姫と貴族と世直し騒動 2
翌日、我々はいろいろなものをこのお忍び茶屋に持ち込んだ。
もちろん、この姫君…じゃない、看板娘さんへのプレゼントだ。
持ち込んだものは、この宇宙に関する説明用動画がが大量に入った動画プレーヤーと電源用の太陽電池パネル。プラスチック容器に高価な銀食器、戦艦内にある高級菓子店のカスティーラというお菓子。
プラスチック容器とはまたなんとも安っぽいものを持ち込んだものだが、我々の惑星が49年前に発見された際、地上に降りた調査官が持ち込んだプラスチック製の箱のあまりの不思議さに惹かれた貴族が、これを大変気に入ってその後の交渉が進んだという話がある。
単に貢ぎ物用の容器だったらしいが、軽くてしなやか、透明で色とりどりなところが目をひいたらしい。
そんな故事にあやかって持ってきたが、見張りの方々の事前チェックではあまり目をひかなかった。むしろ、お菓子や銀食器、そして動画プレーヤーに関心が向いていた。
で、姫君…じゃない、おキヨさんは銀食器ではなく、やはりプラスチック容器に目がいった。
「なんですか?この綺麗な透き通った箱は!?」
やはり見る人がみると、この不思議さが気になるらしい。
その他のものも合わせて説明し、最後に動画プレーヤーをお見せした。
ここには、宇宙での常識といえるものが分かりやすく説明された選りすぐりの動画が集約されている。連合・連盟のこと、艦隊や艦船のこと、我々に扱う交易品や、供与される技術について、いろいろだ。
もっと多機能な端末もあるが、まだ通信インフラが整っていない場所では使えないし、操作が複雑なので使いこなせない。その点このプレーヤーはそういう異文化向けを想定した、誰でもすぐに使える簡単なインターフェースで構成されたプレーヤーだ。
銀食器を除き、どれもこの惑星では手に入らないものばかり。しかし銀食器なんてチョイスしたやつは誰なんだ?高級品には違いないが、珍しいものではない。
「このカスティーラというお菓子は、この店でも出したいですね。食感がたまりません。」
「またお持ちいたします。お店で売るか、お召しになるかはご自由にしてください。」
多分、この姫君が全て食べてしまうんだろうが。
こんな調子で、お土産を持ち込んではサカエに関する情報を聞いたりして、4日ほど通った。
5日目の帰り道。騎士殿は先に複座機に戻ったが、私は帰り際に見張り役の人と喋っていたため、少し遅れて戻っていった。
もうすぐでサカエの街の外というところで、3、4人に囲まれた。
姫君の見張りではない。なんだこいつらは?
1人が言った。
「こっちにきてもらいたい。」
「なんだ?あなた方は。私を殺すつもりか?」
「返答次第ではそうなるが、今は殺しはしない。きてもらおう。」
何やら怪しい集団だ。ブギョウという、ここの警察・裁判組織のものか?それにしてはちょっとおかしい。
ちょっと離れたところにある小さな小屋に連れていかれた。
「きたか!」
中にはいかにもローニンと言った格好の男が鎮座している。
「あんた、この国の者じゃないだろ?」
そのリーダー格の男が言った。
「そうだが。」
私は短く答えた。
「てことは、この国に交易を求めるつもりだろう。」
「そのつもりだ。」
「だったら話が早い。俺らの謀に手をかさねえか?」
リーダー格はべらべらと私を呼んだことについて話した。その内容は、衝撃的なものだった。
彼らは「世直し」を標榜する集団で、とあるダイミョウの後ろ立てで動いてるそうだ。
そのm「世直し」をついに行うそうだ。
この街には、大きく3本の運河が通っている。元々は湿地帯だったこの地を整備しできた川だが、今は物流のために使われている。
ここに大きな船を3隻づつ並べ、その船から一斉に火矢と大砲でサカエの街を攻撃する。
その混乱に乗じ、テンシ様を連れ出してタイコウを「賊臣」に仕立て上げる。
すでに船の用意はできており、計画は3日後に実行されるとのこと。
つまり、これはテロの計画だ。
実行されたところで、この手のテロは成就しない。だが、多くの人命が殺されることは必然。
「で?私に何をしろと?」
「テンシ様を連れ出したら、まずは遠くに逃げたい。できれば国外がいい。そこでお前らにかくまってもらいたい。」
成功した暁には、交易の自由と租税免除を約束してくれるそうだ。
我々のことは一昨日見かけたらしいが、毎日同じ時間に通っているところを見て、交易の訴えをし続けては退けられてる、と思われれるらしい。
ある意味間違ってはいないが、まだ姫君に美味しいお菓子を届けて情報を得ている段階。まだ退けられるなどというところまで行ってはいない。
それにしても、提示された条件は我々の希望するところではない。あくまで我々はこの星の全ての勢力との同盟であって、国家転覆を図る集団との結託など論外である。
だが、ここで断ると私を殺すつもりのようだ。私はバリアなどを駆使して逃げ切れるが、その騒ぎが元で計画を前出しされてはたまらない。
「なるほど、我々にとっても良い提案。早速、本国に連絡しよう。」
計画に乗ったふりをしておいた。3日後にその逃亡用の船舶を運河の入り口に待機させるよう約束をした。
そんな約束を守るつもりなどないが、その場はそれで立ち去った。
一旦複座機に戻り飛び立ったが、途中騎士殿に今の話をして、もう一度サカエの街に引き返してもらった。
この時、上空の駆逐艦に大きな船舶がないかを探してもらうよう要請した。
時間がないので、茶屋のすぐそばに着地してもらう。見張りと通行人、そしてあの姫君が驚いてこちらを見ていた。
ちょうど日も暮れて、姫君は店ののれんを下ろしているところだった。そんなところに見たこともない機体が舞い降りてきたのだ。
もっとも、姫君は動画でこの機体の存在は知っている。ただ実物を見るのは初めて。
何事かという顔の姫君に向かって、私は言った。
「あなたをダイミョウ家の姫君様と頼って、お願いがございます。」




