…。」

「でも えらんだのは わたし…ここに いてもいいのに、わたしがえらんだの」

 カズナが迷い無く言う。

「じゃあ、ロウ、行く。

 ワーム、増えたら、外、住めなくなる、から…。」

「それじゃあ…残り2週間…。

 死なないように鍛えるよ」

 オレがそう言い「ナオは頑張り過ぎだが…私も協力しよう…。」とクオリアが言う。

「ロウは 技術より勉強…ウチが面倒を見る。」

 ジガが言う。

「う~ん、頑張る。」

 ロウが渋々(しぶしぶ)了解…。

「なら…わたしは ナビィといっしょに つかうDLのせいびする…。」

「なんだか…やけに気が合ってるね…。」

 アントニーが言う。

「私が考える限り、現時点で最強の小隊だ。」

 嘘を付かないクオリアが言い切った。

「じゃあ…それぞれ 必要な事をやると言う事で 今日は解散…。」

 アントニーの号令で、皆が立ち上がり部屋を出て行った。


「最強の小隊か…。」

 そもそも ロウとカズナは若すぎる為、2人はメンバーに入れる事自体を想定して無かった。

 だが、クオリアに確認を取った所、ロウとカズナを追加で入れるように言われて、話合った結果、皆を集める事になった。

 2人で約束した事は、アントニー()とクオリアは カズナを誘導ぜず、中立の立場を維持する事…。

 結果…クオリアの想定通りなのだろう…ロウとカズナが自分の意思で行く事を決めた…。

「誘導されたのか…それとも自由意志だったのか…。」

 そもそも、なんでカズナを入れたのかが分からない…。

 確かにあの歳で これだけ優秀な人材もいないが…クオリアやジガには簡単に出来る事だ。

「カズナが何かしらの鍵になっているのか?」

 そう言いつつ、アントニーはARウィンドウを開き、書類作業を再開した。

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