好機
もうそろそろ長くなってきたのでこれにて悪行の晒し回を終わります。(私がもう想像しながら書きたくないのも理由の1つです笑)
最初の映像から約3年から経った映像が最後になった。
2人とも身長も伸び成長していた。右手を貫いた子どもを見るとジッと見なければ分からないほど傷は目立たなくなっていた。ただまだ後遺症があるのか少し動かし辛そうにしている。
髪も伸びておりまどかと呼ばれた少年?はもう女児と言われても誰も疑わないようにまで成長?していた。もちろん鈴葉と呼ばれた幼女も同様に少女らしさが少し出てきた。
この頃になると2人はもうほとんど話さなくなってしまっていた。将来のことも、ここから出てやりたいことも、今日あった出来事もほとんど話していない。
しかし2人はアイコンタクトを取るだけで何を思っているのかが分かっているのか頻繁に目を合わせては笑ったりしている。
そして何よりも話さなくなったからかより一層2人の物理的距離は縮まった。縮まったよりも0になったといえば良いだろう。
何があっても、何をされても2人は離れることはなかった。たとえ女性に虐待まがいのことをされても決してお互いを離さなかった。片割れを守るために前に出て庇うことはたくさんあった。その時はたしかに物理的な距離は離れていた。しかしいつでも2人は心の距離は0だった。
そんな生活を送っていたため身体のあちこちに傷をおっており、まどかと呼ばれた子どもは特に酷い。
刃物で切られた跡、タバコの火を押し付けられた跡、鞭で叩かれた跡がたくさん残っている。
果てには頭と右腕と両足に巻かれた包帯が痛々しい。
一方鈴葉とよばれた子どもはというとまどかよりかはまし、という程度でやはり刃物で切られた跡などたくさんある。しかし不思議と殴打痕はあまり見られない。傷も最小限に見られる。
その理由はおそらくまどかと呼ばれた子どもが鈴葉とよばれた子どもを庇っていたからであろう。
そうでないとあそこまで徹底的にボロボロにされるはずがない。
今日もまた何かされるのだろうと身構えていたが何もされなかった。
それどころか女性の姿を見なかった。
それが2日3日と続いてくるとさすがに2人とて怪しく思えてくる。
「...................ねぇきょうもこないね」
「...........そうだね」
「.......................こんなこといままでなかったよね?」
「.............なかった」
「..........................もしかしたらいまならにげれる?」
「................わかんない。でも、もしあのひとがいたらまたまーちゃんが......」
「わたしならへいき。だからかくにんしてみようよ」
「.....................うん」
2人は立ち上がりいつもは鍵がかかっているドアノブをひねる。
すると簡単にドアが開いた。
「.............あいたよ!!いまならにげれるよ!!!」
「................うん。じゃあまーちゃん、わたしのてをにぎってね?」
「.............うん?」
「.....................なにかあったら、いけないから。これなら、いつでもたすけれるから」
「................................................うん」
2人は手を繋ぐと開いたドアから駆け出す。
3年もの長い間監禁されて走り慣れてない足で走り出す。
やはり女性はいないのか誰にも止められずに2人はついに外の世界に出ることができた。
「まーちゃんそとだよ!!わたしたちにげれたよ!!!」
「.............そうだね。でもまだおねえさまがいないとはかぎらないからきをつけてね」
「うん!!」
鈴葉と呼ばれた子どもは嬉しそうにしているが、まどかと呼ばれた子どもは冷静に考えている。
そこから2人は走り続けた。
見慣れない街並みの中をあてもなく走り続ける。
時には転び、膝から血が流れながらも走り続ける。
するとそこで初めて2人は下校途中の高校生のカップルを見かける。
「..........まーちゃん!!」
「.............!?」
すぐにまどかと呼ばれた子どもは自分の後ろに鈴葉と呼ばれた子どもを隠す。
「おいあまね!その2人の子ども怪我してないか?」
「うん。それにいっぱい包帯も巻いてるし................私が話しかけてくる」
