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29 (不可侵領域)

 ナオが自分の部屋に帰って30分…。

 時刻は午後10:00に近づいていた。

 クオリア()は 部屋に戻り、今日作ったばかりのもう1着に着替える…。

 今までの私のイメージを根底(こんてい)から崩す程、可愛いらしい白いワンピースだ。

 スカートは大量のフリルで作られ、胸元に赤いリボン…。

 ノースリーブで右肩に『歯車の中に海とそこに浮かぶ雪と氷の南極大陸』が描かれたエレクトロンのマークが見える。

 背中の上半分が大きく空いていて 肌が見え、それを×字に紐で固定されていてる。

 背中に ブラのラインが見えない事から、下着を付けていない事が分かり、腰にある切れ込みからも肌が覗かせている。

 自分の可愛らしさを完全に前に出し、所々に開いて見えている肌から、服の内側の幼い身体を想起させる計算され尽くされた設計…。

 つまり勝負服だ。


 ARの服で擬装(ぎそう)を行い クオリア()が部屋を出て、階段を使い、ナオの部屋に行く。

 途中何人かの女子生徒と会ったが、擬装(ぎそう)されたこの服に疑いを持つことなく素通りし、部屋の前まで来た。

 私がドアノブを回すと…ストレージの中のインスタントキーが認識されてロックが外れ、同時に鍵が自己消滅する。

 ガチャ…。

 ドアを開き中に入り、ドアを閉めて擬装(ぎそう)を解く…。

 ナオの不可侵(プライベート)エリアに入り、部屋を見る。

 照明が落ちているので 当たりは真っ暗だが、自動感知式のエアコンが動いているので ナオは いるはずだ。

 私は 目の光度を調節し、部屋の中に入る…。

 部屋は 驚くほど何もない…家電系は 全部要らないのは 分かるが、動いているのは ホームサーバーだけで、後は備え付けのベッドがあるだけだ。

 ナオは こちらに背中を向け、ベッドで寝ている。

 私が靴を脱いで一歩づつ踏みしめ…ナオに近づく。

 ナオは 警戒心が強く、少しでも物音を立てれば すぐに起きて銃を抜く…。

 それなのに、ピクリとも動かず そのまま寝ている。

 ナオの寝息が聞こえるので、VR空間にフルダイブしている訳では無いだろうし、完全に寝ていたら 寝息は止まる…口のスピーカーから疑似的に音が流れているだけだからだ。

 つまり、起きているのは明白…。


 来ないでくれ…寝てると思って去ってくれ…いや、オレが寝ているフリをしていると(さっ)して出て行ってくれ。

 頭の中の身体が震え、義体に反映しそうになるのを必死で食い止め、願う。

 オレを観測()無いでくれ…。


 ナオの人生は…多分、優秀である事を求められた人生…。

 虚勢(きょせい)を張って自分を追い詰め、周囲の期待に応える為、努力する…。

 それでも人の性能の限界があるから ある程度で落ち着くが、義体化して限界能力が上がった事とワームが現れた事で、更に追い詰められた。

 このままでは 仲間を守って身勝手なヒーロー願望で戦死してしまう…。

 本人にとっては それで満足だろうが、相棒(パートナー)にとっては迷惑極まりない。

 クオリア()は ベッドに座り、寝ているナオの頭をゆっくりと()でる…微細な振動を検知…震えている。

「ナオ…キミは十分な程、良くやっている…。」

 ナオがピクリと動く。

「ナオトの時も…ナオになった時も…キミは全力で生きている。

 キミの存在価値が無くなる事は無いし、私がそうさせ無い。」

 今思えば最初からだ。

 ナオは周囲の環境にすぐに適用し、私を助け、キューブを移動し自己に悩みながらも、自分の(ブレイン)を機械としてアプリを入れた。

 空間ハッキングの時も 今回のレースでもそうだ…。

 私もあそこまで出来てるとは思っていなかった。

 でも…自分を虐め過ぎだ…。

「せめて、プライベートエリア(ここ)で 私の前では、キミはヒーローの仮面を外して欲しい。」

「……。」

「私達は『相棒(パートナー)』なのだから…。」

「…っ。」

「私は、キミをある程度は 予想出来ているし、それを込みで受け入れているつもりだ。」

 私がケーブルを取り出し、ナオの首に接続…もう片方を自分の首に取り付け、ナオの横に背中を見る形で横になる。

「キミが来るのを待ってる。」

 ナオの耳に小声でそう言い…私は 眠った。


 クオリアがナオ(オレ)にケーブルを()し、クオリアが動かなくなった。

 クオリアは オレの背中に向いて眠っている。

 ARウィンドウには『接続許可待ち』と仮想空間への移動コードが表示されている。

 オレがクオリアを見る…。

 普段のクールなクオリアに比べ眠っている顔は数段と幼く見える。

 そして オレの目線が下へと向かい クオリアの白く可愛い服が見える。

 背中と腰から肌が見え、服の中身を想像させるような服…。

 スカートには フリルが沢山付いていて、普段のクオリアのイメージとは違う印象を受ける。

 クオリアは可愛い系も好きなのか…もしかしたら、マジックの時の魔法少女は可愛い服は クオリア自身が望んだ事かもしれない…いや…『一応外に出られる』レベルに収まっているが、肌面積の多さからして、オレを誘う為の服である事は確実…。

