表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/144

本好き貴族と城好き大尉と強盗団 1

私の名はアルフレッド。地球(アース)291出身で、遠征艦隊では小隊付の作戦参謀をしていた。現在は地球(アース)755に駐留し、戦術・戦略・用兵に関する講師をするため、宇宙港のそばに作られた街に暮らしている。ここに来て、かれこれ3年が経った。


一度、この星に来たばかりのころに連盟艦隊との戦闘を経験したが、その後は平穏な日々を過ごしていた。平日の夜などには、この街中で同じ講師をしている友人や、生徒であるこの星の人々と飲みに行ったりすることはあるが、基本的には独身貴族を謳歌している。


そろそろ身を固めてはどうかと本星の親からもメールで言われるけれども、これといっていい相手がいない。


さて、そんな私には一つの趣味がある。


それは「城巡り」。


この星の文化レベルは2で、いわゆる典型的な中世型の都市や街が存在する場所。もちろん、石造りの城もたくさんある。


実は私の生まれた惑星には、城はほとんどない。かつてあったのだが、私が生まれるずっと前に、古いものを壊して新しいものに置き換えようという運動が起こったらしく、その影響で歴史あるものが極端に少ない星になってしまった。


おかげでこの星に来て城や砦といった建物に興味を持ってしまった。ここではまだ、これらの建物は現役で使われている。


しかし、まだ使われている城が多くて、中に入れてもらえるところがない。外から眺めるしかない。


ところで、我々はこの星の経済活性化のために、この星の人を使用人を雇うことが推奨されている。


私は自宅として、一人用としては少々大きい2階建の家を貰い受けそこで暮らしている。これは要するに、うちの政府は誰かを住み込みで雇うか、独り身でいるなということを勧めているようだ。


だが、掃除・炊事・洗濯用のロボットを買ったし、一人で暮らしていて不便を感じない。このため、わざわざ誰かを雇う理由がない。私自身、あまり人付き合いが得意ではないため、結局誰も雇わずに今まで過ごして来てしまった。


だが、城巡りするにせよ、平日家に帰った後にせよ、一人寂しく過ごすのがなんだかちょっと虚しくなってきたので、急に話し相手を雇ってみるかと思い立ち、紹介所に立ち寄った。


しかしそういう要望に答えられる人物というのはほとんどいない。大抵は子育て支援や家事手伝いを望むため、そういう人を多く登録しているとのこと。


だが、1人だけ話し相手に良さそうな人がいると言われた。


その人は伯爵家の娘で、この紹介所に登録されてはいるものの、できることといえば本を読むくらいということで、まるで雇ってくれる人が現れない。そんな人ならいるが、どうだと聞かれた。


でも、伯爵家といえばそれなりの貴族。うちの生徒でも男爵や子爵ばかりだというのに、それをも凌駕するほどの身分の貴族の娘が、どうして使用人登録なんてしているのか?


聞けば、両親を流行病で亡くし独り身になってしまったそうで、元々小さな地方の王国の貴族だけに領地も乏しく、あっという間に没落したそうだ。家財を売ってなんとか暮らしているような状態らしく、今はこの街の外にある現地民用の街の一角にある借家に住んでるそうだ。


「伯爵家ってことは、もしかして城を持ってたりします?」

「普通は持ってはいるだろうよ、伯爵だからね。でもきっとそんな状態だから、廃城寸前で放置されてると思うよ。」


とは言われたものの、城を持ってると聞いてすぐにOKを出した。


彼女の名はナポリタン。なんだ?そのスパゲティのような名前は?と思ったが、正式名がナポリターナ・ド・ミゼラルク…長すぎてとても覚えられない名前だ。だから縮めて「ナポリタン」。


このスパゲティのような名前の貴族の娘とは、翌日に会うことになった。


だが、一つ気になることを言われた。


彼女、住み込み希望だそうだ。なんでも、今の借家を追い出される寸前らしい。


「いや、見ず知らずの男女が同じ屋根の下暮らすのはまずいでしょう。」

「はあ?普通だよ、そんなの。あんたのような旦那は大抵ひとりで2階建の家持ってるだろ?持て余してる人が多いから、空き部屋に住まわせるなんざ普通だって。」


と言われてしまったので、彼女を受け入れることにしてしまった。


しかし冷静に考えてみれば、城を持ってる貴族の娘が”住み込み希望”なんて普通出さないよな?ということは、城持ちという可能性は極めて低いってことじゃないのか?


まあそれでも、話し相手が欲しいという理由で紹介所にいったわけではないのだから、それでもいいかと自分に言い聞かせ、その日は寝た。


翌、土曜日。早速そのナポリタンさんを迎えに行った。


紹介所のロビーに、彼女はいた。


彼女の後ろ姿を見た瞬間、なぜだかとても特別なことが起こるような、そんな出会いを予感した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