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遭難艦と鉄道と天使 6

胃の痛い交渉を目の当たりにして疲れ切ってしまった。


隊長を港に送り、ロングボウに帰還した。


が、すでにロングボウは戦艦内の修復用ドックに入り、我々は戦艦の格納庫に着艦した。


戦艦内で我々は艦長に会い、先の交渉の一部始終を報告。


すぐさま、戦艦内の文官殿、戦艦の艦長に報告することになった。


交渉は交渉官が引き継ぐにせよ、まずは明日持っていく貢物だ。


彼女はカスティーラでいいんじゃないかくらいに考えていたが、巨大な帝国の陛下相手にそれはあまりにもしょぼい。


こういう国家の首長向けの贈り物いうのはすでに決められてるようで、地球303の政府か連合本部へ打診する必要がある。


で、本国へ打診した結果、7日ほどで届くそうだ。


ということで、陛下への贈り物は帝国軍が帝都に着くまでに用意することとし、ここはまず将軍様へ陛下へのとりなしを頼む上で贈り物を贈ろうということになった。


戦艦内の街にあるショッピングモールで、とにかく高価そうなガラス工芸品、高級食材、甘いものもあったほうがいいというロサ殿の意見も入れて、カスティーラも贈ることになった。


ばたばたと事後処理に明け暮れて、救援が到着したことをすっかり忘れるところだった。


さて、救援隊が3日半もかかって到着した理由を知った。


ロングボウがワープしたあと、1時間ほどで戦闘は終了。だがその直後に敵の増援艦隊が現れた。


こちらも増援を要請、2万隻同士のにらみ合いが2日半続いた。


交渉の末、監視部隊のみ残して両陣営とも同時にこの空域から撤退することで合意。3日目でようやく戦闘終結となった。


で、やっと小隊がロングボウの残したワープ先の情報を頼りにこの空域に到着。この地球型惑星から救難信号が発せられているのは確認したため、惑星に接近。


そこでエネルギー波を検出。あの未臨界砲撃の際に出たやつだ。


あの砲撃のおかげで発見が早まったわけだが、一方で地上で砲撃が行われるなど、尋常ではない事態に小隊全艦を降下させたというわけだ。


戦艦が大気圏内にあまり止まるのはよろしくない。浮いているだけで莫大なエネルギーを消費するので、惑星軌道上で待機することとなった。


同様に、小隊の大半は軌道上待機となり、地上には10隻ほどを残すのみ。


もちろん、ドック入りしているロングボウも軌道上にある。修理には1週間かかるそうだ。


だが、私とロスアーナ軍曹はこの惑星上に置いていかれた。今は駆逐艦 1104号艦に移乗した。


あまりにこの地上の人々と関わりすぎたため、当面この惑星に残留が命じられたわけだ。


なにせ、今日は再び将軍様に謁見することになっている。


またまたあの陣地に降り立ち、将軍様と再会。


戦艦内の街にあるショッピングモールで買ってきたものばかりだが、ガラス工芸品に食器、保存食材、そしてカスティーラ。


カスティーラと紅茶に気を良くした将軍様。帰還の途中に皇帝陛下への貢物を受け渡すことを約束して、会見を終えた。


その日の午後に、帝国軍撤退開始。


さて、帝国ばかりを贔屓にするわけにはいかない、今度は鉄の王国だ。


子爵様にとりついでいただき、国王陛下へ当座の贈り物を行う。こちらも、正式版は後日。


遭難状態の時に比べれば気は楽だが、忙しくなった。早く正規の交渉官に引き継ぎしたい。


ロサ殿と行動をともにする機会が増えた、というか、ここ4日間はべったりだ。


いつしかエンドレスラジオなトークにも慣れ、いろいろな話もした。


さて、その後は国王に貢物を献上しに出向いたり、帝国の皇帝陛下とも謁見したり、引き継ぐまでに実に1ヶ月ほどを要し、ようやく解放。


その間にもこの星は、正式に連合側の「地球737」として登録された。


交渉官としての役目は終わったが、私もロサ殿も、結局その後は修理の終わったロングボウとともに駐留艦隊の一員として残ることとなった。


ところで、実は、彼女と結婚してしまった。


そう、あの悪魔のエンドレスラジオな天使、ロスアーナ殿は我が妻となった。


ある日、子爵様に呼ばれて参加した晩餐会ですっかり酔ってしまった私は、酔った勢いで告白。


巧みな言葉遣いと何事にも動じないロサ殿は、この時ばかりは動揺したが、この時は私の交渉術が優ったようだ。結婚承諾を取り付けることに成功した。


王国のそばに宇宙港と街が建設され、今はその街の小さな家で2人暮らしている。


ちなみにあの鉄道は街のちょうどど真ん中を通っており、街までの人の輸送にも使われている。


遭難がきっかけで、彼女と一緒に築いた人の繋がり。遭難がもたらした未知の線路の上を、今もまだ走り続けている。

(第2話 完)

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