あなたへ(改変版2)
無意味に生きる人間ほど醜く、虚しい生物を、私は知らない。
北原白秋のとある詩の文中で、「生ける屍」という言葉が出てくる。
私はそれが、自分の様に生きる人間に、ぴったりな言葉だと思った。
私はよく、「死にたい」と口にする。
そして大体はそう言った後に、「でもまだ死ねない」と言って、終わりにする。
自傷はしても、自殺をしようとはしない。それが私だ。
そうする理由はいくつもある。例えば、自殺をしようとしない理由。
それは本当に簡単な理由だ。「せめて成人式までは家族に見せてあげたい」という思いと、「数秒程で痛みも何も感じずに死ねた方が良い」という、小さな願望があるからだ。
では、自傷は何故するのだろう、と考えたが、理由は思い浮かんでこなかった。
気が付いたらやっている事もあるからだろう。
人間に限らず生物は、様々な行動や言動に何かしらの理由を必ず一つは持っているのではないか、と私は考えている。
例えば人が呼吸をするのには「酸素を取り入れて生きる為」という理由があるからだ。
のび太がドラえもんにタケコプターを出してもらうのにも、「空を飛びたい」といった理由があるからだ。
それと同じで、私が「あなた」を好いているのにも、理由がある。
その理由を含め、あなたへの思いを、書き記そうと思う。
目を閉じて、あなたの事を思い浮かべてみると、浮かんでくるのはいつも同じ、あの表情。片手でピースをして、巧笑している、あなたの姿。
私はあなたのあの表情が、とてもとてもとても、大好きだった。
初めてあの表情を見た時の、私の心の暖まり様と言ったら、それはそれは素晴らしいものだった。
そういえば、あなたは自分の顔立ちをあまり好いていない様だった。
が、私は。
暖かみのある、優しげなあの顔立ちも、包み込まれる様な、あの笑顔も、私には出すことの出来ない、男性らしさと安定感のある声も、計算式の答えを求めている時の独り言も、私に抱いてくれた好意や嫉妬心も、時々見せてくれた可愛いらしい一面も、あなたの全てが愛おしくて、愛おしくて。
私はあなたに文を送る時によく、「そういえば」を「そいうえば」と送ってしまっていた。あなたはそれにもいち早く気付いてくれて、教えてくれたりもした。
そういった小さな心遣いも、あなたを好いている理由の一つだった。
出来る事ならば、誰にもあなたを好いて欲しくない。あなたの事を深く知らないで欲しい。
けれど、あなたの衷情の暖かさを、私以外の誰かに見せつけてやりたい。
そして、「ああ、この人はこんなにも良い人なのか」と思わせてやりたい。
その「誰か」との会話であなたに笑って欲しい。「生きる事が楽しくて仕方が無い」と思って欲しい。幸せになって欲しい。本当は、私がそうしたいのだが。
そうでないと、私は。
私はいつの間に、こんなにも欲望だらけで醜い人間になったったのだろう。
いや、初めから醜かったのだろう。歪んでいたのだろう。
そしてそれを、知らないふりをして、隠していただけなのかも知れない。
普通の女の子として、普通の人間として、生きる為に。
「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」という言葉があるが、果たして本当にそうなのだろうか。
黒人に対する差別、LGBTに属する人間に対する差別や偏見、級友である筈の人間に対する虐めや暴力、容姿や生まれて持った障がいに対するからかいなど、日本だけに限らず、世界中にそういったものは存在する。
仮にそれ等の中の一つが無くなったとしても、全てが変わる訳ではない。
