第1話
都市対抗野球の2回戦の始球式は、公募によるものです。
家族でバッテリーを組むことと、野球にまつわる作文を添えることが、応募の条件になっています。
社会人野球の元選手が登場して、お子さんやお孫さんとバッテリーを組むケースが目立ちますが、社会人野球の経験がない方の応募もできます。
野球をやっている小学生のお子さんが、ユニフォーム姿で出てくることが多い一方、大人の親子の方によるバッテリーでの始球式も見受けられます。
社会人野球の大会を主催する新聞社のWebサイトでは、都市対抗野球の始球式をする人の募集が、毎年行われている。
家族の二人一組で、バッテリーを組むというものだ。
わたしが、野球部を持つ会社に勤めていた頃には、公募による始球式は、なかったような気がする。
主人と結婚してから数年後、かつての勤務先のチームの応援に行った時に、親子のバッテリーによる始球式を見たことがあった。
キャッチャー役を、かつて社会人野球の選手だった方が務め、ボールを投げるのは、少年野球のユニフォームを着た息子さん。というパターンだった。
ウチの息子は、地域の少年野球の軟式のチームに入っている。
今年で10歳になる。
エースは上級生で、出番はまだ少ないながら、ピッチャーをやっている。
息子に、始球式の募集の話を持ちかけたら、
「やってみたい!」
なんて、かなり乗り気だったから、応募の際に提出する、野球にまつわる作文を、息子に書いてもらうことにした。
すると、なんと、始球式に採用されたのだ。
バッテリーを組むのは、わたし。
野球観戦は大好きだが、自分でスポーツをするほうは苦手。
主人に登場してほしいところだけれど、それは無理なことだった。
主人は、現役のプロ野球選手なのだ。
都市対抗での始球式の日は、主人のチームは遠方の球場での試合である。
当然、見に来てもらうことすらできない。