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【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第9章 戦の準備

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39.大量のピアスで魔力封じ

 照れて顔を見れないリアムとオレを他所に、シフェルは渋い顔で考え込んでいた。


「それほど魔力量が大きいとしたら、どれだけ入るか試してみたいですね」


「帰ってからにしてください」


 丁重に辞退する。収納しすぎて戦死とか、そういう不吉なフラグは要りません。武器関係はすべてしまい、考えてからテントと家具や調理器具を仕舞う。続いて食料品を詰めて、最後にリアムから貰ったパンも入れた。彼女の収納から、つぎつぎと肉や魚、野菜まで取り出される。


「沢山もってきてくれたんだな」


「セイが戦場で空腹なのは可哀相だ」


 哀れむような言葉に、そういや前に食べ物で同情されたんだっけと笑う。彼女の心遣いを素直に受けて、渡されるだけ次々と詰めた。リストの文字は裏面までびっしりだ。果物やお菓子まであったのは驚いたが。


「それから……『御守り』だ」


 最後に渡されたのは大量に並んだピアスだった。ビロードの美しいケースに並んだピアスは、色や大きさが微妙に違っている。全体に青が多いのは、前に説明を聞いたとおりだ。


 庇護者の所有権を示すため、瞳や髪の色に合わせた宝石を飾るのが通例だと聞いた。オレとしてもリアムの色を身につけるのは嬉しいし。紫と青がグラデーションになるよう揃えられたピアスを前に、ひとつ疑問が浮かんだ。


 これって魔力を制御するためのアクセサリーだよな? これから戦場で魔力をたくさん使うのに、制御しちゃっていいんだろうか。足りなくなったり……。


「ありがとう、リアム」


 まずはお礼を告げてから顔を上げると、自分の収納から取り出した椅子を並べたシフェルが手招きしている。素直に近づくと座らされた。当然のように隣の椅子にリアムが腰掛ける。


「あなたは魔力量が多すぎます。制御しないと暴走して赤瞳になりますよ」


「でも危険なときは」


「勝手にピアスの石がはじけます。これらは魔力を溜め込む性質がある宝石類ですから、弾ければ封じていた魔力は戻るように出来ています」


 端的な説明だが、理解しやすかった。暴走しないように宝石を身に着ける。その宝石は魔力を溜め込む性質があって、危険なときや足りなくなると弾けて戻ってくるらしい。


「高価な石じゃないの?」


「高いですよ。驚くほどに」


 平然と切り替えしたシフェルが、オレの髪をかき上げる。長くなったため結んだ白金の髪が、一部の短い後れ毛が耳にかかっていた。


「シフェル、私がやる」


「そうですね。陛下にお願いしましょう」


 目を輝かせたリアムが立ち上がり、椅子に座ったオレの後ろに回りこんだ。後れ毛を器用に絡める指が耳や首筋に触れるたび、どきどきしてしまう。こんな美人と接触する機会なんて、前世界ではなかったからな……現実逃避的に考えてみても、触れた肌が赤く染まるのは抑えられなかった。


「セイ、体調が悪いのか?」


「平気……リアムが触れると照れる」


 小声で白状すると、リアムも照れが移ったらしい。後ろにいるので顔は見えないが、指先がさっと赤くなった。自覚したら恥ずかしくなったリアムのぎこちない手が、ピアスをひとつ摘む。取り出した手鏡を持って、邪魔にならないように逆の手で髪を掴んだ。


「少し痛いぞ」


 頷いてひとつ深呼吸する。嫌な注射の覚悟を決めるような感じだ。ちくりと小さな痛みが走って、ピアスが当てられる。ついでにリアムの指も触れて、擽ったい気持ちで手鏡を覗いた。


「次はこっち」


 次々と付けていく様子に、ちょっと疑問がわいた。前にコツがあるとか、シフェルが言ってなかったっけ? つまり、リアムは慣れるほど付けてるの? 誰に!


