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宇宙戦艦と駆逐艦と第53条 6

さて、私の今の仕事とは、火星側に駐留し艦隊運用のノウハウを伝えることだ。


我が駐留艦隊は地球側と火星側とに分かれて駐留することとなっているが、我々30小隊は火星側の虐殺を食い止めた英雄として、歓喜を持って迎え入れられていた。


そういう事情もあって、我々の小隊の火星駐留は決まった。「地球」側の感情を考えても、その方がいいだろうということになった。


さて、通常は軍事的な技術供与の見返りとして、その星から資源提供を受けることが慣わしとなっている。


ところが、ここの「地球」にはほとんど資源がない。ほぼすべてを火星側から供給されているのが実情だ。


変な話だが、火星から資源提供を受けて、それを一部地球側に流す、ということをやっている。その代わりに「地球」からは食料の提供を受けている。


それにしても、我々の陣営で最も歴史の長い地球(アース)001ですら、本星の資源を枯渇するまで食いつぶしてはいない。一体どういう使い方をすれば、自惑星から資源が空になるのか?不思議だ。


しかし、艦隊を2分しての技術供与するというのは、いささか大変なことだ。


当然だが、教育担当者が倍必要になる。


これはかなりの負担だ。


彼らはすでに宇宙艦隊を保有していて、ある程度の教育課程が不要だ。


例えば、航空機の教育はいらない。航空機に関しては我々とほとんど変わっていない。というか我々自身、戦闘ではほとんど航空機を使っていないため、航空機運用に関してはむしろ彼らより退化している。


問題は、艦船に関するノウハウ伝承だ。


こっちは彼らと我々とでは大きく異なる。


彼らは小口径のビーム砲で、100キロという我々から見れば近距離の撃ち合いが前提だが、我々は大口径ビーム砲による30万キロの長射程での撃ち合いを基本とする。


なにせ周りの宇宙はこの長射程ビーム砲を持つ艦隊だらけ。そこに100キロ射程のビーム兵器では到底対抗などできない。根本的に戦術が異なる。


ということで、艦隊運用についてはいくら宇宙艦隊を有する彼らとはいえ、基礎から教えないといけない。


そこに通常の倍の人間がいるとなると、さすがに我ら1艦隊では担当できない。


我々の任務は、惑星の教育だけではない。


まず連盟側の侵攻に対する備え、この空域での商船の安全な航行を保証するための警備、政府から派遣される要人の護衛、などなど。


かといって、2艦隊を駐留させられるほどの資源供給能力はこの星系には、ない。


ということで、結局艦隊教育は、火星と地球を混在させて一括で行うことを通達した。


両者ともこれを了承。渋々だろうが、我々の事情も考えて欲しい。


で、私の仕事とはズバリこの訓練部隊への教育。


火星に駐留しているため、座学は火星側の人間のみ相手にすればいい。


が、宇宙に出て模擬艦隊による艦砲訓練を行う際は、両者が顔を合わせることになる。


まあ、訓練中はいい。むしろお互いが競争心をくすぐりあってくれるおかげで、練度の上昇が著しく早い。


問題は、訓練後の補給時のオフの時間だ。


この時はどちらも戦艦内の街に繰り出す。


当然、街中でばったり会うことも多い。


さすがに我々に艦内では感情をむき出しにすることはしないが、いつかは何か起こるのではないかと心配していた。


3ヶ月ほど経過したある日。


ついに、それが起こった。


火星側と地球側の訓練生が、大喧嘩をするという事態が発生した。


数十人規模の暴動となったため、警備兵が出動する事態にまで発展した。当該の訓練生はしばらく謹慎、指導教官も訓戒処分となった。


…って、人ごとのように言ってますが、要するに私が処分を受けたわけです。


さすがにこれは凹んだ。でも20年の恨みとは、そういうものだろう。簡単にはなくならない。


惑星発見時には大抵どこも戦争状態で、中には100年も戦争をやってたところもあるようだ。同じように喧嘩が起こることはあるらしい。


このまま胃の痛い思いを続けるんだろうか。


そんな矢先だった。この状況を一転する事態が起きたのは。

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