安心
「おはよーまどか............って、ありゃりゃ。寝ちゃってたか」
今日も今日もとてまどかのもとに来た私だけど、今日はちょっとタイミングが悪かったらしい。
朝早くにでも起きたのかな?まだ10時だけど、もう二度寝?
でもお姉ちゃんは安心したよ。二度寝ができるくらいにはここが安全だって思えてるってことだもんね。
最初の頃なんて、まどかはまだ幼いのに隈が少しできてたからね。ゆっくり寝れるって幸せなことだからお姉ちゃんは嬉しいです。
でもそうすると私が暇になる..........。いつもはここからまどかと話をしたり、抱きしめたり、少しだけ散歩をしたりしてたけど、まぁしょうがないか。
ふふふっ、やっぱりまどかは可愛いな。
幼い子どもはみんな可愛く見えるけど、まどかは特に可愛い気がする。なんていうのかな?中性的っていえば良いのかな?身内贔屓もあるけどやっぱりまどかは可愛い!!
だからまどかを誘拐しやがった犯人は絶対許さない。次目の前に出てきたらどんなことをしてでも追い払ってやる!!
..................変なこと考えずに真面目になろう。
といっても本当にやることないし、今ゲームするのもあれだし...............ここに置かしてもらってる小説でも読んでおこうかな。
ただ男の子と女の子が出会って、ケンカしながらも仲良くなって、恋に落ちるただ普通の恋愛小説。私のような第三者から見ればただただ、どこにでもありふれたようなお話。でもきっと本人達にとっては特別で、大切で、かけがえのないもの。
そんな小説。
こんなこと言うなんておこがましいって分かってる。
でも、どこか私とまどかの関係に似てる気がする。
たしかにまどかは人にとっては憐れまれるものだと思う。幼くして誘拐されて、親元を長い間強制的に離されて、満足に友達と遊ぶこともできなければ、親に甘えることだってできなかった。
でも他人からしたらその程度でしかない。悪い言い方をすれば、「履いて捨てるほどある可哀そうなエピソードの一つ」でしかない。
でも私ならどう?
まどかの家族で、ただ一人の姉。
世間では「履いて捨てるほどある可哀そうなエピソードの一つ」でも私には違う。
私にとっては「身近で起きたありえないこと」。まどかがこうして帰ってきたことだって私は奇跡だって分かってる。でもそれを世間は知らない。
その程度にしか世間は思えないから。
どこかの誰かが偉そうにまどか達が誘拐された事件で何か言ってたけど、それって結局はパフォーマンスの一種でしょ?自分たちはこんな活動してますよーっていう宣伝の一種でしょ?
だって事実まどかに接触してきてないもの。
連絡だって来た事ないもの。あの人達が言ってるのはただのきれいごと。上澄みだけのこと。本当にまどかのことを思って行動できてるのは私達家族と、ここのお医者さんや看護師の人達だけ。
だからちょっとだけ似てるなって思ったの。
世間にとっては普通ではないかもしれないけど、よく聞く可哀そうなエピソードでも、私、ううん、私達家族にとってはありえないこと。
そして今こうやってまどかと話ができて、触れ合ったりできるのが奇跡だってことも分かってる。
これが私達にとってありえないことで、でも特別なことじゃなければいったい何なの?
.................ヒートアップしすぎた。
小説を読むことに戻ろう。
もう何回も読み直してる作品ではあるけど、何回読んでも飽きないくらい私はこの小説が好き。
「...........んぅぅ」
....................................あれ?
「............っ!?!?!?!?!?」
声にならない悲鳴を聞いた。きっと寝起きで私が誰か分からなくてびっくりしたんだろうね。
「おはようまどか。私だよ?お姉ちゃんだよ???」
こういう時は焦らず冷静に対処すること。
私の声を聞かせて、ここにいるのが私だって教えてあげる。
「よく眠れた?」
「...................あっ。..............おねえ、ちゃん」
「うん。お姉ちゃんだよー。おはようまどか」
「............おはよ、う」
うんうん。今日も元気そうで何より!!!
今日はどこまで話せるかな?どこまで遊べるかな?
できたらまどかを膝の上にのせて後ろからぎゅーって抱きしめたいけどできるかな??
.................大丈夫、きっと大丈夫。
まどかだって最近ではすっごい良くなってるんだからきっと大丈夫。
私が怖がってどうする。
私はまどかのお姉ちゃんなんだから。
不安に思ってるなんて思わせちゃダメ。私の不安がまどかに伝わると絶対に気をつかわせてしまう。
それだけは絶対にダメ。この子にはのびのびと成長してほしいんだから。
だから私は迷わない、不安に思わない。
少なくともまどかの前ではね。




