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334.チート破れたり!?

 敵に背を向けたら撃たれた。よくある展開だが、チート全開のオレ様の結界を舐めるなよ! 弾いてくれるわ!!


「嘘っ、いてぇ」


 左腕を掠めた銃弾に目を見開く。嘘だろ? 魔力込み銃弾を弾くオレの結界を通過した、だと!? チート破れたり、まさかの展開だ。異世界人同士はチートが無効化されるのか?


「キヨ? 何を遊んでるのですか」


 きちんと避けなさい。そんなニュアンスで呟く、呆れ顔のシフェルにひとつ頼み事をする。


「ちょっとオレの足、撃ってみてくれる?」


「……毒でも飲みましたか?」


 本気で心配された。慌てて事情を説明する。その間にも銃弾が飛んでくるので、撃ち返した。シフェルはさすがに敵から目を離さない。つうか、アイツの名前、何て言うんだろ? 前髪厨二野郎?


「オレの結界は魔力を込めた銃弾を弾く。なのにアイツは通過させたんだ。効果が消えたのか確認したい」


 簡潔に言い終えた瞬間、容赦なくシフェルが銃弾を足に撃ち込んだ。あ、大丈夫だ。弾かれた。キンと甲高い金属音がして、ほっと安心する。よかった、結界は問題なく機能してる。


「異世界人同士だと効かないのか」


 じいやに後ろから撃たれたら即死で、おけ? 耳の真横を通過した銃弾に、眉を顰める。ひとまず防御方法を考えよう。


「二重結界だ!」


「撃ち抜いてやる!」


 あ、コイツのノリ、嫌いじゃない。違う場所で出会ってたら、気が合いそう。よく聞く、次は違う場所で会えたら展開だった。でも同情も手加減もしない。


「行け! 青猫爆弾!!」


「邪魔だぁ!」


『ちょ、失礼なんだけどぉ』


 足元の影から顔を出した青猫を、全力で投げ飛ばす。風の魔法も加え、後ろから爆発的な推進力を追加するために炎で尻を炙った。すごい勢いで前方へ逃げた青猫を、前髪長い厨二野郎が蹴り返す。


 アイツ、サッカー部出身か? いい蹴りじゃねえか。青猫の腹にクリーンヒットだった。落ちかけて空中で丸まる青猫ブラウが叫ぶ。それを追撃した魔法の氷を、コウコが焼き払った。じゅっといい音で蒸発するが、ブラウの尻尾も軽く焼いた。


『ああ、僕のチャームポイントがっ!』


『うるさいわ、青いのは役立たずね』


 散々な目に遭い、さらに罵倒されたことで青猫の闘志に火がついた。小型猫サイズが、急激に膨らんでいく。出会った頃の巨猫になった青猫は、空中で浮遊したまま尻尾を大きく叩きつけた。空中なのにパシンと音が響く。


『僕の尻尾に火をつけたね? 許さないよ』


 凄んでるとこ悪いが、火をつけたのはオレとコウコだ。厨二野郎じゃない。まあ指摘しない方がいいか。


「はっ、聖獣と言っても所詮は獣。頭の中身は空のようだな」


 明らかに煽る言葉へ、ヒジリが過剰反応した。静観していた彼のヒゲがピンと張り、口元から牙が覗く。


『青いのはともかく、我らへの暴言は許さぬ』


『僕だけハブられてない?』


 そりゃそうだろ。大きく頷いたオレを見て、ブラウが複雑そうな顔をする。表情豊かな猫だ。


『隙あり!』


 チビドラゴン、スノーが叫びながら氷の矢を放つ。だから、どうして叫んじゃうんだっての!!


 戦隊モノを好きな人なら分かるだろう。魔法少女もそうだが、どうして敵に対して武器や攻撃の種類をバラすんだ? そんなの、対抗措置取られるじゃん。絶対負けるじゃんか。言わずに攻撃すべきだろう。卑怯? いいんだよ、正義な時点で卑怯なんだから。


『氷を食らえ』


『邪魔よ、スノー』


 氷を叩き付けるスノーの横から火を噴いたコウコが叫ぶ。うん、打ち消しあってる。順番を決めようか。


「ちょっとタンマ!」


「仕方ないな、早くしてくれよ。あとタイムのが響きが好きだ」


「うっせぇ」


 譲歩する敵に、シフェルが首を傾げる。タンマは古いって? サバゲー仲間が使ってたんだが、あれは古いのか。戦いの最中にタイム取ることは通常ないので、シフェルが知らないのも無理はない。だが異世界それも日本から来てれば、通じると思ったんだよな。よかった、よかった。


