豪華客船と星空ツアーと香辛料 1
私の名はマーヴィン。商社を営んでいる。世界の珍しいものを探し出しては買い付け、本国イルベニア共和国で売りさばく。
いい歳して妻もめとらず世界中飛び歩いていたら、両親がとうとう結婚しろといってきた。私のような放浪癖があるような男についてこれる女性なんていないと断り続けてきたが、なんとそんな女性を見つけてきた。
彼女の名はアリシア。旅行好きのお嬢さんで、放っておくと翌朝にはイルベニアの国境を越えた場所で朝食を楽しみような、そんな活動的な女性だ。
あって見るとすぐに意気投合して、翌朝には2人で南イルベニアの港町で海鮮料理を食べるため汽車に飛び乗っていた。
というわけで、すぐに私は彼女と結婚。
このほど、新婚旅行と商材探しを兼ねて、豪華客船「エジンバラ」に乗って、世界一周旅行に出ることにした。
排水量5万2千トン、ボイラー26基、内燃機関2基からなる出力8万5千馬力の最新鋭客船。先日、大洋航海を終えて、このほど世界一周の旅に出ることになった。
もちろん、部屋は一等客室。200日近くの旅で、彼女も私も初めての大旅行だ。この歳でこんな旅行を経験したら、もうこれ以上の旅が経験できなくなってしまう…と考えたが。
「マーヴィン、心配ないわ。次は2周すればいいじのよ。」
という彼女の発言に背中を押されて、じゃあ今できる最高の新婚旅行をしようということになった。
私も大抵の国をまわったが、今度の旅行で初めて行く国も多い。きっと、見たことのない食べ物やお宝が見つかるに違いない。このときは、そう思った。
私が得意なのは、香辛料や嗜好品といった食材探しだ。宝石や鉱物もわからないではないが、珍しいものを食べて、その国の「匂い」を感じる。それが私の旅行での最高の楽しみだ。結果としていい商材を手に入れて、これを本国で売って、それを元手にまた旅に出る。
アリシアも旅行好きだが、それほど裕福ではなかったため、汽車と小舟を乗り継ぐ旅が精一杯。にも関わらず、すぐに近くの街で私の知らない料理を知ってて、私自身度肝を抜かれた。
彼女の料理探しのセンスと、私の放浪センスとが一体になれば、間違いなく最高の何かを探し出せるような気がする。
こうして、我々夫婦は意気揚々として、この豪華客船に乗った。
それにしてもこの客船。今まで乗った船とは比べ物にならないほど揺れない。今のところ世界最大の客船のようだから、現時点ではこれ以上の船が存在しない。今までの船と比較にならないわけだ。
いずれこれより大きな客船が建造されるだろう。その時は、その船に乗って彼女と世界二周旅行にでも行こうか。
そんなことを考えていた矢先。
まだ出発して7日しか経っておらず、最初の寄港先にすらたどり着いていないというのに。
我々夫婦のその後を左右する、運命の事故が起きた。