無数に存在する虐めや偏見は、一つが無くなる毎にまた新たに一つが誕生する、と言っても過言ではないだろう。
そしてそれ等をどう絶やせというのだろう。
蒲公英の根よりもずっとずっと深い根を枯らし、引っこ抜く方法を、私が生み出す事は出来ない。
実際に、私が小学生の時に、こんな女性教師が居た。
彼女は、私が受けた嫌がらせ問題に関わる時、「いやー、私の子供の頃もあっなたぁ」などと笑顔を浮かべながら、「仲直り」を促していた。
その時でこそ、「仲直りが出来て良かった。これでもう意地悪されないのかも」と思ったが、今こうして思い返してみると、あの教師はただの「善人ぶった大人」にしか過ぎなかったのかも知れない。
その女性に限らず、そういった大人や人間は多数存在するが。
その他にもいくつか、私のどうでも良い経験を思い出してしまったので、書き記しておく。
ただしこれは何かの糧になる訳ではないので、読むのはあまりお勧めしない。
弟が出来て、母親がそちらばかり気にするせいで嫉妬心を抱いたとある女の子が居た。
その女の子は、些細な事をきっかけに、周りの生徒数人に、八つ当たりで唾を吐きかけたり、抓ったりなど、散々と嫌がらせをした。
私もそうされた内の一人で、私物を隠されたりもした。それは小学2年生の時だった。
幼馴染の一人には、意味も分からぬまま叩かれ、容姿に対する悪口を言われたりもした。
祖父と歩いている時に、見知らぬ男女(3、4人組だったか)に、「あの子、歩き方可笑しくない?」と後ろ指を指されて笑われた事もあった。あれは確か3年生の頃。
その時は確か、「それが怪我をしている子供に放つ言葉か」と内心傷付きながらも、聞こえないふりをしてやり過ごした気がする。
朝のチャイムが鳴り、教室に入るのが数秒遅れたからといって、大柄な男子に締め出された、4年生。
昼休みの間に私物を盗まれ、部活を抜け出してまで一緒に探してくれた男子にも迷惑をかけてしまった、中学一年生。何かの拍子で怒った女子生徒に、首を絞められかけた事もあった。あれは何気に痛かった。
などと全てを思い出していると、埒が明かない。
それに段々と私が書きたかった事からも遠ざかっている。戻さなくては。
ああ、私は一体何処をどう間違えてしまったのだろう。
醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。
ああ、あなたを純粋に想えていた頃の私は何処へ行った?
ああ……そうだ。消えてしまったのか、それなら仕方が無い。
ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね。
……ああ、何て深くて大きな歪みだろう。
とても暗くて、全く底が見えない。
それとも底なんて無いのかも知れない。
何処か遠い所に繋がっていて、私や他の人間が気付かないだけなのかも知れない。
積み重なった本に、小さくなって着れなくなってしまった服に、必要の無い思い出に。
全部、全部、不要な物が入りそうだ。
ああわたしはつかれたよ。つかれた。つかれた。つかれた。
たすけて。たすけて。たすけて。たすけて。たすけて。ねえ。
いつもみたいに、たすけて。
……ああ、そうか。
あなたも私を、嫌いになったのか。
そうだよ。私は自意識過剰な人間。
思い出させてくれて、ありがとう。
あなたがまだ私を好きでいてくれている。
なんて、ただの妄想。
夢に過ぎない。
教えてくれて、ありがとう。
お礼に何か、しなくちゃね。
ねえ、なにがいい?本?服?お金?ゲーム?