 どっちにしろ…オレの性癖は完全に把握されているんだろうな…。


 オレはロリコンだ…。

 厳密(げんみつ)に言うなら 大人の女に嫌気がさして行った為、どんどん低年齢化して言った結果…ロリコンと呼ばれるような少女が好みになった。

 流石に10歳以下のペドは合わないが、そのせいか、第二次性徴期始めの胸が少し膨らみ始め、くびれが出るか出ないか位の超ピンポイントの少女が好みになってしまった。

 これに該当(がいとう)するのが、クオリアとロウ…もう少し立てば カズナもか…。

 成長が早い種族とは言え、5歳児と3歳児がストライクゾーンに入っている時点でもう、色々と世間的(せけんてき)に ヤバイ気がするのだが…。

 ジガに言われた時に、性器を取り付けなかったのも『無けりゃ手を出せないだろう』と言った保険の意味もあった。

 なら、クオリアはどうか?

 10歳ボディのクオリアは くびれ始めの腰と出始めた胸を持つドストライク…しかも歳を取っても体型が変わらない事を考えれば、これ以上の条件は無い。

 性格も、感情的になり理屈が通じなくなる事も無く、オレが好きなコンピューターのように嘘を付けない。

 まぁクオリアは『言いたくない事は 言わない』ので少し信用に欠けるが、仮面を被り、虚勢(きょせい)で生きているオレが言えた義理じゃない。

 後は何だ?年齢か?

 クオリアは13歳…オレが死んだ時が20歳で 今はボディに精神が引かれて、16歳のトヨカズと13歳のレナの間位で落ち着いている…見た目年齢は もっと低いが…。

 同年代だと思えば ヤってても不自然(おか)くないか…。

 と言うか この都市では10歳で成人だし、クオリアは頭の中で何年の加速をしているか分からない…

 しかも機械で人じゃないし、それにヤるのはVRでなのだから、クオリアには一切傷つかず『YESロリータNOタッチ』の精神にも抵触はしない。

 と、こう考えている時点で気になるのは世間体(せけんてい)で、クオリアとヤる事を正当化さえ出来てしまえば、手を出して仕舞えるんだろうな…。

 クオリアの手を…少し躊躇(ちゅうちょ)しつつも触れる。

 人の体温より暖かい 小さな手を握り、横になる。

 クオリアからの接続を許可…接続先を入力…。

 せめて この部屋だけは 自分に正直に生きよう…。

「ダイブ」

 オレが小さくそう つぶやいた。



 ピースクラフトに向かってくるワームの為に皆でVRでDLの訓練をし、現実に戻って()たら、ナオは ベッドに寄りかかりホルスターのロックを外していつでも抜けるようにして眠り始めた…。

 普段、寝ている最中でも警戒しているナオが 寝息(ねいき)をしていない…。

 相当に疲れていたのだろう…完全に意識が無く眠っている。

 クオリア()は ナオの隣でブレインキューブ内の自分の部屋に行き…スリープ状態に入った。

 私が ブレインキューブ内で作業をしていると有線で外部アクセスがあった…。

 原因はジガで 有線ケーブルでジガと私を繋げた見たいだ。

 私が接続許可をし、私の自室にジガを招待(しょうたい)する。


「ロリコン?」

 ソファーに座り、作業するクオリア()が作業を止めて言う。

「まぁ厳密には 違うんだが…(おおむ)ね…。」

「別にそこまで珍しい性癖でも無いだろう。」

 今の時代…VR空間内であれば望む事は何でも出来る。

 女性を切り刻む性癖、強姦を好む性癖、様々な性癖を現実世界に持ち込まない限り、これらは合法で 現実世界での性犯罪の減少にも繋がる為、むしろ推奨されていたりする。

「てっきり、切り刻む系や頭を拭き飛ばす系の特殊性癖かと疑ったが、それに比べれば 子供が性的対象なのは普通だろう…。

 むしろ子供を守ってくれるなら、プラスなのでは?」

 そもそも子供の『可愛い』は 弱者の子供が、強者の大人に守らせる為の処世術なのだから、大人であるナオが引っかかっても何ら不思議は無い。

「合意が無く手を出さない内はな…。」

「ナオに強姦の性癖が?」

「いや…てか良いのか?

