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【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第15章 意外と近くに和食調味料あった

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79.苦労したわりに評判がイマイチ

『主殿、このあたりの土は鉄を含んでいるぞ』


 ひょっこり足元から顔を見せた黒豹が提案するが、どうすればいいんだろう。鉄分だけあっても……砂鉄から鉄板が出来る理屈もよくわからん。大きく首をかしげて待つと、コウコが足元で寝ころんだ。蛇が変温動物なら日向ぼっこは大切な日課だろう。


『ヒジリが見つけた砂鉄を、あたくしが熱すればいいのではなくて?』


 確かに溶けた鉄が溶岩みたいに流れる映像はテレビで観たが……その後は冷やしていいのか? 水蒸気で大爆発とかしないよな。


「熱した鉄をいきなり冷やしたら爆発しない?」


『ゆっくり冷やせばいいじゃない』


 お説ごもっともですが、それは大問題があるんだよ。


「ゆっくりしてたら、朝ご飯間に合わないぞ」


『あ……そうね』


 鉄板がないと呻いている間に、レイルは姿を消していた。ジャックやノアにも聞いたが、鉄の板なんて持ち歩いてる奴はいない。収納魔法の容量も圧迫するし、まあ無理だと思った。


 ハンバーグを鍋底で焼くか? パンだったらナンみたく側面にも叩きつけて焼けるんだが……あれ、オレは少し混乱してるぞ。もっと簡単な方法があるじゃないか!


「捕虜から鎧ってもらってもいいの?」


「……キヨ、奇妙なことを言い出したが……熱はないな」


 額に手を当てるサシャが心配そうに顔を覗き込む。いつも治癒魔法を駆使して助けてくれるサシャだから、手を振り払わずに大人しくしていた。


「あのさ、鎧で面積が広い場所が欲しいだけなんだけど」


「それをどうする?」


「魔法で綺麗に洗って平らに潰して、フライパンの代わりにする」


「……はあ?」


 かまどの上に置かれた肉焼き用の網に鉄板を乗せれば、簡易フライパンになると思うわけだ。魔法で洗浄すれば食中毒の心配もなさそうだし、そもそも高温で焼くから平気だろう。コイツらの胃もかなり丈夫だからな。


 なんでも食べる彼らの様子から、失礼な判断を下す。


「で、もらっていいの?」


 捕虜から鎧を追剥ぐ気で傭兵達に意見を求めると、後ろから鉄板で頭を叩かれた。


「……おい、フライパン代わりの鉄板だ」


「いてっ」


 振り返った先で、レイルが憮然としている。何か気に入らないことがあったのかも知れないが、とりあえず頭の上に乗っけられた鉄板を下した。近くにいたジャック達も手伝ってくれる。レイルが支えてなかったら、重さでオレは潰されたかも。


 芝の上に置いた鉄板は予想外に立派だった。しかも表面が平らだ。


「どうしたの? これ」


「いいから料理作れ。腹減った」


 出所は教えてくれないらしい。不機嫌そうにタバコをふかして偉そうに命令されたが、フライパン(仮)を用意した恩人なので許してやろう。上から目線でにやりと笑う。


 出来上がったハンバーガーを食べて、驚くがいいぞ!! ジャンクフードの王様だ! ポテトは用意できないが、まあいい。


 鉄板を熱する間に、材料の中から卵を探した。リストにある数は50で、人数を数えると48、49……あれ、5つほど足りない。とりあえず机の上に卵を出した。


「卵、足りないかも」


 ここで軍隊なら、新人は卵なしになる。でもここは傭兵部隊で、もちろん新人はいるんだが……正直オレが一番の新人だと思う。唸っていると、ブラウが顔をのぞかせた。


 いくらオレの影が出入口でも、股の間から顔を出すのはやめてくれ……マジで。


『主ぃ、卵あるよぉ』


「は? 猫って卵産めるの?」


『……いくら温厚な僕でも怒るよ』


「いつから温厚かは置いとくとして、卵を出せ」


 ぶつぶつ文句を言いながら、ブラウが取り出したのは卵だった。白い鶏卵サイズだが、中身の生物は何だろう。ちょっと気味が悪い。


『主、僕はこっちの卵で』


 ブラウは自分が持ってきた卵じゃない方を指さした。よし、コイツの飯は持参した得体のしれない卵に決定だ。にやりと笑って卵を受け取る。危険かもしれない卵は聖獣と腹の丈夫そうな連中に回そう。