ああそうだ。
私の命を貰ってくれませんか。
あなたの好きな様にしてくれて構わない。
いや寧ろ、私はあなたに、消して欲しいの。
あなたの為の、私の命。他の誰の為でもない、あなたの為の。
あなたは、私が死にたいと願った時にはいつも、「生きて」と願っていた。
その度に私は、その願いを受け入れた。
あなたをもっと、見ていたかったから。
それなのに。
私を見捨てた。
私は何回、好きになった人に見捨てられれば良いのだろう。
教えて。
枯れていた筈の涙が何故か、溢れ出てきた。
溢れて、溢れて、止まらなくて、苦い。苦い。
ぷつりと糸が切れた様に、ぼろぼろと、溢れて。溢れて。
一粒ずつ溢れ出ていたものが、段々と大きな雫と変わって、溢れ落ちていく。ぼろぼろと。
もしもあなたがこれを読んでいるのなら、あの時みたいに、笑わせて。
世界中には、お互いの名も顔も何も知らない人々が無数に存在する。
一生をかけてもその人々と挨拶をして、握手をするのは不可能だ。
数秒毎に、何処かで見知らぬ誰かが死に、生まれている。
そしてその誰かの生涯を知る者は、ほんのひと握りの人間しか居ない。
例えそれが日本の有名な政治家やタレントだったとしても。
この世界で生きている全員がそれを知る事は無いのは皆、同じで。
そう、私もあなたも、これを読んでいるかも知れない誰かも、本当に、本当に、ちっぽけな存在にしか過ぎない。そして何時かは、己という存在を完全に忘れ去られるのが、当たり前。
そこがこの世界の綺麗な一面であり、残酷な一面でもある。
それでも私は、きっと。
あなただけは、忘れたくないのだろう。
思い出す度に、苦く、苦しい感情が、こみあがってきても。
私はこれまで、あなたに、何通もの手紙を書いた。
あなたはそれを、「今日の日記」と名付けて。
毎回それを読んで、感想をくれて。私の想いを、受け取ってくれた。
時にはそれに対する返事や、あなたの身の回りの出来事などを書いてくれた。
そんなあなたに、「私」を知って欲しくて。受け止めてほしくて。
書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。書いた。それはそれは、たくさん。
今だってこうして、書いている。(これはそれを打ち込んだものだけれど)
この原稿用紙や、あなたが生まれてくれた日を祝う為に描いた絵、日々の出来事やあなたへの想い、私の悩み、世界の素敵なところ、そうでないところ。
少し先の未来からは、一緒にお互いの生まれた日を、祝いたかった。
あなたの為にご飯を作ったり、掃除をしたりもしたかった。
もっと声を聴かせて欲しかった。
もっとあなたを、幸せにしたかった。私が。
もっと、もっと、もっと、もっと、もっと。
「あなた」という、一人のちいさくて大きな人間を、これから先も、愛していたかった。
けれどあなたはもう、私を必要としない。
だから、私はあなたに、従うだけ。
あの時、私を思い留まらせてくれて、ありがとう。
生きる意味となってくれて、ありがとう。怒ってくれて、ありがとう。悲しんでくれて、ありがとう。笑ってくれて、ありがとう。巫山戯てくれて、ありがとう。沢山の思い出を、ありがとう。サンドウィッチを10秒で食べてまで、話してくれて、ありがとう。必要としてくれて、ありがとう。頼らせてくれて、ありがとう。「生きて」と願ってくれて、ありがとう。好きになってくれて、ありがとう。愛してくれて、ありがとう。好きにならせてくれて、ありがとう。愛させてくれて、ありがとう。私という存在を、知ってくれて、ありがとう。あなたという存在を、教えてくれて、ありがとう。
この世界に生まれてきてくれて、ありがとう。
生きていてくれて、ありがとう。
あなたを、ずっと愛してる。
愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。ごめんね
ほんの少しだけ先の未来。
あなたがとてもとてもとても幸せになれる事を、信じているの。
そうでないと、許さない。
……そうだな。
今よりも背丈は4、5cmは伸びていて。
「今まで生きてきたなかで、今が一番幸せです。」って顔をしていて。
サンドウィッチをよく噛んで食べる様になっていて。
あなたを幸せにしてくれた方が、あなたの側で微笑んでいて。
誰にでも伝わる様な、あの暖かい笑顔と優しさが、残っていて。
誰よりも、生きる事に、幸せを感じていて。
もしそうだったら、私はとてもとてもとても、幸せで。
でも、やっぱり、私が、あなたを。
最後になりますが。
この世界に生まれてきてくれて、ありがとう。
あなたの事を、愛させてくれて、ありがとう。
私はずっと、ずっと。
さようなら
私が、一番、愛した人