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艦隊決戦と超大型戦艦と遺恨の連鎖 1

私は地球(アース)234 遠征艦隊 総旗艦「ランビアン」の司令部付参謀本部所属のキエン・ミン・ホアンというものだ。階級は中佐。主に通信を担当している。


この戦艦ランビアンは全長4000メートルのやや大きめの戦艦。収容艦艇数50隻。総旗艦というだけあって、我が惑星で最大の戦艦だ。


我々は今、とある中性子星近くにある大ワームホール帯にいる。ここは地球(アース)001から400光年の場所にある宇宙の「交差点」であり、それゆえに武力衝突も多い場所だ。


なぜなら、ここを突破すれば地球(アース)001へ直接攻め込めるといわれている。


もっとも、いまどきここを突破したくらいでは地球(アース)001にたどり着けない。その途中には拠点要塞やら自動迎撃システムやらがひしめいているのだが、そんな事情を知らない連盟側は、ここを執拗に攻撃してくる。


このほど、敵の大艦隊が集結しつつあるという情報を入手。


その数、5個艦隊、総数5万隻。


ということで、地球(アース)001から近隣の4惑星に出動要請がかかり、この空域からほど近い我々は早速その「交差点」に向かった。


で、我々連合側は6個艦隊、6万3千隻になった。


6個艦隊で艦数がちょっと多いのは、我々地球(アース)234が通常の1万隻より多い艦隊を引き連れているからだ。我々は遠征艦隊1万隻に加え、防衛艦隊より3千隻を追加。


だが、地球(アース)001に至っては遠征2艦隊、2万隻を投入。残り3惑星が通常規模の1万隻の艦隊をそれぞれ繰り出してきた。


地球(アース)001は、この宇宙において最初に恒星間航行を成し遂げ、宇宙開拓に進出した惑星。持っている資源採取用の植民惑星も多く、遠征艦隊も4個艦隊を保有する。


それゆえに味方からは頼られ、敵からは憎悪されている存在。かつての悲劇を起こした張本人ということもあって、未だ連盟側からは殲滅すべき対象とされているようだ。


もう170年以上も続く恨み。今はすっかり紳士的な惑星であり恨むほどの星ではないのだが、積年の恨みというのはそう簡単にはなくならないもののようだ。


一方で連合側も武力には武力をという考え方が主流だ。今さら過去の汚点などを認めたくない地球(アース)001は、連盟側に対して軍事力を誇示し、彼らの侵略を拒む方針だ。


結局、連盟の意地と、連合の見栄っ張り根性が「第11次中性子星会戦」を勃発させた。


同じ空域に両軍合わせて11個艦隊。これほどの艦隊戦は、実に20年ぶりだそうだ。


目前の40万キロ先の空域には、すでに敵の5万隻隊が集結していた。


一方の我々6万3千隻も集結完了。総指揮は地球(アース)001に一任した。


だがこれだけの大艦隊。戦端を開くのは至難の技。


各艦隊間は3千キロづつ、通常陣形の艦隊は縦20段、奥行き3段、横170段で構成するのが普通。各艦の距離は5キロ取られているのが普通なので、横幅は900キロ近くになる。


5個艦隊集まれば、だいたい1万7千キロもの幅となる。


こんな幅広い陣形は見たことがない。両軍とも20年ぶりの経験だ。


このため、統制のある軍事行動は難しい。このような一触即発の状態では、偶発的に戦闘がおこるのを止められない。


さて、その両軍は射程ギリギリでのにらみ合いを続けているが、先に動いたのは連盟側だ。


一部が前進し、距離30万キロに迫ってきた。


我々もこれに呼応して前進した。


そして両軍の一部が距離が30万キロに達した瞬間、砲撃戦が開始された。


それに引きずられるように、他の艦隊も砲撃を開始。


ここに大艦隊決戦が開始された。


さて、これだけ数が多い艦隊同士だと小細工が仕掛けられない。


通常の艦隊戦であれば、右翼または左翼に集中砲火を浴びせるなどして敵を翻弄する作戦に出ることもあるが、端の艦隊ならともかく、真ん中にいる艦隊は右にも左にも動けない。ゆえに、真正面の敵をひたすら撃つしかない。


両軍ともただ横一線に並んで撃ち合うだけの単純作業。それ以上の戦術が取れないのだ。


しかし数が数だけに、艦隊戦の激しさは今までの戦いの比ではない。


周りを走る青白いビームの数が通常の艦隊戦よりはるかに多いのがわかる。もはやどっちを向いても戦場だ。


私はこれまでに艦隊戦を一度経験している。同じこの空域で、数年前に一個艦隊同士の砲撃戦をやった。


このときは5時間撃ち続けて弾切れになり、両軍撤退。戦いとしては引き分けだが、この空域から敵を排除できればよしの我々連合側に対して、ここを突破しなければ戦闘の軍事的意味がなくなるのが連盟側。戦略上は我々の勝利と言える。


今回も勝利条件は同じだ。連合側はここを守りきればよし、連盟側は突破しなくては勝利とはならない。


そのための5個艦隊集結という奇策に出たのだが、思いの外こちらも素早く複数の艦隊で対抗してきたため、すでに敵の勝利の可能性は少なくなった。


今回もこのまま撃ち合って、いつも通り弾切れになって、それで終了か?


だが艦隊数が多い分、損害が馬鹿にできない。


なにせ通常の5倍以上の艦艇数。出る損害も、5倍以上と予想される。


事前に、ざっと両軍合わせて2千隻以上撃沈するという損害予想が出ていた。20~30万人が死亡する。ちょっとした街の人口に相当する人々が、この無意味な戦いで命を落とすことになる。


だが、今回の総指揮をとる地球(アース)001の大将は、20年前の同様の対戦を経験している人物だという。


この戦闘を早く終わらせるための作戦が打てるのか?はたまたいつも通りの消耗戦で終わるのか?


このときはまだ我々は、その終わり方を知ることはなかった。

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