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宇宙戦艦と駆逐艦と第53条 3

我々が追いついたのは、まさに2番星軍が1番星軍の射程に入り、砲撃される寸前だった。


2番星軍は、もう少しのところで小惑星群を射程に収めるところまで迫っていた。


我々を護衛する2小隊は、我々ではなく2番星軍の護衛に回るよう指示した。この状況では我々に護衛など不要だ。


1番星が発砲したその時、ちょうどわが分艦隊の700隻が割り込む。


バリア全開で、彼らのビーム攻撃を遮断した。


彼らのビーム砲は、我々の1バルブ砲撃よりは圧倒的に威力が低い。あっさりと攻撃をはじき返した。


それにしても1番星軍から見れば、いきなり700隻もの艦艇がどこからともなく現れて、しかも攻撃をはじいた。彼らも驚いていることだろう。いや、2番星軍から見てもそうだが。


そのまま、700隻は2つの艦隊の間に居座る。


その間に、こちらも仕事を行った。20個全ての小惑星に向けて、主砲を斉射する。


特にでかいのは我々でも40隻以上の砲撃がないと、軌道を変えられそうにない。


すでに、2番星が目の前に見えている。残り時間はあと3時間!


「第30小隊!全艦砲撃準備!」


小隊長でもある艦長が叫ぶ。300隻が一斉に装填を開始。


「撃ち方はじめ!」


艦長の指示と同時に、300隻が一斉砲撃。


我々にとっては「至近距離」の200キロの距離から砲撃した。


このときまだ射程外だっただったため、2番星軍はまだ砲撃していなかった。


しかし、これは彼らの決死の覚悟が我々を動かし、砲撃させた。だから、彼ら自身の勝利でもある。


さて、一撃で思惑通り軌道修正できた。徐々に惑星から小惑星群すべてが遠ざかっていく。第1次攻撃は成功した。


このまま砲撃を続ければ小惑星群を破壊することもできるだろうが、それをやるのは残りの1万1千隻の仕事だ。1個艦隊で砲撃しないと、インパクトのあるデモンストレーションにならない。


さて、問題はこれからだ。


我々は2番星を助けたなどと思っているが、2番星からはまだ我々は未知の艦隊。味方などとは考えてもいないだろう。


ましてや1番星に対しては作戦の邪魔をしたわけだ。お互い、我々に対しどう出てくるか?


とりあえずこちらの仕事は終わったので、我々は2番星軍を護衛する700隻と合流した。


さて、1番星軍だが、すでに攻撃を中止していた。これ以上撃っても無駄だと思ったのだろう。未知の艦隊の出現に彼らは困惑しているようだったが、我々は小惑星群には攻撃したものの、彼らに向けては一発も発砲していない。このため、しばらく様子見となったものと思われる。一定の距離を取りつつ追尾してくる。


一方の2番星軍はといえば、同じく様子見な感じだ。


だが、彼らから見れば我々は救世主…と自分で言うのもなんだが、艦隊を守備し小惑星群の落下を防いでくれた艦隊である。


しばらく、この3艦隊の奇妙なランデブー航行が続いていた。


その静寂を打ち破るかのように、我が艦隊1万1千隻の一斉砲撃が行われた。


あの小惑星群に向けて、なんと3バルブ砲撃をかけていたのだ。いくら何でもちょっと、それはやりすぎでしょう。


派手な無数の青白いビームが一斉に駆け巡った。おかげで、だれの目にも大艦隊の砲撃とわかる。


無論、小惑星群は一撃で消滅。1万隻対石ころ20個。勝負にならない。


その直後に、艦隊から複数の周波数で呼びかけを行った。地球(アース)113政府、及び宇宙連合の名で、両軍の停戦勧告が呼びかけられた。


なお、艦隊主力は我々3小隊のいるこの空域に集結するとも宣言された。ということは、我々は暫くここに居ろというこということになる。この気まずい空域に1千隻は残ることになった。


この呼びかけの後、まず1番星軍から一隻こちらに向けて動き出してきた。


続いて2番星軍からも一隻、こちらにやってくる。


向かう先は我が艦のようだ。


実はこの9980号艦は、周りの艦艇と比べてやや大きい。全長が150~400メートルが普通の駆逐艦にあって、この船は450メートル。最大級の駆逐艦だ。旗艦としての機能を備えるため大型にする必要があり、戦艦内のドックに入るぎりぎりのサイズで作られた艦だ。


