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【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第19章 非常識さで世界を渡る

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109.平民風情の底力に驚くがいい!

 魔術師が声を上げる前に地面が青白く光って平らになる。集め過ぎた魔力が余っているので、かまどを3か所作った。これは以前も作ったので苦労せず形にできる。一度作った物は目で覚えているから、イメージが簡単だった。


「今の魔力はっ!」


「なんだこれは……1人でこんな……」


 絶句している魔術師を放置して、必要な物を思い浮かべる。


「焼肉用の鉄板はレイルにもらったのを使って……汁物も作るなら鍋が必要か。聖獣達が何を持って来るか分からないから、料理の内容は臨機応変に対応できるよう準備しよう」


 ある程度の方向性を決めたところで、収納口を作って手を突っ込んだ。テントの足を出したところで、失敗に気づく。立った高さで収納の口を作ると、重い物を出すのに不便なのだ。戦場で学んだ知恵で、やり直すことにした。


「誰か、テント手伝って」


「「「おう!」」」


 声をかけて収納口を消し、足元に改めて収納口を作った。ずるりと引っ張った先を駆け付けたジャックが引っ張る。2張目はユハが手伝ってくれた。あっという間に7張のテントが準備される。この辺の手際の良さは、戦場で慣れているせいだろう。


「収納口も……そんな、規格外すぎる」


「そこの魔術師、邪魔。テーブル出すからどいて」


 宮廷魔術師のほとんどは貴族出身者だ。そのためオレを含めて傭兵を見下している。リアムと一緒に勉強した際に失礼な発言されたことを思い出した。場所を空けさせて、そこに巨大鍋を4つ置いて水を満たす。慣れた傭兵連中が鍋をかまどに乗せた。


「まだ魔力が尽きないのか?」


「そう、全然平気。あんたらがいう()()()()だけどね」


 嫌味が口をついて出た。大人げないけど、撤回する気はない。魔力量が多いと驚いているようだが、聖獣4匹も連れ歩いている時点で、わかってたんじゃない?


 礼儀正しく接してくる人には礼を尽くす。でも見下してケンカ売る相手に、媚を売ってやるほど自虐的な趣味はなかった。ぱたぱた歩いてテーブルを並べ始める。テントの1張を料理用にするのは戦時中からのルールで、風魔法が得意な奴らが待ち構えていた。


「ボス、食材は?」


「手伝うぞ」


「……ヒジリ達が戻るのを待って」


 少し肌寒いので、ついでに結界を張った。広場を覆う形で出入りは自由。気持ち的にはあれだ、農業用のビニールハウス――雨や寒さを防いで暖かく、ひらひらした透明の素材が広場を守るイメージだった。


「ん? キヨ、結界か?」


「暖かい方が楽じゃん。下で焼き物したりするから、すぐに暖まるぞ」


 鍋の湿気もあるから快適だと思う。煙だけ外へ出す煙突を上に作っておけば完璧だ。ついでに照明を付けようと周りを見たら、すでに傭兵連中がランプを用意していた。そういや戦場でも使ってた気がする。虫が来ないLEDみたいな不思議な灯りが、整地した広場を照らした。


「よし、これから火を(おこ)す……コウコはまだ帰ってこないのかな」


 どうせなら火加減を覚えた優秀な聖獣様にご協力願いたいのだが……呟いたオレの足元から、にょろりと赤蛇ならぬミニチュア龍が現れた。某国のラーメンどんぶりイメージだが、手に竜玉は持っていないのが残念だ。


『主人、食材が用意できたわ』


「ありがと。テント下のテーブルに並べて。あと火を熾すの手伝って欲しい」


『お安い御用よ』


 コウコが大量に持ち込んだのは、見事な野菜だった。オレが知る野菜より一回り以上大きい。キャベツと玉ねぎを風魔法でみじん切りにしてもらい、鍋に入れる。水が溢れたが、そんな細かいこと気にしない。野戦料理は大雑把で結構!