「あの……」


「どうした?」


 きょとんと首を傾げるリアムの黒髪が揺れるのを鏡越しに見ながら、自然と尖ってしまう唇で問いかける。


「リアム、慣れてない?」


「そうか?」


「……そんなに庇護者いるの?」


 あ、これダメなやつだ。質問した直後にそう思った。ただの嫉妬じゃん。醜いなあ。狭量さにちょっと自分でも引きながら、ひとつ深呼吸して言葉を取り消そうとしたとき、リアムがくすくす笑いながら後ろから抱き着いてきた。


 首に抱きつく形でリアムの頬が頭に触れる。


「庇護者はお前だけだぞ。妬いているのか?」


 笑い続けるリアムの黒髪が首を擽るし、声は可愛いし、体温はうれしいし。いろいろ反応しそうなオレを、氷のような冷たい眼差しのシフェルが睨んでいた。


「キヨがここまでタラシだとは知りませんでした。いえ、考えれば兆候はあったんでしょうね。やたら人を連れて帰ってきましたから、素質はあるのでしょうが」


「ぶつぶつディスらないで。怖いから」


 小姑のノリでオレを苛めるのは止めて欲しい。


「お時間がありませんので、その辺で。キヨの出発の時間になりますよ」


 言われて慌てて時計を確認し、リアムは残りのピアスを手に取る。オレは先ほどと同じように髪を掴んで耳が見えるようにした。耳たぶや首筋が赤いのは許してくれ。まだ照れてるんだから。


 前世界で女の子と付き合う機会なんてなかったし、こんなふうに美人に触れられたり抱きつかれるチャンスもなかった。嬉しいような、むず痒いような感覚で増えるピアスを確認する。


「終わったぞ」


「ありがと。意外と痛くなかった」


 シフェルがつけたときより、痛みは感じなかった。あの肉を焼くじゅっとした感じもなかったし。ほっとしながら立ち上がろうとしたら、今度は首に細いチェーンがついたネックレスをかけられる。


「これは?」


「ただの御守りだ」


 御守り……神を信じる宗教がないのだから、本当は違う意味なのだろう。御守りと自動翻訳するカミサマの与えた能力に疑問を持ちながら、鏡で移したチェーンに小さな青い石が付いていた。透き通った小ぶりの石を透明の膜が覆う形でチェーンにぶら下がっている。


「ありがとう。リアムがくれるなら効果ありそうだ」


 ふと、貰いっぱなしだと気付く。だが残念なことに女の子にプレゼントできるような小物はないし、準備しようにも間に合わないだろう。


「うーん」


「どうしました?」


「あのさ、リアムに何かあげようと思うんだけど……」


 手持ちがないと両手のひらを上にあげてお手上げを示すと、シフェルがにやりと笑った。怖い、何か嫌な感じがする。彼が口を開く前に止めないと! 


「簡単ですよ。戦争に勝って、西の国から領地を奪って献上すればいいでしょう」


「え……それ、簡単なの?」


「頑張りなさい」


「期待しているぞ、セイ」


 シフェルの重すぎる期待と、リアムの可愛いお強請りに、オレは頷くしかなかった。





 大量の食料を収納したリストをポケットに入れて、ベルト部に投げナイフを装着する。レイルに貰った銃を手早く分解して確認してから組み立てた。おそらく暗闇でも出来ると思うくらいには練習させられた。最初は手を挟んだりしたけど。


 ホルダーに銃をしまって上着を羽織る。


「気をつけるんだぞ、セイ」


「無事に戻るからな」


 手を繋いで集合場所に向かいながら、後ろのシフェルを無視した会話を楽しむ。そういえば、彼は出発前の時間を奥さんのクリスと過ごさなくていいんだろうか。


 集合場所につくと、クリスをはじめとしてジャック達傭兵も準備を整えて待っていた。騎士服姿のクリスが武器を装備した姿に眉をひそめて振り返った。


「もしかして?」


「言いませんでしたか? 我々騎士団も出ます。陛下の護衛は兄に任せました」


 聞いてない。が、ちょっと安心する。クリスもシフェルも出払ったら、誰がリアムの傍に残るのかな? と思ったから。手合わせしたスレヴィの腕前なら安心だった。


 西の自治領から戻った際に使った魔法陣とよく似た模様の絨毯が敷かれる。地面に敷いた魔法陣の出口は、戦場近くにもう運ばれているだろう。ひとつ息を吸って、リアムの手を離す。ジャック達の前まで歩いて、拳を軽くあわせた。


 さて、二度目の戦場へ行きますか。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

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☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

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