表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/144

ドラゴンと貢ぎ者と人型重機 2

貢ぎ物の彼女は、鉄格子に鎖でつながれており、逃げられないようになっている。


これは「貢ぎ物」ではなく、「貢ぎ者」だ。


だが、連れてきた者も街の住人も、一向に彼女のことを気に留めていない様子だ。


一方で、檻の中の彼女は泣いている。


そりゃそうだろう。自分の運命が分かっているから、絶望しかない。


一体どうなってるんだ!?町長に抗議した。が、全く気に止める様子がない。


「ドラゴンには、若い娘を貢げばいいということになっとる。だから、国王陛下に頼んで、奴隷を1人譲ってもらったのだ。」


なんと、この宇宙船が飛び交う時代に「生贄」だ。そんな非人道的な行為は認められない。


散々抗議したが、国王陛下よりの勅命によって捧げられる貢ぎ者、ドラゴンを倒さぬ限り、この貢ぎ者に手を出すことは許されない!と言われてしまった。


こうなったら、連合軍規の第53条だ、人命救助だ。


人1人助けられなくて、何が宇宙艦隊だ。


などと興奮気味になった私は、早速駆逐艦に救援要請を出した。


しかし、肝心の我が駆逐艦には、複座機が搭載されていなかった。


我々を運ぶために、航空機を全て下ろしてきたそうだ。なんてことだ…


近隣の駆逐艦にあたってみるようだが、今の時期、攻撃力のある複座機はあまり地上にはないらしい。


さりとて、あの化け物に対抗できそうなものといえば、複座機しかない。ドラゴンと渡り合えるだけの旋回性能を有し、10センチビーム砲を搭載する複座機なら、一撃であんなトカゲ野郎を撃墜してくれるに違いない。


しかし、駆逐艦の返事を待ってる余裕はない。今にも現れそうだ。


鉱山の崖の前にある野原の真ん中に、彼女は放置されている。しかし、ドラゴンを倒さなくては彼女を助けることができない。


法も軍規もかなぐり捨てて、彼女を連れて逃げてやりたい気分だが、そんなことをすればいずれ捕まって、彼女は生け贄に逆戻り、私は軍法会議で懲罰。あまりいい未来は描けない。


ここであのドラゴンを倒すほかない。


今あるものでもっとも強い兵器は、この人型重機だ。


だが昨日の一戦で、そのままで歯が立たないことも分かっている。どうするか?


まずは、炎対策だ。


私はいろいろ考えたが、右腕のショベルに、柵用の網を溶接した。


網ならば軽いので、この人型重機につけても機動性を維持できる。


網は穴が開いているが、炎は通さない。バーベキューなどで実証済みだ。だから、こんな網でも帆脳を防ぐことくらいはできる。


問題は、どうやって奴の体に削岩機を撃ち込むか?


これも散々考えたが、ここは彼女に囮になってもらうしかなさそうだ。


生け贄の効果があったとされる伝承があるくらいだから、多分ドラゴンは彼女めがけてやってくるだろう。


なお、援護としてここにあるだけの機体を総動員する。


といってもあるのは、ショベルカーとダンプカー。一応どちらにも防御用のバリアが装備されている。


この3機で、体長6メートルあまりのあのドラゴンに立ち向かう。


私は鉄格子に歩み寄り、彼女に向かって言った。


「今は残念ながら助けられない。だけど、必ず助け出す。私を信じて待っててほしい。」


そう言って、水筒と非常食料を置いて立ち去った。


一度は行ってみたかったセリフには違いないが、ちょっと今度ばかりは本気だった。誰にも頼れない以上、私が戦うしかない。


そんな会話をして、1時間ほど経った時だった。


上空に、奴があらわれた。


黒い体、コウモリのような羽根に頑丈そうなウロコをまとった胴体、恐竜のような大きな口に、鋭い目。


まさしく、あれはドラゴンだ。


上から鉄格子を見つけたらしく、地上に降りてきた。


だが、こっちには3機のマシンがいる。


ついに、この怪物(モンスター)との戦闘がはじまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