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Black & Black  作者: 練切@Colorful
1/5

1 始めの夢

 馴染みのない木造校舎、幼馴染みに似た別人。幾度となく繰り返された夢のようだ、と一瀬春は思った。

 ただいつもと違うのは、夢ではないと訴えかけるように、冴えている頭が物事を鮮明に捉えていることだ。ここは生徒昇降口の様だが、窓にも扉にも鍵は無く、びくともしない。おまけにその先は真っ暗闇ときて、奥に進むかこのままでいるかの二択しかない状況である。

 こんな夢を見始めたのは一年前の中学三年生の春。卒業して間もない頃だった。

 蛍光灯がチカチカと瞬いて、二宮凉季が聞いた。


「一瀬さんはどこまで覚えているの?」

「二宮くんと同じかな。学校から家に帰る途中だったことしか覚えてない」

「そっか……」


 会話が途切れる。

 二宮も一瀬も、話をするのは得意ではないらしい。


「……大丈夫?」

「大丈夫」


 一瀬が二宮の目を見ながら言った。


「なんか、ボーッとしてるから」


 その言葉を聞いて、本当に似ている、と一瀬は思った。

 短い黒髪も、引き締まった目元も、目の付け所も、仕草も、一瀬の幼馴染みそのもののようである。違いを言うならば、おどおどした雰囲気だろうか。

 とはいえ、今では一瀬とその幼馴染みはあまり話さない仲だ。中学に上がってグループができれば、次第に溝も深まっていく。奇跡的に高校が同じでも変わることはない。一瀬はそれを惜しくは思わなくなってきた。自分が邪魔をしても後悔するだけだと無意識に正当化させていた。


「ごめん。ちょっと考え事するとさ」

「ああ、わかる。謝ることじゃないよ」


 二宮が笑みを浮かべながら言う。

 いつからかこうなることを望んでいたのだろうか。昔みたいなただの友人に戻り、会話をするだけだというのに、一瀬にはどうにも難しい。まさか、と自分を疑った。これもまた夢なのではないだろうか。いつまでも子供のようにひねくれたままでいる、自分に対しての深層心理からの暗示。素直にならなければならないという忠告。


「どうする?このまま居ても何も起こらないと思うよ」

「そうだね。ちょっと探索……してみよっか」

「ホラゲみたい」

「フラグ建てるなー」


 なんだか認めたくない。

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