再会
ムカ娘回です。
「どうしたんだ突然?」
座敷の上座に座り、田中がムカ娘に問いかける。
荒神に言われて急いで帰って来てみたら、荒神がムカ娘にお抹茶でもてなしていたから驚いた。
何故かムカ娘が、世界の壁を越え俺の結界を破ってこの城に来ていたんだ。
驚かないはずがない。
いかに北の幹部とはいえ、俺の結界を見破るどころか、破って侵入してくるとは想定外だ。
それ以前に、この広大な砂漠の中からよく俺の居城を探り当てたものだ。
もう少し、結界を強力にしておいた方が良さそうだな。
「あら、それはあんまりなお言葉ですね……折角、タナカ様に言われた虫達を集めてこうして助力に馳せ参じたというのに」
ムカ娘が頬を膨らませてそっぽを向く。
とはいえ、ムカ娘が頬を膨らますとその顎が大きく開かれるため、威嚇行動にしか見えないのだがそれは言わぬが華だろう。
荒神の横に座ったブルータスの様子がおかしいのも、この際見ないふりをしておこう。
「ほお、揃ったか!」
ムカ娘の言葉に、つい前のめりになってしまう。
その俺の様子を見て、ムカ娘がクスリと笑う。
色々と残念な仕様だが、まあ顔はそこそこ美人だと思う。
ただ、ちょっと目と顎がなー……それから下半身は問題外だが。
第二形態になれば、まだマシになるがそうなったら下半身はただの百足だし……
「ふふっ、喜んで頂けて何よりですわ! 甲虫を数種、約1000匹、蝶と蛾を数種約2000匹、それから蜻蛉や、蜻蛉、蟋蟀に、鈴虫、蝉、蟻、蜂類など他この地に似合いそうな眷族を多数引き連れて参りました……さあ、お前たち新たな地へと旅立ちなさい」
そう言うやいなや、ムカ娘の身体から大量の虫が飛び立っていく。
さすがに、数匹単位で見れば風情を感じても、数万匹の虫が蠢く姿は気持ち悪い。
幼虫も連れてきているようで、地を張って森に向かっていく姿は流石に受け入れがたい。
とはいえ、こちらからの要望だ……ここは平静を装って威厳を保たねば。
「素晴らしい……これで一層、この森も映える事になるだろう。感謝する」
「いえ、我が君の為ですわ! このくらい何てことありませぬ。ただ、蜂や甲虫、蟻はともかく強化しても戦闘に向かない虫までこんなに集めて何を行うつもりで?」
ムカ娘の疑問は当然だろう。
俺は、この地に中野を倒しに来たはずだというのに、その配下に欲したのはただの虫だ。
魔力も持たない虫ばかり集めても、中野に対して何の抑止力にもならない。
それでも、こんなに虫を集めた理由は単純だ。
「俺は、この地を俺の故郷のようにしようと思っている」
この言葉に、南条さんが呆れたような視線を送って来るが、特に気にしない。
現に彼女もこの地を凄く気に入っているのは確かだ。
いずれ、北条さんや、ユウちゃん達も招待したいと思ってはいるが、取り急ぎ中野をなんとかするのが先決だ。
それに、いくら様々な脅威を取り除いたとはいえ、未だに北の世界も不安定なままだしな。
聖教会の解体も大分進んではいる様子だが、主だった幹部は雲隠れしており何やら企んでいるようだ。
「それは、タナカ様が北の世界に召喚される前の話ですかえ?」
「ああ、そうだ。俺の故郷はその世界でも四季の移り変わりが特に際立っていてな、他の国も四季はあるのだが、その変化が余りにも彩を変えて美しい景色を作り出していたから、どうせならこの世界に作ってやろうと思ってな……それを演出するのが、お前が連れて来た虫たちだ」
ムカ娘が、目を輝かせてこちらを見つめてくる。
止めてくれ……今のお前の複眼の全てをこちらに向けられると、その視線に射殺されてしまいそうだ。
「それは素敵ですわ! 是非、妾もその景色見とうございます」
「ああ、そうだな。それぞれの季節に催し物を企画して北の魔族を招待しても良いな。取りあえず、今日はお礼に思う存分俺の料理を堪能してもらおう」
「楽しみですわ! 久方ぶりの、タナカ様の手料理……想像しただけで心が満たされます」
俺の料理は万能だからな……むしろ、料理だけであらゆる魔族どころか、人間すらも虜にしてしまう究極のチートだと思う。
もしかすれば、やり方さえ間違えなければ料理だけで世界を平和に出来るかもしれない。
そんな事を想像して、思わず笑みがこぼれそうになるのを必死で堪える。
「ああ、どうせ2~3日はゆっくりしていくんだろ? 良い風呂も用意してあるからな、そっちをまずは楽しんでくれ」
「えっ?」
俺の言葉に、ムカ娘が信じられないものを見るような眼を向けてくる。
ん? どういう事だ?
