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 パチリと目が覚める。今日は気持ちよく起きれた。いつもとは違う朝だな。いつもは朝が弱いから寝起きはふにゃふにゃしてる。ちなみに俺の隣で寝ている鈴葉も一緒。朝がすごく弱い。


 ん?なんで今日はスッキリ起きれたって?それはな、特に何もないからだ。俺だって体調の悪い時くらいある。いや、悪くない日が少ない。週1くらいでしか万全の体調にならない。


 今日は運がいい。朝から何もない気持ちの良い朝だ。


 パジャマを脱いで部屋着に着替える。薄手の水色のパーカーに膝丈の紺のフレアスカート。休日はいつもこんな格好をしてる。ただ鈴葉に見せるのは初めてだかな。


 そういえば、下着はどうなってるかって?想像に任せるわ。ただ俺は本格的な女装をしているとだけ言っておく。


 未だになぜこんな格好をするのか俺には分からない。ただ昔から強制されてきていたから、こっちでないと落ち着かない。なぜかソワソワしてしまう。


 まぁそんなことはどうでもいいんだ。


 エプロンをつけて朝ごはんの準備をする。最近は鈴葉が料理をしたいと言って聞かないから少しずつ教えている。


 鈴葉は勉強も運動もだが、なんでも飲み込みが早い。だから鈴葉はすぐに上手になるだろう。


「まーちゃん、おはよー」


 朝ごはんを作っていると鈴葉がこちらの部屋にやってきた。


 鈴葉、流石にそれはないだろう。女子なんだから寝癖をそのままに寝ぼけた目をこすりながら、こっちに来るのはまずいだろう。


「おはようリンちゃん。先に顔洗ってきておいで。ついでに髪も直しておいてね。そのままにしてたら私が直しちゃうよ」


「はーい。じゃあ髪はこのままにしとくねー」


 は?何言ってんだ鈴葉。俺が直すぞって言ったからか!?髪ぐらい自分で直せ!!


 とは言っても自分から言ったことだから後で直すか。自分の髪の手入れくらいはしてるから、なんとかなるだろう。


 朝ごはんを鈴葉と食べ、片付け終わってやっと鈴葉の髪を直せる。


 世間に疎い俺だが流石にこれくらいは知ってる。女子は日々綺麗になる努力をしてることを。


 鈴葉もそうなのだが何故か今日はしていなかった。学校がある日もない日も、起きた後自分の部屋でしっかりやっていたはずなのになんでだ?


 まぁとりあえずするか。


 鈴葉の部屋のドアをノックすると中から「どーぞー」という声が聞こえたから入る。


 中に入ると既に鈴葉はもう化粧台のところに座っていた。


「まーちゃん待ってたよ♪さっ早く早く♪」


「じゃあやっていくけど、これだけはやらないで!!とかこれはやってね!!っていうのあるの?」


「特にないからまーちゃんにお任せするよ!」


「了解です!」


 まずは寝癖がついている髪を丁寧に優しくブラッシングしていく。


 鈴葉の髪は緩く内巻き癖があるが、それでも簡単にブラッシングすることができた。


「リンちゃん痛くない?大丈夫?」


「うん大丈夫!!すっごい気持ちいいよ♪」


 ブラッシングを終えたら、寝癖直しウォーターを髪の根元から毛先にかけて薄く全体的にまんべんなくかける。


 今回使ってるのは俺も使っている良い香りがするやつだ。少しでも女っぽくするために良い香りがするやつを使っている。


 その後ドライヤーで乾かしていく。弱風にしているから鈴葉の綺麗な髪にも負担は少ないはず..........。


 完全に乾くともう一度ブラッシングをして完成っと。多分これでいいはず..........。自分の髪を直す時よりも丁寧に、優しくやったけど大丈夫か?


「完成!どうリンちゃん?」


「完璧だよ!!気持ちよくて寝ちゃいそうだったよ!」


「よかった〜。でもどうして急にこんなこと言ったの?」


 1番気になったのはこれだ。一緒に暮らすようになって、別に不自由はしていないはずだ。自分のことは自分でやる。最近までやっていたことなのに、今日はどうして俺が鈴葉の髪を直していたのか分からない。


「えっとね...........前にね夢を見たんだ」


「夢?」


「そう夢。あの地獄の日々の追体験をしたの。それで怖くなっちゃって.........その、ね?...........なんて言うか.................甘えたくなっちゃったの。まーちゃんの存在を間近で感じたくなっちゃったの。..............迷惑だった.........?」


 なんだそんな理由か。なら納得だ。俺も夢を見たときは鈴葉が恋しくなってたからな。


 ごめんな鈴葉。鈴葉が寂しがっていたのに気づけなかった俺が悪い。


「ごめんねリンちゃん。私全然気づかなかったよ。そんなにリンちゃんが傷ついているなんて思わなかったよ」


「ううんまーちゃんのせいじゃないよ。これは仕方ないの。あっちにいた時も同じことがあったから」


 あっちにいた時もって、やっぱり鈴葉も夢に出るまであの出来事は引きずってるんだな。俺と一緒だ。


 だから俺がそばにいてやらないといけない。同じ苦しみを味わった同士支えないといけない。


 俺は背後から鈴葉を抱きしめる。鈴葉の首に俺の顔を埋める。


「大丈夫だよリンちゃん。まーちゃんはここにいる。もうどこにも行かないよ。ずっっっと一緒だから大丈夫」


「................うん」


 静かに泣き出した鈴葉を一度離して、こちらに向かせる。


 頰を流れる涙を指ですくい、そのまま正面から抱きしめる。


 俺はちゃんとここにいるぞ、と分かるように鈴葉を抱きしめる。


 背中をポンポンとゆっくりとしたリズムでたたき、寝癖を直したばかりの頭を撫でる。


 さっきまでは静かに泣いていたが、ついに声を上げて泣き始めた。


 どうか鈴葉が落ち着きますように。もう苦しまなくて済みますようにと俺は願う。


 こんな苦しみは俺だけで充分。鈴葉には笑顔で暮らしてほしい。


 それが俺の願いだ。

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