宇宙飛行士と駆逐艦と機械系女子 4
1年が経った。
我々の星は、地球766と呼ばれることとなった。
宇宙飛行局の敷地はそのまま宇宙港になり、私も宇宙港が新たな職場となった。
私の仕事は、宇宙船を作る技術を習得し、我々自身の手で宇宙に行ける宇宙船を作り上げられるようになること。この星最初の宇宙飛行士として、あとに続くものを1人でも増やすため、懸命に勉強中だ。
私などより、妻の方がずっと変わった。
飛行局に復帰した妻は、地球098の人々のこの地上で宇宙港や街を作るのにあたって、少なからず貢献した。
なにせ妻には「機械系女子会」という人脈がある。
この女子会のメンバーが所属する部署はさまざまだ。駆逐艦内の作戦参謀、整備、パイロット、補給など、そして艦隊司令部の人間までいる。
これだけ広範囲な人脈なため、例えば交易担当者に会いたいと我が連邦政府が妻に相談すれば、この女子会を通じて艦隊内の交易担当との連絡手段を得ることができる。
この人脈を使って、地上と宇宙艦隊の両方に顔が効く人物として大いに活躍することとなった。
そんなわけで、つい数ヶ月前に我が連邦から栄誉勲章を授与された。私も宇宙飛行士として授与したが、夫婦揃って勲章授与というのは初めてだそうだ。
今は念願のスマートフォンを使って、その女子会メンバーと連絡を取り合っている。
ところで、妻は今、妊娠している。来月には、次男が誕生する予定だ。
仕事に復帰して生き生きとしている妻を見ていたら、ついお盛んになってしまった。
そんな身重の妻だが、今でも仕事をこなしている。在宅勤務というやつだ。
技術の力が、こんな状態の妻でも仕事ができる環境を提供してくれる。仕事柄、私は宇宙に行って留守にすることが多いため、正直私は少し妻には休んでもらいたいところだが、あまりに生き生きと仕事してる姿を見るとつい好きなようにさせてしまう。
生き生きとしている原因はもう1つある。どこで手に入れたのか、我が家には小型の核融合炉がある。複座機に付いているあの核融合炉と同型のものだ。
自宅の発電用に使ってるが、そんなものではおさまらない電力が生み出されるため、近所の商店街の電力もまかなっている。
そんな妻は毎日この核融合炉を眺めている。妻曰く、予備にもう一機入手する予定だという。一体どうやって手に入れるのか?やばいものに手をつけてなければいいのだが。
宇宙で出会った駆逐艦は、私の生活も世界観も大きく変えてしまった。妻が活躍することになり、我が家が発電所になるなどとは思いもよらなかった。
そのうち、我が家ごと宇宙に行くのではないか?生き生きと過ごす妻を見て、今日も私は喜びと恐怖を感じている。
(第20話 完)