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豪華客船と星空ツアーと香辛料 3

窓がないので外がどうなっているのかわからないまま、どうやら我々は彼らの「戦艦」とやらについたようだ。


案内されて行った先で、我々は驚いた。ここは、本当に「船の中」なのか?


高い天井に、広い通路。数十人もの人が行き来し、忙しそうに働いている。船というよりは、大きな倉庫にでも来たようだ。


さて、最初に運ばれた人々は、一等客室の乗客だ。


政府要人や富豪と呼ばれる人しか乗らない客室ということもあり、彼らも他の乗客とは扱いを変えてきたようだ。


一等客室の乗客、約100名は、これまた広い会議場に通された。


そこで、1人の正装をした人物が現れた。


「お疲れのところ、お集まりいただき申し訳ありません。これよりあなた方を我が艦にご案内するにあたり、我々のことを説明しておきたいと思います。」


そこでは、彼らの正体が明かされた。簡単に言えば、彼らはこの地球の人間ではない。宇宙からからきた宇宙人だ。


ただ、地球と呼ばれる惑星はすでに700以上あり、我々は最近彼らによって発見され、その中に加わる惑星だという。


つい1週間前に我がイルベニア政府と接触。我々が出港した後だ。


交渉を始めようとした矢先に、我々の遭難事故の報を受けたんだそうだ。


その報を受けてすぐに「駆逐艦」が出発。先に来たあの船がそうだ。


駆逐艦が我々の客船を発見してこの戦艦を誘導、今その戦艦とやらに我々が乗り込んだというわけだ。


「殺風景な艦内の客室だが、今日はそちらでお泊りいただきたい。」


ということで、とりあえずこの艦内の客室とやらに案内された。


そこで目にしたのは、我々がこれまで見たことのない部屋だった。


確かに、飾りも何もない殺風景な部屋。ベッドの類は似たようなものだが、その他には見たことのない家具や装備がある。


まず照明は、壁にある突起物を押すだけで点けたり消したりできる。なにやら見たことのない四角いものがあったので聞いてみたが、外の情報を映像で流してくれるという機械だそうだ。


トイレに洗面所といったものまで、我々の知るものとは全く違う動作原理で動いているのがわかる。


掃除は機械が自動でやってくれるらしい。


なんと、こんな世界があったのか?アリシアと私は、物珍しいこの部屋に興奮していた。


さて、翌朝。


昨夜はこの部屋に興奮しすぎて、あまり眠れていない。2人とも、寝不足気味だ。


正直今が朝なのかどうかがわからないが、私の持つ懐中時計が朝の8時ごろであることを教えてくれた。


さて、昨日ここの係りの人に教えてもらった、テレビとやらを点けてみる。


薄っぺらい四角い黒い板には、人の姿が映っている。


まるで奥に人がいるようだが、これは別の場所で写したものを表示している道具なのだという。


文字などはわからないものの、幸い言葉はわかるので聴いてみた。


最初に流れてきたのは、我々の政府との交渉の進捗についてだった。イルベニア以外にも複数の政府と接触し、この惑星に統一の代表機関を設置するよう働きかけているとの話が出ていた。


その後に、我々の豪華客船の話が出て来た。


乗客、乗員合わせて3000名がこの戦艦に救助されたこと、そして豪華客船エジンバラは駆逐艦に曳航されて、昨夜のうちに近くの港に先ほどたどり着いたとのこと。


こんなに早く情報が伝えられるのか。どうなっているんだ?この船は。


このテレビから流れる情報に驚いていたが、そのあとにさらに驚くべき映像が出て来た。


どうやら、料理に関する情報らしい。が、そこに映った料理というのが我々に衝撃を与えた。


映っているのはどうやら「パスタ」。我々のところでもよく見かける食べ物だ。


だが、そのパスタにふりかけているものがとても気になる。


おそらくトマトと一緒に煮込んだ赤いパスタに、白っぽいものをふりかけていた。


彼らは「チーズ」といっていたが、我々の知っているチーズとは随分違うものが出ていた。なにせ、粉状である。あそこまで細かいチーズというものを、我々は知らない。


さらに、なにやら赤いものもかけていた。トマトで煮ているのにさらにトマトを書けたのかと思いきや、これは「タバスコ」というとても辛い香辛料だという。


私と妻アリシアはすぐにこれが我々の知らない新しいパスタの食べ方であると直感した。


無論、食べてみたい。どこに行けばこのパスタに出会えるのか?