 オマエ()()()()何だぞ…。」

「とは言っても、相手はナオなのだろう…。

 私が不特定多数にされるなら問題だが相棒(パートナー)なら普通の事だろうし、むしろナオの為に リサイズする事も検討していたから、手間が省けて こちらとしては助かった。」

「……。

 一応母親の1人って事で忠告したんだが…『合意』って事で良いんだな」

「ああ…合意する。

 それにしても、何故(なぜ)分かった?

 私には、自分の価値が無くならない様に必死に足掻(あが)いているように見えたが…。」

「それも合ってる…。

 今日ウチが、風呂で営業していただろう…。」

「ああ…あれか。」

 ジガの言動が平常時と少し違っていたので何かあると思っていたが…。

「悪乗りもあったが、ち〇こが無くなって、性的感性が失われているかどうか確かめていたんだが、見る所は見ていてるのに 目から『恐怖』が感じられた。」

 ジガのカメラ()の映像をクオリアに見せる。

 拡大してみると確かに恐怖を感じている。

「つまりナオは 大人の女性が怖い?

 確かに ナオと風呂に入る時は いつも私の隣で洗ってるな…。」

 私は 瞬時に過去の映像データを調べる。

 周りが大人の女性だらけ だから逃げて来てたのか…。

「多分ナオは 女のえげつない所ばかりを見て育ったんじゃないのか?

 この場合だと、自分に都合の良いバーチャルに行くか、低年齢化するか…同性に走るか。」

「それでロリコンか…。」

「そう…そもそも、義体の小型化、軽量化技術が進んだのも、ナオの世代が…少女型ヒューマノイドの需要を爆上げ させたからだしな…。」

「その情報は知っている…表向きには孫が欲しいから…実際は少女型セクサロイドが欲しかった。」

 エロは技術革新を産む…VRや義体技術がまさにそうだ…。

「そう…で、問題なのは、ナオは過去の価値観を引きずって 社会的抹殺を恐れているって事。

 結局 LGBTもロリコンだけは 救ってくれなかったしな…。

 友人や人脈がすべて吹っ飛んで この時代に来た ナオにとっては相当なストレス だろう。」

「つまり、そっちのコミュティに誘導して 仲間を増やさせるか…私が引き受けるか…。

 ナオのメンタルの問題もある。

 どっちにしろ私が必要だな…。」

「なら、ナオの事は任せた…。

 こう言った事は 本来はウチの担当なんだが…今回ばかりは無理だからな…。」

 ジガがソファーから立ち上がり、ドアの方向に行く。

「あっそれと…オマエの求愛行動は 相手にとって洗脳と同じだからな…。

 ナオの人生を壊すんじゃねーぞ…。」

 扉のドアノブを握るとジガは量子光となって消えた。


 事態(じたい)が、どう転ぶかまだ分から無いが問題は この戦いを生き残ってからだ…。

 砦学園都市に戻ったら…少しずつ会う機会を増やして砦祭で不可侵領域(ナオの部屋)に行く。

 後はアドリブだな…。

 そう思いクオリア()は また作業に移った。


 ダイブして見るとそこは水中だった…前のスキューバとは違い、身体が軽く『タートル』が無くても泳げる。

 上から照らされる光が水を青く照らし とても幻想的だ。

 光の中から、少女が泳いで降りてくる。

 少女の名前はクオリア…ダイブ前のあの服を着ていてフリルだらけのスカートがクラゲの様に揺れる…服は濡れ、若干(じゃっかん)透けて身体の線が見え、更に美しく見える。

 ナオ(オレ)が上を見上げ、クオリアが手を伸ばす。

「キミは誰?」

 クオリアが聞く。

「今のオレは…キミかな?」

 Tシャツ姿のオレがクオリアの手を(つか)み引き寄せる。

 冷たい水の中でクオリアの手から体温を感じる。

「You's need me?(あなた、達には私は必要?)」

 クオリアが抱きつき…口を合わせる…。

 キスは数秒…顔を離し、見つめ会う。

 水で服がめくれて見えるクオリアの肌…。

 浮力によって引き離されるオレとクオリア…クオリアは、まだ抱きしめてくれはしない。

 オレは 思いっきりクオリアを引き寄せ、強く抱きしめた。

「I need you(私にはあなたが必要)」

 オレの言葉にクオリアも抱きしめる。

 今度は オレが覚悟を決めた様子で、クオリアに長いキスをした。

『待ってた…。』

『オレもさ…。』

 青い水の中…2人の男女は、肌を重ねた。

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