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姫と貴族と世直し騒動 3

「ひ…姫君だなんて、だ…誰のことですか…」


いきなり降りてきて急に正体を話し出す私に動揺したようだ。


また周りの見張り役もいきなり正体をしゃべってしまったものだから、おそらくお怒り状態だろう。


だが、事態が事態、一刻を争う。とにかく、おキヨ殿も見張り役も店主にも、話を聞いてもらう。


そこで先ほど私が聞いた「世直し」の話をした。ちょうどそのタイミングでメールにて不審船の情報が入ってきた。


サカエの沖にある島の影に、大型の船舶9隻を確認。あの計画の話にぴたりと合致する船だ。


3日後にこのサカエの街は火の海になる…その事実にこの場の人たちは凍り付いた。


「え…えらいことです。すぐにサカエの人々に知らせないと。」

「いや、たった一つだけ計画を未然に防ぐ方法があります。」


それは、駆逐艦3隻をこの運河の入り口に配置することだ。


我々は攻撃していない船舶に対して先制攻撃をかけることが禁じられている。このため、今あの島にいる船を直接攻撃することができない。


だが、駆逐艦を3隻もこの街の上空に浮かべることは、特にこの街を取り仕切る為政者の許可なく行うことはできれば避けたい。


というのも、無断で艦船を領土内に入れることは「威嚇行為」となるからだ。


後々の交渉のことを考えても、できれば避けたい。


この街の為政者といえば、もちろんタイコウ様だ。


わずか3日のうちに、タイコウ様に駆逐艦の領土内進入を許可してもらわないといけない。


正直、側近に取り入ってお伺いを立ててもらってる場合ではない。


しばらく黙って聞いていた姫君。ようやく口を開いた。


「父上に相談しましょう。」


そんな話を信じてもらえるわけがないという見張り役のリーダー格の人に、姫君は続けた。


「サカエの街の人々を死なせるわけにはいきません。私の茶屋の大事なお客ではありませんか。」


ずいぶんとスケールの小さな理由だが、でもまあ間違ったことは言っていない。


すぐさま、姫君の父上のいる上屋敷に向かうことになった。


なんと、私も同行することになった。


こんな話、まずにわかには信じてもらえない。


そうなると、私の持つ怪しい道具を使って説得するしかないという。


確かに動画や写真、島の位置等も私の持っている端末を使った方が早くてわかりやすい。


しかし、いきなりダイミョウに謁見してもいいのか?ちょっと不安になってきた。


だが、私とて貴族。身分の上では負けてはいない。


騎士殿には駆逐艦にて待機してもらい、何かあったら無線で知らせることとした。私は姫君とともに上屋敷に向う。


さて、上屋敷とはダイミョウの都における住居で、もっともタイコウの居城に近い位置にあるお屋敷なんだそうな。


たまたまこのサカエを訪れていたおキヨ殿の父である殿様、早速私と面会してくれることになった。


ありがたい話だが、やはり緊張する。交渉官ならいざ知らず、私は調査官だ。折衝・交渉ごとに関する教練は受けていない。


しかし事態は深刻、できるだけ無許可な艦船の出動を招きたくない。これは文官として当然の心得である。


広間に通されたが、椅子もなくまっ平な空間。ああ、これは”正座”というやつをするんですかね?


あまり長いこと座っていると、足がしびれてきてしまう…などと思っていると、おキヨさんと殿様、そしてもう一人女性の方が入ってきた。


「そなたがおキヨの言う、ほかの星からやってきたという者か?」

「その通りです。夜分に申し訳ありません。火急の用件で参りました。」

「おキヨから話を聞いている。それに、そなたの持ち込んだ動画とやらが見られる機械も、見せてもらっている。」


ああ、あの動画プレーヤー、既にここに持ち込んでいたんだ。ならば、話が早い。


「そなたの話、本当であろうな?このサカエの街をひっくり返すほどの大ごとになりかねないその話、証明するものがないと上様には信じてもらえないであろうな。」

「それに関しては、まずこの上空からの写真、そしてその場所を示した地図、これらを後ほど紙でお渡しいたします。」


今はまだ端末の画像でしか出せない。今プリントアウトしてもらっている。


「なるほど、あとはその場にだれか向かわせればはっきりするな。」


そこで殿様はそばの家臣になにやら話していた。


「こういうのはまずブギョウに届けるのが先決。まずはその話の真偽を確かめねばな。ところで…」


少し前のめりになり、殿様が近づいて言った。


「ダイミョウの後ろだてというのが気になる。どのダイミョウかわからぬか?」

「さあ…私もそこまでは。おそらく計画が露呈した場合のことを考えて、手下にも伏せているのかもしれません。」

「せめて、その黒幕がわかるとよいのだが。ここでこの陰謀を食い止めたところで、このままでは次の手を打ってくるかもしれんぞ。」


といっても、私はこの国の政治形態について知ったばかり。ダイミョウ家の人も、お会いしたのはあなたが初めてです。


せめて会ってみれば、どういう人物かがわかり、それで伝わるかもしれないんだけどなぁ…


「少し難しいかもしれませんが、その黒幕に会見することができるかもしれません。」


突然、私は提案してみた。


「なんじゃと!?黒幕と会う!?どうすのだ?」

「私に接触してきた「世直し」のものに、そのダイミョウの殿様に謁見したいと申し出るのです。」


タダでは合わせてもらえないだろうから、信頼してもらうだけの何かを準備する。具体的には、逃亡用の船を見せるなどしておびき寄せ、その姿を拝見する。


といっても、おそらく会えるのは暗い場所で、しかも覆面をかぶった状態。あのアニメでの黒幕役は、そんな感じで部下に指示していた。


だがこちらは電子装備で対抗する。暗視カメラに集音マイク、上空からの追跡、ありとあらゆる手段を使ってその黒幕を暴く。


いろいろとこの後の手はずを打ち合わせたのち、私は上屋敷を出た。足は…やはりしびれていた。


これからが忙しくなる。私は騎士殿を呼び寄せて駆逐艦「スルメイカ」に戻った。

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