襲撃
ピンポーンっとチャイムが鳴る。
思わず近くにいた鈴葉と顔を合わせるが、あっちもあっちで俺の方向を不思議そうな顔をして見つめている。
不思議そうな顔をしてるから何も心あたりがないんだろう。もちろん俺もない。
そもそも俺の家に宅配物が来ることはないから勧誘か?
それならもちろん答えは1つ。お断りだ!丁重に帰ってもらわねば。
一応鈴葉にここにいるように伝え、俺は玄関に向かう。
そしてドアを開ける。そこにいた人物を見ると俺は固まってしまった。
「お!?ヤッホー♪元気してた?まどか!!」
綺麗な黒髪を俺と同じくらいの長さに切っている女性がいた。
快活な笑みを浮かべてこちらを見るとすぐに抱きついてきた。
うん。この行動にこの見覚えのある顔、そしてこの雰囲気まさしくあの人だな。
ていうかなんでここにいるんだよ!!おかしいだろ!
「なんで!?なんでここにいるのお姉ちゃん!!」
そう。この人は俺の姉であり、1人暮らしをするまでずっと気にかけてくれて、俺がここまで生きてこられたもう1人の恩人である平塩玲華がそこにいた。
「お姉ちゃんどうしたの?何かあった?」
「特にはないかな。ただ、まどかが元気にしてるかなって心配したから」
未だに俺を離さない姉だが、本当に俺はこの姉には敵わない。だからここは姉の好きにさせておく。
おそらくここに来た理由は本当に俺を心配したんだろう。ただの勘だけで俺の不調を悟ったんだろう。
いつもそうだった。俺がどんなに隠しても一目見るだけですぐに俺に不調見抜く。少し話しただけで俺の不調を見抜く。
そんな姉だからこそこうやって来てくれたんだろう。
俺は何度姉に救われた分からない。
今回の目的も俺の不調を治すことなんだろう。
俺の本心を唯一理解してくれているから、俺はよく本音を言わせてもらっていた。いや、言わさられていた。
言わなかったらそれはそれで大変な目にあった。
一緒に布団で寝かされたり、一緒に風呂に入らされたり、ご飯を食べさせてくれたりと、恥ずかしいことばかりされてきたから俺は姉にだけは本音を打ち明けるようにした。
でもこれは俺のことを気遣ってのことだと今では分かっている。
いつ壊れてもおかしくなかった俺を繋ぎとめてくれたのがこの姉だ。
俺はこの姉に救われた。それも姉は俺に何の見返りに求めなかった。本当に何に俺から渡した物はない。
なのにこの姉は、ただ俺が弟だからって理由だけで助けてくれた。
そんな頼もしい姉が今俺を抱きしめている。
「うん。なんとかやっていけてるよ。さっ、中に入ってお姉ちゃん。お茶とかお菓子用意するね」
「良かった〜。お姉ちゃんは安心したよ。じゃあ遠慮なく頂こうかしら」
姉は俺を離すと家の中に入ってくる。が、姉は玄関に入った瞬間に固まった。何があったんだ?
「ねえまどか?これ誰の靴?これってまどかのではないでしょう?」
あ...........ヤバイ。この姉は自分が信用した相手でないと俺に近づけさせないくらい過保護だ。
目に見えて警戒している。いくら鈴葉といえどもこの姉の相手は難しいだろう。
「えーっとね、私が1番信頼してる女の子の靴だよ」
「ふーん!それってお姉ちゃんよりも信用できるの?」
うわっ、目から光が消えてるんだが............。俺のことに関すると姉はすごい性格になるからなぁ。
「う、ううん!お姉ちゃんの方が信頼できるし大好きだよ!!」
これだけ言っておけば大丈夫だろ!.........大丈夫だよな?
「よしよし!さすが私の可愛い妹。分かってるね〜」
ふぅ、なんとかなったな。姉は嬉しそうに身体をクネクネさせているからとりあえず放置するか。
早めに帰ってきてくれよな姉さん。
少しして姉が落ち着いたからリビングに通す。鈴葉がいるけど大丈夫なはず。
扉を開けてリビングに2人で入ると、突然やってきた謎の人物の登場に鈴葉はすごく混乱している。
鈴葉ごめんな。強く生きろよ。俺はこの姉には何もできないんだ。
だからこう言うしかない。
ファイト鈴葉!!!!!