 集まってきた聖獣に言い聞かせる。


「いいか? 攻撃は順番だ。交互に行い、重なってはいけない。じゃないと打ち消しあっちゃうだろ」


『わかりました』


 しょんぼりしたスノーの後ろで、コウコは不満そうに頷く。ヒジリはのそりと後ろから寄り掛かりながら承諾の言葉を寄越した。その足下で踏まれる青猫が叫ぶ。


『僕を助けるのが先じゃない?!』


「その辺は聖獣同士の力関係にも波及するので、オレはノータッチで」


 手も出さないしコメントしない。話し合いが終わったので、今度は順番決めが始まった。攻撃順はコウコ、スノー、ブラウ、ヒジリだ。


「タイム終了で」


「おう、名乗りを聞いてやる」


 敵から名乗れと言われたら、オレが代表で名乗るべきか? ずいっと進み出た一歩を無視し、後ろからシフェルが口火を切った。


「私は中央の国、コンセールジェリン皇族にお仕えする近衛騎士団長シフェル・ライン・メッツァラ、公爵家当主だ」


 え?


「異世界から転生したチート魔術師、頂点(とっぷ)松永だ!」


 ん?


「ちょっと悪い。間に入るぞ、松永君のフルネームは?」


「松永頂点だ」


「いくつ?」


「16歳になった」


 きらきらネームだ。それもドキュン系? 頂点と書いてトップと読む。その心は……親が厨二だったかも。がくりと膝から頽れたい気分だが我慢だ。他人様のお名前を聞いて、失礼な対応をしてはいけない。笑ってもいけない。堪えるんだ。


「トップ君……だっけ? チートなの?」


「君をつけるんじゃねえ! それと、お前も名乗れ」


 これは失礼した。名乗り忘れてしまった。


「死ぬ前は聖仁だけど、今はキヨで通ってる」


 端的に余計な敬称や肩書きを全部外して名乗った。もう苗字も不要だし、今は違う家名がついてるし。その気遣いを後ろの近衛騎士団長が無にした。


「キヨ、きちんと名乗りなさい。相手に失礼ですよ。キヨヒト・リラエル・セイ・エミリアス・ラ・コンシェールジェリン殿下です。竜殺しの英雄であり戦争を終結させた救国の常勝騎士、すべての聖獣を従えるマスターであると同時に死神の二つ名をもつ実力者。北の国の第二王子殿下となり、養子縁組ののち皇族となり皇帝陛下の婚約者でもあられる。あなたとは違うのですよ」


 最後の一言も含めて、すべて余分な言葉だった。くそっ、恥ずかしい二つ名とか厨二じゃねえっての。恥ずか死ねる。ぐおお!! 両手で顔を隠したオレに、明らかに日本人の外見の彼は狼狽えた。


「なんでだ? 俺のチートが始まる前に、すでにチートをコンプリートしてやがる。さらに婚約者だと!? 許さんぞぉ!!」


 真っ白に燃え尽きたい。恥ずかしすぎる。日本人にこんな状況がバレるとか、しかも相手が厨二だなんて。


「キヨ、しっかりしなさい。何か魔法での攻撃でも?」


「お前の余計な一言アタックで、瀕死だよ、くそったれ」


 ぼやきながら、結界を三重に重ねた。トップはどこで銃を手に入れたのか知らんが、バンバン遠慮なく撃ってくる。それらを防ぎながら、破れていく結界の内側に新しい結界を張り続けた。2枚を一度に割るほどの威力はない。常に数枚重ね張りすれば防げる火力だった。


「オレのHPはゼロだぞ」


 主に精神的なダメージが大きすぎて、オレは戦意喪失していた。








*********************


新作のお知らせです_( _*´ ꒳ `*)_



【膨大な魔力と知識ありのチートだけど、転生先がツノはないよね?】


異世界転生、胸躍らせる夢の展開のはず。しかし目の前で繰り広げられる勇者vs魔王の激戦に、僕は飽きていた。だって王の頭上で、魔力を供給するだけのツノが僕だ。魔王が強いからツノがあるのではなく、ツノである僕がいるから彼が最強だった。

ずっと動けない。声は誰にも聞こえない。膨大な魔力も知識チートも披露できぬまま、魔王の頭上で朽ちるのか。諦めかけていた。

勇者の聖剣が僕を折るまでは……! 


動けなかったツノは、折れたことで新たな仲間と出会う。チート無双はできないが、ツノなりに幸せを掴めるのか!? いつか自力で動ける日を夢見て、僕は彼と手を組んだ。


※基本ほのぼの、時々残酷表現あり(予告なし)ハッピーエンド確定

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