失恋公務員と気弱パイロットと駆逐艦 8
1万隻の艦船と合流した。
300隻でも結構な数だが、1万隻というと周りは無数の駆逐艦に囲まれた感じになる。
我々は慣れているが、こちらの惑星の方々はやはり驚いたようだ。
今回の戦闘は1000隻単位、しかし1万隻の撃ち合いでないだけましだったという我々の説明に、この星の政府関係者や軍事担当者はこの先の軍備増強の必要性を痛感したようだ。
一方、こちらの公務員様はやっと暑苦しい船外服を脱げてご満悦だ。
だが、私は心配になった。
さっきは切羽詰まった状況で思わず勢いで求婚してしまったが、今は後悔してるんじゃないか?
ところがアカリさんは全く後悔などしている様子はなし。
「これだけ言いたい放題いっても動じない男だから、好きになったのよ。」
結婚を申し込んだ理由がこれらしい。全く、私のことをなんだと思ってるんだか…でも、最高の笑顔が見られたから、よしとしよう。
散々砲火を浴びせ浴びせられた我が艦「メンチカツ」は、戦艦にて補給を受けることになった。
ここでようやく、アカリさんと至福のひと時を過ごすことができた。
で、その夜はどうなったかというと…それは秘密だ。
さて、この戦闘が終わって3ヶ月経ったある日。
新しくこの町の外に宇宙港が完成した。
その横には空港があり、鉄道も走っている。
それまでは閑静な空港だったようだが、いきなり便が増加、拡張工事が行われることに決まった。
もっとも、我々の技術が取り込まれれば、この星の航空機も垂直離着陸が可能となる。そんなに広い空港でなくてもよくなるはずだ。
おっと、私とアカリさんだが、この宇宙港の横に建設中の街に暮らすことが決まっている。
私はこの星の駐留艦隊の一員として赴任し、彼女は町役場の出張所に勤務することになる。
なお、彼女の元彼はまだ役場に勤務しているが、かなり立場は苦しくなっているようだ。こればかりは自業自得なところもあるので、どうしようもない。
今は二人で結婚式をどうするかを思案しているところだ。
駆逐艦メンチカツ乗員全員と、町役場の皆さん、これだけの人数をさばける式場というのがなくて困っていたら、町長殿から思わぬ提案があった。
「役場を使えばいいじゃないか。」
ついでに「メンチカツ」も着陸させて盛大にやろうということになった。役場はともかく、駆逐艦をこんなことに使っていいのか?
式まであと2ヶ月。相変わらずどぎつい言葉を時々浴びせられながら、今は彼女と一緒に町中の仮住まいで暮らしている。
あの夜に彼女を助け、続いて2人揃って命の危険にさらされるという体験を乗り切った2人。
そんな苦難がもたらしたこの2人の生活、その分幸せに変えていこうと今は思う。
(第3話 完)