茶髪ショートのあまねと呼ばれた少女が2人に近づく。
「酷いけが........ねぇ君たち大丈夫?」
「...................。」
「.............................。」
「まぁそうだよね。知らない人から話かけられてるもんね...........。」
そう言って少女は2人の子どもを観察する。迷子かもしれないと思いつつも、どうすれば良いか分からず2人を見つめていると、急に2人が走り出した。
「にげるよ!!」
「............あっ!待って!!せめてその怪我くらい治させて!!!」
必死に走って逃げる2人を追いかける少女。その後を携帯を取り出しながら追いかける少年。
足がもつれたのかまた子ども達は転ぶ。しかも今度は顔から地面についた。
「もう!言わんこっちゃないんだから!!ほら傷見せて。痛くしないから」
追いついた少女が2人を立たせようと先ほどよりも傍に近づく。すると身体中の傷跡や傷に気づいた。
「しゅう!!今すぐ救急車呼んで!!!この2人大怪我してる!!!!」
「分かった!!」
「ごめんね。知らないお姉ちゃんに触られるの嫌かもしれないけど許してね」
そう言ってまどかと呼ばれた子どもを抱き起そうとした。
しかしそれは阻まれてしまった。なぜならば、
「まーちゃんにさわるな!!!!」
鈴葉と呼ばれた子どもが防いだからだ。
「でも!はやく治さないとこの子危ないよ!!」
「しらない!!あなたみたいなひとがまーちゃんにさわらないで!!!」
倒れているまどかと呼ばれた子どもを必死に守っている鈴葉。その背は小さくとも、幼くとも絶対にまどかと呼ばれた子どもを守ろうとする気持ちが見れる。
「...............っ!!」
こうなっては手に負えない少女。無理やりどかすのは簡単だがそれはしてはいけない気がした。いやできる気がしなかった。それほどまでに鈴葉と呼ばれた子どもがまどかをと呼ばれた子どもを守ろうとしていた。
「あまね!もうすぐ救急車くるって!!」
「ありがとうしゅう!でも.............」
少年は通報が終わったのか少女の元に駆け寄ってきた、が、そこにはどうもすることができない少女がいた。
「ごめん。私にはこれ以上何もできない」
「なんでだ?」
「見て。あんなに幼い子が必死に守ろうとしてるんだ。本当は手を出すべきなんだけど、なんだかそうしちゃいけない気がする..................」
「...............................もしかして、虐待とかにあってた子どもなのか?」
「そうかもしれない」
「..........................ちょっと警察にも電話してくる」
「お願い。私はあの必死に私たちの前に立ってる子の写真を撮るね。何かの役に経つかもしれないから」
そう言ってパシャリと写真を撮る。
「いきなりごめんね。今救急車と警察呼んだから安心してね」
「.....................んー!!!!」
「ダメ...かぁ..........」
低く唸る幼女に何もできない少女。
すると遠くから救急車のサイレンの音が響いてきた。
「.........................!?」
「安心して、今から病院行くだけだから」
「..................びょういん?」
「そう、病院よ。その後警察も来るからね」
「........................けいさつ?」
「お巡りさんのことよ」
「...............ほんと!?わたしたちたすかるの!?」
「.........................うん、助かるよ」
「よかったぁ................」
そう言って泣き出す幼女。まどかと呼ばれた子どもの前に立ちながら泣いている。
「.....................あなた達のこと全然知らないけど、良かったね」
「.............................うん!!」
こうして2人はあの日逃げることができた。心優しい高校生達に見つけて貰えたから何とかなったのだ。
これにて映像は終了している。
「あははは!!やっぱりこの2人は最高ねっ!!!」
そう笑う女性の声が部屋中に響く。
まるで1度逮捕されたことも計画の一部であるかのように、なんの後悔もなく、負の感情もなく、ただひたすらに笑い続けた。




