爆撃機と駆逐艦とローストチキン 6
エレナさんとリチャードの奴、あからさまに我々を残して消えていったぞ。意図がばればれだ。
サラさんと2人きりになってしまった。とりあえず人混みを避けてちょっと静かな場所に行こう。
「大丈夫ですかね~エレナとリチャードさん。もう見つけてるといいんですが、リチャードさん。」
絶対見つけて、すでに合流して我々をどこかでみてると思うよ。
などと言えるわけもなく。
「そうだね、大丈夫かな。でも、狭い街だし、なんとかなると思うよ。」
「そうですね~。大人なんだし、なんとかなりますよね。」
やっぱり、彼女は私の好みの枠にジャストミートだ。これだけ近くで見ると、ますますわかる。
「でも私はまだ子供なんですよね~。エレナくらいにはなりたいなぁ。」
「そうですか?レーダー手としてうまくやってるじゃないですか。」
そう、彼女はレーダー手。爆撃隊を追いかけてる時も、彼女の誘導があったからこその作戦成功に結びついた。
「遠くのことは、よく見えるんです。でも、近くが見えないんですよ。私。」
「近く?」
「例えば、あなたのこと。」
急に確信的なところに入り込んだような気がする。なんだか、いつもと雰囲気違わないか?この人。
「ロバート大尉は、私のこと、どう思ってます?」
「どう思ってるか…か。」
どう言うことだろう?子供っぽいことに対する意見なのか、職場でのサラさんはどう見えてるか?と聞いてるのか、あるいはもっと確信的な部分、恋愛感情的なことを聞いてきてるのか?この3つの可能性がある。
普段の私なら、話をはぐらかすため、1、2つ目の質問と解釈して返したことだろう。だが、それではエレナさんとリチャードの稚拙ながらもうまくここまでの状況に持ってきてくれた作戦を無駄にしてしまうのではないか?
私は策士だ。作戦を無駄にすることは、職業上ありえない。
3番目の選択肢以外、私が取るべき答えはないのだ。
もしかして、さすがのサラさんも気づいているのではあるまいか。だから、あえてストレートに打って出たのではないか?
ならばここは、あえて直球勝負に行く。外れたら、その時はその時だ。
「…好き、ですよ。」
「はい?」
「あなたのこと、ずっと好きでしたよ。」
もう少しかっこいい言葉から入るべきなんだろうが、そう言うのは私はだめだ。
だが、サラさんからちょっと以外な言葉が出てきた。
「そうですか…」
あれ?やっぱり、直球すぎた?
「私だけじゃなかったんですね~。この想い。あなたと同じだったなんて、もうちょっと早く聞いてみればよかったんですね~。」
なんと、実は両想いだったんだ。
「私もですよ。サラさん。」
心の中は相当動揺してるが、参謀役としてこういう時は冷静さを振る舞うよう訓練されている。
「まんまとやられましたね~、エレナとリチャードさんには。」
「いまごろ、どこかでみてるんじゃないですかね?」
「そうですよね~。でもお返しに、今度はあの2人を引っ付けてやらないといけない気がします~。」
うん、そうだ。あの2人はどうみてもお似合いだ。今は自覚してるかどうかはわからないが、時間の問題だろう。
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ようやく策士としてのロバートが本気を出したようだ。こちらの思惑通り、作戦成功だ。
あの時、我々の爆撃を邪魔したお返しだ。せいぜい幸せになりやがれ。
「うまくいったな。これでもう大丈夫だろう。」
「そうね。」
「お礼にスイーツ、だっけか?おごるよ。」
「そうね。」
「どこの店に行きたい?」
「そうね。できれば、スイーツだけじゃなくて、もっとあなたといたいわね。」
ありゃ、こっちまで本気になってきたぞ?
と言うわけで、私とエレナも付き合うことになってしまった。
これ、奴は策にはまったフリをして、実は奴の策にはめられたのではなかろうか?




