御用
ある程度書いたら不定期更新に入ります。次は明日か明後日あたりです。
はぁ、バレるの早くないか?ものの数時間でバレてるんだが.........。名前聞いただけで俺だと判断するとは恐ろしいやつだ。
仕方ない、話し合いに応じて少し意地悪をして正体を明かすか。
それから昼休みになるまでオリエンテーションを中心とした授業を受ける。テストの出し方から評価基準などを教えてもらって、少しだけ授業をするといった内容だ。
退屈だが最初だから仕方ないと割り切る。がやはり暇だ。この程度の問題で躓くなんて勉強不足の奴しかいないだろと思う。
そんな不毛な時間を過ごしてついに昼休みとなる。チャイムが鳴り終わり、号令が終わった瞬間彼女は、いや鈴葉はすぐにこっちにきた。
「ついてきて下さい」
ついてこいと言いながら鈴葉はガッチリと俺の手を握ってやがるから、ついていくしか選択肢がない。
そしてついたのは屋上。鈴葉は俺を引っ張っていたが、今は俺と向き合うように立っている。..........手はそのままだが。
「お久しぶりです、まどかさん。忘れたとは言わせませんよ?」
「なんのことだ?俺はお前を知らない」
少しくらいだからいいよな。すぐにバレる嘘をつく必要性は感じないが、個人的に楽しいからやっている。
「嘘ですね。まどかさんはきちんと私を知っています。もちろん私もまどかさんのことは知っています」
「ふうん俺以上に俺を知る人とはね..............」
「当たり前です。私はあなたのことが.........おっとこれ以上はダメですね。まどかさんのトラウマを刺激してしまいます」
そこまでお見通しなのかよ。でももう少しぐらいいいだろ?
「三ヶ瀬さんもし仮に俺があんたのこち知ってる人だっていうのなら何か証拠があるんじゃないかな?」
「ええありますよ」
すると鈴葉はいきなりブレザーを脱ぎ、シャツのボタンをいくつか外し右腕を出した。あいにくそんな格好されても俺はなんとも思わないんだがな。
「まどかさんも制服を脱いで左腕を出してください。この傷とまどかさんの傷が繋がったらあなたは私の知っているまどかさんです」
そうきたか。たしかにそうだよな。偶然にも同じ場所に、それもぴったりに傷が繋がるなんてありえないよな。
鈴葉だけ脱いで俺は脱がないってなんかおかしいから俺も鈴葉と同じ格好をする。そして俺の左腕と鈴葉の右腕を合わせる。すると繋がる傷跡。
これで確定した。俺は鈴葉が知っているまどかだ。
「やっぱり合いましたね...........お久しぶりです。まどかさん」
「おう。久しぶり鈴葉」
「なぜさっきまで他人のふりをしていたのですか?」
「なんとなくだ。それよりも鈴葉、口調が変だ。直せ」
「まどかさんもですよ。私達2人だけの時は演じなくてもいいんですのにね」
「そうだね...........うんこうしよっか。久しぶりリンちゃん」
「ふふふ、久しぶりまーちゃん」
久しぶりにこの口調で話した。俺のこの口調はあの日々を過ごしていくなかでついた、いやついてしまったものだ。いつもの口調は意識的にやっているからこっちの方がしっくりくる。
目の前の鈴葉は教室にいた時とは違い、感情豊かになっている。この姿を見せるのも久しぶりなんだろうな。
「じゃあまーちゃんご飯食べよ?」
「だね。ご飯一緒に食べよっか。久しぶりだねリンちゃんとご飯食べるって」
「そうだね。でもこれからずっと一緒にいられるから今まで我慢してきたことやろうよ」
「うん、いいよ。リンちゃんがいなくて寂しかったんだから」
「私もだよ。まーちゃんがいなくなって退屈だったんだから」
気づいているか?このやり取りが無駄なことだって。俺達は中身のない人間だ。言葉に意味なんてない。口調だってそうだ。ただその場の雰囲気で言っているだけだ。
この場で本当のこと。それは鈴葉が俺を必要として俺は鈴葉を必要としている。
こんな共依存に陥ってしまった。だがこれは必然だ。
俺達は離れることはない。必ずどこかで巡り合わせる。だから俺達を引き離したって意味がない。俺達を本当に治したいならそれは...........殺す以外に方法はない。