この大きさから、私の艦が旗艦だと判断されたのだろう。両軍の艦艇とが向かってくるのも無理はない。


まず、1番星軍の方が呼びかけてきた。


「こちらは地球統合軍、第1艦隊旗艦「マッターホルン」。貴艦隊との接触を望む。応答されたし。」


1番星と呼んでた方は、やっぱり「地球」と呼ばれているようだ。


その旗艦は全長500メートルほど。50センチ砲を3門備えた砲塔が上下に4基づつ、合計24門の蒼々たるいでたちの戦艦だ。


続く2番星軍の方も呼びかけがあった。


「こちらは火星解放軍、第1艦隊所属 旗艦、カンチェンジュンガ。貴艦隊との合流を希望する。許可を求む。」


こっちは「火星」という名前の惑星か。確かにちょっと赤い星だ。


こちらの旗艦も全長500メートル。砲身、と砲塔の形は「地球統合軍」と同じだが、砲塔が上に3基、下に4基。1基少ない代わりに、航空機用のカタパルトらしきものがついている。


ところで、すごい偶然だが、ここではお互い統一語が使われていた。おかげでコミュニケーションが取りやすい。


両軍に向けて、我々もそれぞれ通信を送ってきた周波数バンドを使って返信した。


「こちらは地球(アース)113 遠征艦隊所属の第30小隊旗艦、駆逐艦9980号艦。貴艦らとの合流を歓迎する。」


分艦隊とはいえ、1千隻の旗艦が駆逐艦を名乗るなど、変な艦隊だと思ったことだろう。まあ、事実だから仕方がない。


さて、まず「2番星」改め火星解放軍の艦が先に到着した。


動いたのは「地球統合軍」が先だが、距離的に我々が火星解放軍の方に寄っていたため、先に着いてしまった。


中型の航空機が射出された。そこで、我々は艦底部にある中型機の格納庫に入ってもらうことにした。そこにあった機体は一時外に出てもらった。


エアチューブを結合して、なんとかこちらに乗り込めるようにした。考えて見れば、連盟軍との接触を除き、自軍以外の宇宙軍と接触したのはこれが初めてだ。


ハッチを開けると、中からいかにも上層部の人物が現れた。


副長の私が出迎えたのだが、開くや否や急に抱きつかれた。


最初襲われたのかと思ったが、全くの逆で感謝の意だった。


いきなり初老の、しかも閣下クラスの人物に泣きながら抱きつかれるとか、どういう罰ゲームかと思ったが、理由は当然、小惑星群阻止への感謝だった。


そうだ、我々は彼らの星を救ったのだった。あの絶望的な状況から、我々の介入により惑星の無事と火星解放軍の損耗なしという奇跡的な状況へと一変したわけで、これは抱きついてくるのも無理はない。


さて、遅れて「地球統合軍」の旗艦が到着した。


こっちはエアロックの接合を求めてきた。


どうやらあちらは艦載機というのがないらしい。艦の側面より四角いチューブを伸ばして他の艦と連結する構造のようだ。


そこで、戦艦との連結用のハッチにつないでもらうことにした。


さっき射出した哨戒機を使ってこの艦を誘導し、なんとか接続に成功。


それにしても片やわざわざ航空機でやってきて、もう一方は旗艦を横付けを要求してくる。構造上仕方がないのだが、なんだか後者の方が不遜な感じを受ける。


で、またもや私が出迎え。さっきは感謝の抱擁を受けたが、今度は殴られるかもしれない。なにせこっちの陣営には敵対行為をしたわけだし。


が、やってきたのは予想外に紳士な人物。やはり将官クラスの人物で、ハッチが開くや敬礼された。


思うところはいろいろあったが、こちらは別に彼らに恨みがあるわけではないので、負けずに紳士な対応を心がけた。


両者は、我々の会議場で介することになった。


会うや否や、お互い何か言い合うのではないかと懸念していたが、お互い敬礼したのち、一言も交わすことなく席に着いた。


考えて見れば、彼ら同士より我々の方が未知の存在。ここは共通の敵に向かう心境なのかもしれない。


「さて、これより両軍の停戦に向けた話し合いをしたいと思います。が、その前に我々の話を致したいと存じます。質問などありましたら、随時受けますのでお声がけください。」


こういう場では必ず説明する、この宇宙の陣営のこと、宇宙にある地球と呼んでいる星が700以上あること…などなどが広報官によって説明されていった。

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