克服
未だに読んでくださる人がいてびっくりしてますが細々と続きを書いていきますのでよろしくお願いします。
最後に来たのはもちろんまどかの部屋。
正確にはまどかの部屋にする予定だった部屋。
勉強机にベッド、タンス、本棚とかが揃ってる。でも男の子の要素を完全に排除した形になってるからちょっと女の子の部屋っぽい。
元々は私が使ってた部屋だったけど、それをまどかの部屋にしようって話が出てた。..........誘拐される前にね。
だから家具とかは私が使ってたおさがりが多くて見慣れたものが多いと思う。
だってこの部屋まどかと遊んでたもんね。絵本を読んだり、積み木で遊んだり色々した。たまにしつこくて怒ったこともあったけど、ここは楽しい思い出が沢山詰まった部屋。
「どうまどか?ここは見覚えがある.......?」
キョロキョロ周りを見渡していたまどか。
ぬいぐるみが置かれてるところを見ると少しだけ固まったあと走ってぬいぐるみのところに行った。
「このこ、わたしのおきにいりのこ」
まどかが抱っこしたのは黒猫のぬいぐるみ。
..........覚えてくれてたんだね。黒猫のぬいぐるみがまどかは大好きで全然離さなかったんだから。寝る時もずっと一緒だった。
「おねえちゃん、と、あそんだような、きがする」
「そうだよ。ここでまどかはお姉ちゃんといっぱい遊んだんだよ」
今日色々家の中を歩き回ったけど1番反応があったのがここ。
まどかにとっても楽しい思い出が詰まった場所で、すぐに思い出してくれた。
辛かったかもしれないけど、こうやって思い出してくれた。それだけで私は嬉しい。泣きそう。
でも今日はこれだけじゃない。
今から夜ご飯を食べるんだから。
お母さんとお父さんが用意してくれたまどかが好きだったご飯を。
ちょうど今お母さんからも準備ができたって連絡も来たから行こうか。
「ねぇまどか?」
「ん?」
「ご飯食べようか?」
「うん」
まどかの部屋は2階にあってダイニングは1階にあるから階段を降りていく。
ダイニングにつくとそこにはもうご飯が準備されていた。
ハンバーグ、フライドポテトとか子どもが好きそうなものを中心に作られてた。
まどかの好きなものは正直分からなかった。病院食では嫌いは分かるけど好きは分からないし、私達の記憶の中のまどかは今よりも幼くて食べれるものも少なかったし.........。
「さぁまどか、食べよ?」
「.....................うん」
さすがお母さんのご飯。どれも美味しい。
まどかも美味しそうに食べてくれてる。
無言ではあるけど口の中いっぱいにつめて食べてる。ここが安全で私も食べてるから安心って思ってくれたんだろうね。
だからたった2人だけど久々に同じ食卓を囲めてる今が本当に愛おしい。
まどかがいる。私の目の前でご飯を食べてる。まどかが家に帰って来てくれて、また同じ時間を過ごせる。
絶対に叶わないって思ってたことができてる。こんなに嬉しいことはない。
だからこの時間をお父さんとお母さんにも共有したい。
顔を合わせることはできない。でも言葉くらいならいけるはず。
「ねぇまどか?ご飯美味しい??」
「うん。美味しい」
言って欲しい言葉を言ってくれた。でもまだ足りない。
隣の部屋にいるお父さんとお母さんには届いてない。
録音はしてるけど、でもできるだけ生の声を聞いて欲しい。
あんなに優しいお父さんとお母さんなんだからこれぐらいは許して欲しい。
「まどか、ごめんね」
「.................ん?」
「今からまどかに嫌われることお願いするね」
「.................。」
「この携帯に向かってご飯が美味しかったって言って欲しいんだ。あっちから声はしないから大丈夫。このご飯を作ってくれた人にお礼を言って欲しいんだ」
「.......................うん」
まどか、本当にごめんね。嫌だって分かってるし、まどかは賢いから多分電話の向こうにいる人が分かるってるんじゃないかな?
でもねお姉ちゃんはそれに甘えるしかないんだ。
だってお父さんとお母さんにだってご褒美はあっても良いんだから!!
それにまた今度まどかにはお詫びとしてお菓子でもなんでもあげるから...........今回だけは我慢してね。
「じゃあまどか今からかけるね」
「.............ん」
お母さんの携帯に電話をかける。
今から電話をかけること。一言も喋っちゃダメってことはさっき連絡したから大丈夫だと思う。
「................よし。繋がった。じゃあまどかよろしくね」
私の携帯をそっとまどかの耳にあてる。
「......................ごはん、ありがと。おいしかった。おとーさん..........おかーさん」
.....................やっぱり気づいてた。
「まどかありがとうね。ほんとよく頑張ってくれた。こんなお願いしてごめんね」
「...................だいじょうぶ」
「ご飯食べよっか」
「うん」
電話口からは必死に声を殺しつつ泣いてるお父さんとお母さんの声がする。
これぐらいなら許してくれるはず。
今まで愛する子どものために会わないって選択をとった優しくて強くて尊敬するお父さんとお母さんだから。
私が頑張れば済む程度のことならなんだってやりたい。
だって私はまどかのお姉ちゃんで、お父さんとお母さんの娘なんだから!!




