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第2話

主人とわたしは、かつて、同じ会社に勤めていた。

といっても、大きな工場があって、野球部の拠点でもある市と、わたしが暮らした市は、かなり離れていた。


この会社の野球部が都市対抗に出場した際には、各事業所の持ち回りで、チームのマスコットとして、女子の社員を送り出すことになっていた。

取り立ててかわいくないのに、事業所の女子の中で一番野球が大好きだからという理由だけで、わたしはマスコットを引き受け、ベンチに入ることになってしまった。


普段は全く顔を合わせない人たち。しかも男の人ばかり……という環境には、かなり戸惑いがあった。

その中で、主人はわたしによく声をかけてきて、気持ちをほぐしてくれた。


他の選手から、のちに聞いた話によると、

当時、主人はお付き合いしている人がおらず、

「彼女がほしいなぁ」

なんて、口ぐせのように言ってはいたものの、女の人に対して積極的な行動ができなかったそうだ。

「マスコットの人に明るく話しかけて、女の子に接することに慣れてみよう」

先輩の選手からそう言われて、わたしに近付いたとのこと。


チームが準々決勝で負けてしまったあと、主人のほうから、

「これからも連絡を取れたら、嬉しいですけど……」

と言ってきて、わたしは気軽な感じで連絡先を交換した。

この人と結婚するだろうなどとは、全く思いもよらなかった。


しばらく文字のやり取りをしていたが、ある日、

「ぼくがプロの選手になったら、本拠地の町に来てくれますか?」

とのメッセージが届いた。

それは、ドラフト会議の前日。

自分の会社の野球部がプロに選手を度々輩出していることは知っていたから、彼の「プロ」の話も現実味がありそうだと思った。


「実際に入団したら、応援に行きたいです!」

このメッセージには、すぐに返信があったのだが、書かれていた文面には、驚いて、しばらく口が開いたままだった。

「応援に来てほしいのはもちろんですけど、ぼくと結婚してほしいです」


「お付き合いしていないのに、突然結婚なんて言われても……。ちょっと困ります!」

そんなふうにメッセージを書きながらも、心の中では、とても嬉しく、温かい気持ちになっていた。

「ぼくは、いずれこの人が嫁さんになればいいなぁと思っていましたけど、プロ入りの話が来たことから、何だか焦っちゃいまして。申し訳ないです。結婚を前提にしたお付き合いという形でいいですか?」

「わかりました。よろしくお願いします」


ドラフト会議を機に、遠距離恋愛が始まるのかと思っていたが、主人は、わたしの地元から1時間半ぐらいのところにホームグラウンドがあるチームに3位で指名された。

頻繁にというほどでもないが、時々観戦に訪れていた球場。


試合のスケジュールの合間にデートをして、やり直しのプロポーズを受けた。

そして、プロ2年目のシーズンを終えたあと、わたしたちは夫婦になった。

結婚前のエピソードでした。

次のページでは、本編に戻ります。

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