薄幸少女の哀悼歌
とある街のとある家。
その中に、幸せそうな3人がいました。
ですが、突然その中から1人消え、2人になってしまいました。
残された内の1人は少女で、もう1人は美しい女性でした。
少女には、特に取り柄が無く、いじめを受けてしまいました。
女性は少女に対して、横暴な態度を取りました。
少女は悲しくなってしまいました。
ある日、少女は階段から突き落とされてしまいました。
そこから、この物語は始まるのです。
「はっ……はぁっ…。」
細い路地に入り、私は息を整えようと試みた。
「なんで、私が、こんな目に、合わなきゃいけない、の?」
深呼吸をしながら、私は事の発端である2月のことを思い出していた。
まだ雪が降っている2月。私は自室に籠っていた。
学校へはいけなくて、通信教材や、お母さんが買ってきてくれた参考書などを使って受験に向けて、日々奮闘している。
お父さんは、海外出張に行った時に流行病で亡くなってしまった。と、お母さんから聞いた。
小学校低学年の頃、お父さんが海外出張に行った後の事。
私は虐めを受けた。
その頃は、プリントを破かれるとかそういう簡単な事だったけれど、そこからどんどんエスカレートしていった。
ありもしない噂を流されたり、無視されたりするのは日常茶飯事。
暴力を振るわれたり、物を壊されたりすることもあった。
それでも私はそれをお母さんに伝えることができなかった。
何故なら、私如きの問題で、お母さんの手を煩わせられないという思考回路に陥っていたから。
そんなこんなで低学年を過ごし、私は高学年になった。
学年や、クラスメイトが変わったにも関わらず、いじめはエスカレートしていった。
それでも3年間耐え、卒業式の日を迎える2週間前、私は階段から突き落とされた。
一段や二段どころじゃない。
二階分の高さがある階段から突き落とされた。
勿論、意識を失ったし、骨も折れた。
でも自然と痛みは感じなかったし、意識を失う時だって(あぁ、意識飛ぶってこんな感覚なのか。)というくらいの感覚だった。
目を覚ますと、ベッドの隣の椅子にお母さんが座っていた。
私は思わずお母さんに声をかけてしまった。
「お母さん、迷惑かけてごめんなさい。」
すると、お母さんは、声を荒げて私に言った。
「貴方!本当に何やってるの!?
1人で階段から落ちて!
幸い美桜ちゃんが忘れ物を取りに来てくれたからよかったものの、美桜ちゃんがいなかったら貴方どうなっていたか分かる!?
後で美桜ちゃんが来てくれるらしいから、その時にしっかりお礼を言いなさい!」
美桜、ちゃん?
「あの、お母さん。
美桜ちゃんって、苗字何ですか?」
「!?
まさか忘れたなんて事はないでしょうね?
嫌われていた貴方と唯一仲良くしてくれていた遠坂美桜ちゃんよ!」
そんなはずは、ない。
美桜ちゃんは、私のことを虐めていた首謀者だ。
なのに、何故?
何故お母さんはそんな風に美桜ちゃんを認識しているの?
しかも、なんで私が嫌われていたって事を知ってるの?
「それと、お母さん。
なんで私が嫌われていたって事を知っているんですか?」
「それ、は、美桜ちゃんのお母さんに相談されたからよ。
もう、話しかけないで。」
嘘だ。
美桜ちゃんのお母さんはもう亡くなっている筈。
お母さんは、私に嘘をついたの、?
でも、だとしたらなんで私に嘘をつく必要があった?
グルグルとめぐる思考回路がショート寸前だった為、私は考える事を一時放棄した。
いつの間にかお母さんはいなくて、私は近くに置いてあった紙袋から、勉強道具を取り出してきて勉強を始めた。
ガラガラガラガラ
しまった。
勉強に集中しすぎて、来客に全く気付かなかった。
「やっほー、嫌われ者のお馬鹿さん。
階段から落ちた気分はどう?」
嗚呼、嫌だ。
なんでこんな時に、美桜ちゃんがくるのだろうか。
生憎私は足を骨折したから、撃退することができない。
となれば、口論になる事は間違いないか…。
「美桜ちゃん。
なんで貴方のような人がここに?」
「なんでって、それは
人に階段から突き落とされて骨折した無残な貴方を見に来たのよww」
これはもう自白、したよね?
これをお母さんが聞いていてくれれば、楽だったのになぁ……
まぁでも、現実はそう上手くはいかないか。
そんな事を考えながら私は、勉強道具に手を伸ばした。
パシンッ
「ちょっと?
貴方何やってるの?
折角私が直々に来てあげたのに、勉強?
そんなものしまってくれない?」
「そんなもの…か。
貴女にとってはそうかもしれないけれど、私にとっては大事な物なの。
だから、そんな物呼ばわりしないで。」
「へぇ、そう。
そんなんだから父親が死ぬんじゃないの?w」
「いまここに、お父さんは関係ないでしょ!!
関係ない事を持ち込まないで!!」
「わぁ、怖い怖いw
わかりましたよ、お嬢様w お父様のことは一切口に出さないので、私めをお許し下さいw」
「美桜ちゃん、帰って貰える?」
私は、これ以上この人と話したらまずいと思い、そう言った。
「えぇ、そうねw
そろそろお暇しようかしらw
お邪魔しましたぁwww」
美桜ちゃんは笑いながら病室の扉に手をかけた。
「あ、それと。
貴方、ちゃんと口裏あわせなさいよ。」
そう言って、病室から出て行った。
「はぁ、疲れた。
やっぱり美桜ちゃんは苦手だな…」
そう思いながら、私はベッドに体を預けた。
さて、少女の虐められていたという事実は確認できましたか?
この、少女が虐められていたというのが、今後の重点になると思います。
ついでにもう一つ。
少女の名前はまだ明かされていませんね?
ここも、一つ重要な点になると思います。
さぁ、次のお話に参りましょう。