 半数ほどの傭兵達が起きてきた。料理の出来る奴に野菜を切らせ、パンを炙らせる。その間に手早く鉄板の上にハンバーグinオカラを並べた。焼ける匂いに釣られて、数人が手伝いを申し出てくれる。


「両面焼いて火が通ったら、こっちのパンの上に乗せて」


 引っ張ってきたテーブルに炙ったパンを並べて示せば、彼らは素直に頷く。一応、つまみ食い防止のために監督役を用意した。


「ヒジリ、つまみ食いする奴がいたら食ってよし!」


『主殿、我はそこまで悪食(あくじき)ではないぞ』


 なにやら文句をたれているが、ちゃんとお座りして監視を始めるあたり、ヒジリは本当に真面目だ。ブラウに爪の垢を煎じて飲ませたい。朝日が当たる場所で体温を調整するコウコと並んで、ブラウは腹を温めていた。


 猫は変温動物じゃないはずだが。まあ、猫が働くと思わないのが正しいのか。これはどちらの世界も共通らしい。


「なあ、料理が得意な奴って何属性?」


 ふと気になった。この世界の人間は10種類の属性に分けられる。なぜか希少種のはずの竜が周囲にたくさんいるが、支配階級が多いのだ。つまり、他の属性の特性はあまり理解できていない。治癒が得意な鳥属性があるなら、料理が得意な属性もいるんじゃないか?


 素朴な疑問に、野菜を炒めるジャックが考え込んだ。


「おれが知る料理人は犬と熊かな」


「そういや熊って多いよな」


 隣で目玉焼きを作る青年が頷く。どうやら熊と犬が主流らしい。忘れないように後でメモしなくちゃな。話しながらも手を止めずに調理を続けると、あっという間に傭兵達が集まってきた。寝ている間に強張った身体を解す運動をしてきた奴が多いらしく、周囲が男臭い。


 あれだ、言い換えると汗臭い。男子更衣室のあの酸っぱい系の臭いが漂う。混じるようにオカラハンバーグの匂いが流れて、鍋の周りにも人が集まっていた。


 味噌があれば味噌汁できたのに……と思うが、今朝のハンバーガーとは合わない。次に何かイラっとしたらミンチで肉団子作るのも検討しておこう。


「キヨ、これでいいのか?」


「えっと……こうして、次にこれ」


 ノアの前でひとつハンバーガーを作って見せる。パンの上に野菜炒め、ハンバーグ、目玉焼きの順で乗せるよう指示した。最後にまたパンを乗せるのだが、その前に照り焼き風味のソースを作らねばならない。


「手伝うぞ」


 欠伸しながらライアンが手伝いを申し出る。狙撃手として夜間の警備を担当することが多いので、自然と夜行性になりがちな彼は、まだぼんやりしていた。危険なので火から離れた仕事を頼む。


「これ、皿や器を並べて用意して」


 ノアが作ったハンバーガーのソースなしを皿に乗せるライアンが、ふと腰の銃に触れた。窺うように周囲を見回し、それでも手を離さない。


「うん? どうした、ライアン」


 尋ねるオレの後ろから、シフェルが顔をのぞかせた。どうやら気配を薄くして近づくシフェルに反応したらしい。ライアンが溜め息をついて銃を離した。みると、傭兵の半数ほどが武器に手を伸ばしていた。この部隊が一番優秀じゃん。


「何やらいい匂いがしますね」


「昨夜作ったハンバーグはさんで食べるんだ」


 羨ましいだろ~と滲ませた口調に、覗き込んだシフェルが意外な言葉を投げる。


「これは東の国の携帯食ですね」


「はい?」


「え? 知っていて作ったんでしょう?」


 互いにしばらく見つめあい、そろったタイミングで視線をハンバーガーへ向けた。この世界にはないと思い込んでたけど、東の国で普通に食べてるらしい。醤油や黒酢があるんだから可能性はゼロじゃないけどさ……料理チートラノベは敷居が高かった。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

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☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

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