核と大都市と特例砲撃 2
一方の陣営が100発ほど撃ってきた。前回、港と都市を攻撃された側の陣営と思われる。
このミサイル群は、二手に分かれて飛んでいった。
一つは我々が担当するはずだった都市のある方角。おそらくはここがもう一方の陣営の首都圏なのだろう。
もう一つは3番目の派遣先だった島。それぞれ50発づつが向かっていた。
高度は低い。どうやら着弾を早めるため、なるべく低空で飛行させてるようだ。
最高到達地点を予測し、その地点に2小隊が集結した。
最高到達地点での高度は、200キロに達する見込み。現時点では大気圏内での攻撃が許可されていないため、ここで落とすよりほかはない。
だが、撃ち漏らした際のことを考えるとやはり特別許可が欲しかった。しかし、今ここで無い物ねだりしても仕方がない。我々の砲撃で確実に落とすよりほかはない。
元々、我々は近接戦闘には向いていない。
この1000キロ以内の物体を落とすためには訓練されていないのだ。
だが動きが読みやすいミサイルであり、今回は50対300。数で命中率の低さをカバーする。
「砲撃戦用意!目標、核ミサイル群100発!高度100キロを超え時点で、一斉に砲撃を開始する!撃ち方用意!」
「撃ち方用意よし!操艦権を砲撃管制室に移行!」
我が艦、そして私のチーム10隻は迎撃態勢に入る。
ついに、ミサイル群は高度100キロを超えた。ここからわずか1~2分間、宇宙空間に出ている間が勝負だ!
ここで2バルブ装填を命じた。艦隊戦ではないし、装填時間よりもビームの威力を重視する。だが3バルブ装填に必要な90秒は待てないため、装填時間が40秒程度で済む2バルブ装填で対処した。
「撃てっ!!」
我々のチーム以外の300隻も一斉に砲撃を開始した。青白いビームが、一点に向かって飛んでいく。
ミサイル群に着弾、上空で青白い光球がいくつも光っていた。
我々とは別のミサイル群も、別の小隊によって一斉に砲撃されて、迎撃されたようだ。
レーダーで確認、全断消滅、なんとか迎撃に成功した模様。皆一斉に安堵した。
だが、実は我々の方は撃ち漏らしていた。見つかったのは、迎撃後10分経過後。
2バルブ砲撃があだになり、砲撃により発生するノイズで、少数のミサイルを探知できなかったようだ。おかげで、ノイズが消滅した10分後に撃ち漏らしが発覚。
別の小隊の方でも撃ち漏らしがあったが、1バルブ砲撃だったためにすぐにレーダーで感知。第2射で迎撃された。
こちらは発見時にはすでに高度60キロ。もはや「大気圏内」となった。
撃ち漏らしたのは、3発。向かう先は大都市。たった3発でも、前回と同じ50メガトン級ならば、何百万人もの人々の命を奪うことになるのは間違いない。
外にいたものは一瞬で消滅し、地下街などで運良く熱戦から逃れても、凄まじい速度の熱風が襲いかかってきて、身を焼かれる。
その悲劇が、あと数分でこの先の大都市にて現実となる。
…私は、決断した。
私1人の命ならば、何も惜しいことはない。私はこれまで軍一筋だったため、結婚もせず独り身だ。
軍事法廷で銃殺刑を言い渡されても、私のみの責任ということにすれば、死ぬのは私1人で済むし、悲しむ家族もいない。
だが、ここであの3発のミサイルを見逃せば、数百万の命が失われる。この中には、多くの家族もいれば、恋人もいるはずだろう。
1対数百万。天秤にかければ、どちらがマシかすぐに答えは出た。
私はチームの10隻に命令した。
「これより、艦長の独断で行動する。3791号から3799号艦は直ちに地上に降下、残存ミサイルの迎撃に向かう!」




