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【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第17章 異世界の定番きたぁ!!

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95.ミルク粥が異世界に爆誕

 あっという間に集まった傭兵連中が、慣れた手つきで肉を串にさしていく。結界で作った箱に並べてから、コウコを手招きした。


「表面こんがり、中ふっくらジューシーで焼いて」


『主人は聖獣の使い方を間違ってるわ』


 文句を言いながらも、串差しの肉を炙っていくコウコは聖獣美女だ。性別はない聖獣だが、イケメンはヒジリに確定したので美女枠を進呈する。美しい女と書くけど、イイ女って意味もあるからな。


 沸騰させたときのブレスを使うと串が焼け落ちてしまうので、ふーふーと何度も息を吹きかけていた。本当に出来る蛇……龍? で助かる。彼女の一吹きごとに肉がジュージュー音を立てて焼けた。


『難しいわね。このくらいかしら』


 20本並べた串を焼き終えたコウコが首をかしげる。疲れた様子はないが、あと8回ほど焼いて欲しいので労う意味を込めて抱き上げた。くるりと腕に巻き付いたコウコはご機嫌だ。


「残りもお願いしたい」


『わかってるわ。あたくしの分も残しておいて』


「もちろん!」


 聖獣と会話しているオレの横で、レイルが焼き終えた肉を齧る。香ばしい外見と裏腹に内側はギリギリだったらしい。


「もう少し焼いた方が良さそうだぞ」


『あらやだ、主人がお腹壊しちゃうわ』


 レイルの指摘に、残った串に2回ほど息を吹きかける。ぽたりと肉の脂が下に落ちた。


「よし、焼けた分から運んで!」


「はいよ!」


 手際よくノア達が肉を分けていく。その間に新たな肉を焼き始めるコウコ。ここ数日で役割分担が出来てきたため、料理人スキル持ちがコウコの前に串を並べ直した。生肉から焼いていくが、火力調整がわかってきたコウコも効率よく中まで火を通す。


「焼けた分から食べていけ! 待ってる必要ないぞ」


 一応声をかけるが、皆大人しく座っている。焼けた肉が冷めるだろうがと文句をつけるのは簡単だが、前に聞いた話ではボスが手を付けるまで部下は我慢だという。あれだ、相撲のちゃんこ鍋の順番な。上位者が食べないと、下位の者は口をつけられない。


「先に食べるぞ」


 ヒジリとスノーの前に皿を出して肉とスープをよそう。のそのそ近づいてきたブラウにも出してやった。今朝は少し仕事したからな。


「いただきます」


 聞こえるように声を張り上げ、ぱくりとミルク煮スープを食べる。とろりとした粥みたいだが、時々肉や野菜が彩りを添えていて見た目も綺麗だった。味は少し薄い気がするので、ハーブ塩を足して2口目を食べる。


「「「「いただきます」」」」


 いつの間にか真似するようになった挨拶があちこちから聞こえ、同じようにミルク煮に塩を足す傭兵の姿に苦笑いした。やっぱ肉体労働者には塩分足りないよ、これ。


 3口目を食べたところで気づいた。乾パンがない。


「ノア、乾パン抜いた?」


 よそってくれたオカンに尋ねると、向かいに座ったノアは首を左右に振った。


「いや、ちゃんと混ぜて分けたぞ」


 信用できるノアの真面目さに頷きながら、スプーンで中をかき回す。行儀が悪いが、最後の味見を怠ったので鍋の中を知らないオレは、よそう前の状態を知らないのだ。よそう前にドロドロだったとすると、この()()()は牛乳成分じゃなくて……溶けた乾パン?


 これは……ミルク粥ってやつ。海外だとオートミールやリゾット系のあれだ。


「キヨ、乾パンどうした?」


「やっぱそう思うよな。多分溶けてる」


 製造過程をずっと見てたわけじゃないので、実際の状況は不明だが間違いなさそう。ミルクにつけると柔らかくなるのは知ってたけど、ここまで溶けるとは……成分は何だろう? オレが知ってる乾パンとやっぱり違う。


「このどろどろが溶けた乾パンだってのか?」


「うん、ミルク粥状態だな」


 記憶するように「ミルク粥」と数人が繰り返した。この世界にミルク粥を広めた先駆者! ってなりそうな予感。まあ黒酢炒めしてるから今更なんだけど。個人的には味噌炒めをご所望だ。


「ミルク粥ってすごいな」


「乾パンは顎が痛くなるからな」


「確かに疲れる」


 笑いながら食べる傭兵から不満が出ないのは、硬さで顎が疲れる食べ物よりマシって意味だろう。噛み応えがないが、肉があるから補えてる感じだ。腹にどろっと隙間なく詰まる食事は病人食っぽいが、傭兵連中は食べられれば文句言わない主義らしい。


 非常食として必ず持参する乾パンなので、今後も最後の日の朝食や昼食として役立ちそうなメニューだった。ほら、あれだ。帰還前の合図っていうか……金曜日のカレー的な感じ。


「お前の部隊に捕まると、食事は豪勢だよな」


 レイルが苦笑いしながら指さす先で、捕虜にもミルク煮が振る舞われていた。どろどろの白い液体に首をかしげる姿から、どうやら北の国にお粥系の食べ物はないと知る。行儀が悪いが器を手に近づいて、目の前で食べながら声をかけた。


 オレが食べてれば多少は安心するだろ。知らない食べ物って怖いからな。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

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☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

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