そこで扉をあけて、通路を行った先に待機していた人に、手当たり次第聞いてみた。


「ああ、おそらくこの艦内の街のある料理店の紹介番組だと思いますよ。」


なに!?艦内に街があるだと?そんなものがあるのか、この戦艦は。


それを聞いてしまうと居ても立っても居られないのが我々夫婦。


是非街に連れて行って欲しいと請願した。


我々の対応をしたその女性が連れて行ってくれることになった。彼女の名はラム・スアンランさん。ここの宿泊施設の案内人として働いているそうだ。


ただ、後1時間ほどで交代時間なので、それまで待って欲しいと言われた。なお、ここと我々の1時間はほぼ同じ長さらしい。


ということで、テレビというのを見ながら待った。


さらにそこで、今度は肉料理を映していた。


肉自体はよく見かけるものだが、最後に何かをかけていた。これもおそらく香辛料だ。


なんだここは、戦艦の癖になぜこんなに食材が豊富なんだ?


ようやく1時間が経ち、早速ラムさんに街へ案内してもらった。


早速行こうとしたが、我々が宿泊施設を出て行動することは、艦内のここの責任者に伝えておかないといけないらしく、足止めを食らった。政府からの要請でここに連れてきてもらった手前、何も言わずにここを離れるわけにはいかないようだ。


宿泊施設を出ると、汽車に乗った。と行ってもこの汽車、蒸気が出ていない。全く違う動作原理で動いているのがわかる。まあ、ここにきてそんなものばかりに出会っている。そろそろ驚かなくなってきた。


街がある駅に到着し、街に出た。


そこには、もはや船の中の光景とは思えない空間が広がっていた。


大勢の人が往来し、店もたくさんある。料理店と思われるものがたくさん見られた。


早速どこかの店に行って見たいところだが、一つ大事なこと気がついた。


我々はここの通貨を持っていない。お金がないと、何も食べられない。


ラムさんに聞いても我々の持つお金とここのお金とが交換できるかどうかがわからないという。そこで、ここの銀行に行って聞いてみることにした。


そこでもわからないと言われたが、たらい回されているうちにある商社の社員というチェンさんという人を紹介された。


私がこの星で商社をやっていると言うと、快く通貨の交換に応じてくれた。


なんでもこの人も、こちらの星にある鉱石を買い付けに来たらしいのだが、同様にお金が得られなくて困っていたと言う。ちょうどいい具合に同じ悩みを持つ同業者に出会えたものだ。


ついでに、その鉱石の買い付けを私のところでやりたいと申し出た。代わりに、ここにある香辛料のことを知りたいと彼に言ってみた。


商売の匂いを感じたようで、それならばとある店に行くことになった。


そこはバイキング形式という、パスタや肉、野菜などを好きな量だけ取って食べられるお店だそうだ。


もちろん、香辛料の類は無数にあるという。


ここで少しづつの料理と多くの香辛料を確かめてみてはいかがかと提案された。この場はなんと彼のおごりだと言う。


早速、私とアリシア、チェンさん、そして成り行きでついてきたラムさんは、小さな皿に様々な料理を乗せていった。


その横には、香辛料などがずらりと並べられている。


ラムさんやチェンさんに教えられて、野菜にかけるドレッシングや、肉にかけるソース類、パスタにかけるチーズやオリーブ油、そして「タバスコ」と呼ばれるあの赤い液体に巡り会えた。


粉状のチーズは、思ったよりくどさがなくてあっさりしている、それでいて濃厚な味だ。


タバスコというのはやや強烈だった。少しかけただけでも辛い。だが、くせになる味だ。


元々は地球(アース)001という星で作られた調味料で、いつの間にか宇宙中に広がったものだという。さらにこれより辛いものがあるとチェンさんはいっていた。


さて、肉料理にかけるソースというのは実に複雑だ。私が知っているターメリックやペッパー、その他香辛料が入っているものはわかるが、どうもそれだけではない。


ドレッシングにもあるが「ショウユ」と呼ばれる香辛料。塩辛いがいろいろな料理に使えるこの香辛料が何からできているのかがわからない。


で、聞いて驚いたのは、このショウユというのは大豆から作るんだそうだ。これまた地球(アース)001のある国で作られていたものが広まったということだ。


こんな調子で、妻と私は衝撃を受け続けた。


遭難事故で立ち寄っただけの軍用艦の中で、まさか我々の知らない味に出会うとは、予想だにしなかった。


とても1日ではない味わい尽くせない。チェンさんに頼み、我々をもう少しここに留めてもらうようにしてもらった。

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