襲来
「おはようまーちゃん♪来ちゃった!」
パチリとウインクをしながら鈴葉が言う。ハァ、やっぱり来たか.........。分かってたけどな。
キャリー片手に通学用のリュックを背負って鈴葉がキラキラした目で俺を見てくる。ハァ、鈴葉なら言い出すって分かってたけど、流石に親に止められると思ったけど違ったらしい。それでいいのか?
「おはようリンちゃん!その荷物どうしたの?」
一応聞いてみる。一応な。答えは分かってるけど............。
「これ?今日から私もここで暮らすからよろしく!!というか一緒に住ませてね♪」
予想通りかよ..........。鈴葉なら俺は別にいいが、鈴葉の両親はなんとも思ってないのか?
「リンちゃんの家族は何か言わなかったの?」
普通の親なら年頃の血の繋がらない男女が同じ屋根の下に暮らすのは反対するはず...........。俺に考えが違ってなければ...........。
「うん!特に何も言わなかったよ!!というか言わせなかった♪だからまーちゃんの所なら安心だねって言ってくれたよ」
笑いながら嬉しそうに言ってくる。本当に大丈夫なのか?これって鈴葉が無理矢理こっちに来たってことだよな........?
「あとね、今度まーちゃんがうちに来るならオッケーって言ってた!!..........あっ!でもまーちゃん、行きたくなかったから行かなくていいんだよ。まーちゃんが行きたくないって言ったら行かないってちゃんっと言ったから行かなくても大丈夫!!」
そういうことか。とりあえずは許すが直接会って俺のことを確かめてやるってことか。だったら行かないとな。それに鈴葉が楽しそうに待ってるなら、俺は鈴葉が喜ぶ方を選ぶ。だから今回俺は鈴葉の両親と会わないといけないだろう。
あの時以来会ったことはないが大丈夫だろうか?
「分かったよ!じゃあとりあえずリンちゃん上がって?」
「ありがとう♪」
さてさて鈴葉の荷物どこに置こうか。空き部屋はあるし、そこを少し片付ければ使えるだろう。だが机などの生活する上で欠かせないものがない。
俺個人のはあるが鈴葉用のがない。服はまだキャリーに入れとけばなんとかなる。制服もリビングにでもかけておけば大丈夫だろう。
「ねぇリンちゃん?机とかベッドとかってどうするの?私買おうか?」
「ううん大丈夫!!この前買いに行ってこっちに届けてもらうようにしたから!!」
うわっ........「今は」ないってことか。
どうしよう。誰も家に泊まらせる気なんてなかったから予備の布団がない。
「分かったよ。じゃあ私の部屋はあそこだから、その隣にある部屋がリンちゃんの部屋ね。まずそこに荷物置こっか?」
「はーい」
それから鈴葉の荷物の整理をして、家の中を案内して、昼御飯を食べて鈴葉と話していたらあっという間に夜になりあとは寝るだけだ。
意外と誰かと住むっていうのはいいもんだな。ただそれは鈴葉が相手だからだろう。鈴葉以外ならこうは上手くいかない。そう確信できる。
俺はリビングにあるソファで寝ようとし、鈴葉に俺のベッドを使うように勧める。
「リンちゃん今日は私のベッドで寝てね」
「あれ?まーちゃんはどこで寝るの?」
「私?私はソファで寝ようかなって。リンちゃんをソファで寝かせるわけにはいかないしね」
「ありがと♪でも私だけベッドも嫌だから一緒に寝よ?」
「でも........」
「大丈夫。あの時だって一緒に寝てたでしょ?いっつも寄り添って、私が小さくなって寝てたらいつもまーちゃんは抱きしめてくれた。今日もお願いしたいな」
「...........いいよ」
俺は鈴葉には甘いのかもしれない。鈴葉にお願いされるといつも断れない。
「じゃあ来て?」
鈴葉はベッドに寝転ぶとすぐに腕を広げ俺を待つ。俺は少し躊躇いつつ鈴葉の横に寝転ぶ。するとすぐに俺を抱きしめてくる鈴葉。
「久しぶりだ。...........スンスン。まーちゃんの匂いだ。あの時と変わらないまーちゃんの匂いと温もりだ。懐かしい.......。ずっとこれを待ってたんだよ。私嬉しい。やっとまーちゃんの隣にいられる。これからずっと私はまーちゃんを放さないよ。ずーーっとね」
ハァ、仕方ないか。あの時と同じように抱きしめてくるか。
さずがにあの時にやってたこと全部はできないが、抱きしめるくらいなら大丈夫だろう。抱きしめるだけで鈴葉が喜ぶなら俺は迷わずやる。
ギュッと鈴葉を抱きしめいつも言っていた言葉を耳元で囁く。
「リンちゃんおやすみなさい。いい夢見てね?」