 トマトはカットしてサラダにするか、スープの味付けに使うか迷う。最終的に潰してスープの具材となった。赤いスープをかき回すジーク、なんか意味が違う怖さがあるな。


 風魔法が使えない奴も率先して手伝ってくれるので、鍋の混ぜ係や薪の準備係も勝手に分業して着手していた。手の空いた奴はベンチ代わりに戦場で使ってたベッドや椅子を並べ、食器もそれぞれに洗浄する手際の良さだ。


『主殿、肉を狩ってきたぞ』


 買ってきたんじゃなく、狩ってくるところが聖獣様だ。異世界っぽくて良し! こういう微妙な聞き分けが出来るのは、自動翻訳のよいところだ。


「ありがとう、ヒジリ! 助かった!!」


 肉はご馳走だ! 作業中のノアとサシャを手招きして、ヒジリが出す獲物を待つ。兎っぽいの5羽、猪みたいなの3匹、鹿かな? が1匹……これは1匹って数えるんだろうか。単位に迷うがこの際「匹」で 統一しよう。さらに孔雀ばりの派手な鳥が7羽……これは匹で数えにくい……が出てきた。


「全部捌いちゃって」


 ここはプロ(?)にお任せだ。オレのスキルに解体は含まれない。捌いてる間にゲロるのがオチだから、彼らも手伝えとは言わなかった。ダンッ、ゴツ…とどう聞いても骨を切ったような音がするけど、現場を見なければ大丈夫だ。


「ヒジリは凄いな~。狩りがうまい聖獣だ」


 功労者を労うのは上司の役目。ここは主人であるオレがべたべたに褒めるべきだろう。火の番をしている出来る女(?)コウコも撫でまわしておく。


『主、僕も出来る猫だから』


 影から顔を見せた青猫ブラウが、何やら水の塊を持ち帰った。風で包んだ水の中を魚が泳いでいる。生きたまま持ち帰るとか、鮮度抜群じゃないか!


「おお! ブラウもやれば出来る子だ!」


 平らな床を眺め、離れた場所にするか調理場の近くにするか迷うが、すぐに食べるからと調理テントの横にコンクリートのお風呂より大きなプールを作った。これのイメージは、テレビで観た()()だ。市場の特集番組で観た四角いプールに、ブラウの魚を水ごと入れた。


「うわっ、キヨ。先に声かけろ」


 鍋をかき回していたジークに水が飛んだらしい。


「悪い!」


 唖然とする魔術師に気づいた兵士もこちらを窺っている。だが、このバーベキュー会場は傭兵専用ですので、悪しからず。生け簀を覗いた水魔法の使い手が、手早く魚をチョイスして捌き始める。こっちは肉と違って見ても平気だった。


「魚はスープに入れるか?」


 普段はライフル担いでるライアンが、慣れた手つきで魚の腹を切って内臓を取り出す。手早く水で中を洗うと、魚の尻尾を掴んで尋ねた。


「いや、串焼きにしようぜ!」


「なら、猪を煮よう。焼くと固くなるからな」


 手分けして傭兵達が準備を整える。本当なら戦の功労者だし、戦場を幾つも掛け持ちしたんだから、用意くらい国でしてもらいたかったが……こういう和気藹々(わきあいあい)とした雰囲気も悪くない。本当にキャンプみたいだった。


「ところで……スノーはどうした?」


 肉、魚、野菜と揃ったので……食料調達はもう十分だと思うんだけど? そんな疑問を呟いたら、呼ばれたと思ったのか。頭上からスノーが舞い降りた。なに、君だけ空を飛んでたのか? 大きいドラゴン姿の爪から果物を落とすので、網をイメージして受け取る。魔力の網に落ちた果物は熟していた。


 いわゆる南国系フルーツだ。人の顔より大きいマンゴーらしき果物は、甘い香りを放つ。これで食後のデザートまで完璧だった。聖獣が優秀過ぎて泣けそう。小型化して飛び込んできたスノーを全力で撫でまわした。爬虫類の冷たい肌も気にならない。


『主様、デザートにいいでしょ?』


 聖獣内で得意な分野で食料調達をしたらしい。手分けした彼らを次々と褒めて撫でまくりながら、コウコが沸かしたスープにハーブ塩で味付けした。隠し味の醤油がいい香りを漂わせる。


 トマトスープ、醤油スープ、串焼きの魚と大量の肉。止めは今朝の厨房でGETした白パンだ! 皇帝陛下直々の下賜品であるぞ~! というわけで、ほぼ準備は整ったと思う。


「……化け物だな」


「魔力の底が見えない」


 料理の側で何やら騒いでいる魔術師を振り返り、にやりと笑った。


「化け物で結構。あんたらが見下した、平民風情の底力を甘く見るなよ?」

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

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☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

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