「風呂を作ったのだが、それがそんなに意外だったか?」
ムカ娘が呆然としたまま、ゆっくりと首を横に振る。
「その前の言葉ですが……2~3日?」
「ああ、お前も北の世界で仕事があるだろ? そんなに長く引き留めるつもりは無いから安心しろ。それとも2~3日は長すぎるか?」
直後、ムカ娘がはらはらと涙を流し始める。
何かマズったか?
「あんまりですわ! あんまりですわ! あんまりですわ! 妾は、もう戻らぬ覚悟でこっちに参ったというのに、タナカ様は2~3日で帰れとおっしゃるのですか!」
「えっ?」
突然のムカ娘の言葉に、今度は俺の方が驚き信じられない言葉を聞いたような反応を取ってしまった。
その反応に対して、ムカ娘は顔を覆ってとうとう飛び出していってしまった。
……えっ?
「なあ、俺いま何か変な事言ったか?」
残った全員に問いかけるが、全員がはて? といった感じで首を傾げる。
そうだよな……いくらなんでも、北の幹部が自分の世界をほっぽりだして中央の世界にいきなり移り住むなんて誰も想像していなかったはずだ。
迷い家が俺の座って居る畳を、軽く揺さぶる。
どうやら、追い掛けろと言っているようだが、追い掛けたところで掛ける言葉が見つからない。
すでに地雷を踏んだらしいのに、ここで追いかけて好意的な言葉を掛けても、突き放すような言葉を掛けてもどっちも不正解にしか思えない。
ムカ娘の突然の大声に、荒神の膝で眠っていた辰子が目を覚ましてこっちをジッと見つめたあと、抱き着いてくる。
「パパ! 帰って来たんだ!」
うん、いまそういう事やってる場合じゃないんだけどね……
無邪気に俺に抱き着いてきた辰子が、今度は俺の膝を枕に目を閉じる。
ただこの中で1人だけ、俺を睨み付ける人物が居た。
いや厳密に言うと人じゃ無いが、そうウララだ。
ウララがこっちをジッと睨んでくる。
その瞳は、何しとんじゃいこのうすらトンカチが! とっとと追いかけんかい! と言われているようで追い詰められてような気持になる。
若干背筋に寒気を感じるような、強烈な威圧を込めた視線に思わず腰を上げてしまう。
「はあ……ちょっと、追いかけてくるわ……」
「あ、はい……逝ってらっしゃいませ」
荒神ですら状況に付いてこれないのか間の抜けた返事をするが、行ってらっしゃいませのニュアンスがどこかおかしいように感じたのは気のせいであって欲しい。
取りあえず、ムカ娘の気配を辿って森を突き進んでいく。
そんなに遠くまでは行けないはずだ。
しばらく歩くと、女性のすすり泣く声が聞こえる。
「まさか、かような戦力にもならぬ虫たちを招待しておいて、妾を呼んでくれないなんて、なんていけずなお方なんですの!」
すすり泣いてるくせに、えらく大きな声でぼやくんだな。
怒っているのか、悲しんでいるのか良く分からないが、ここは声を掛けるべきだろう。
とはいえ、戸惑われる。
ここで突き放したら生涯恨まれそうだし、かといって受け入れるのも北の世界に不安が残る。
それに、ここで受け入れたらなんか色々と後が怖い。
ただでさえ、暴走気味に病んでた女だからな……色々と既成事実を作られ、外堀を埋められいつの間にか八方塞がりという展開も考えられる。
上手い事お引き取り願えないだろうか?
駄目だ……どう考えてもこれは詰む。
まさか、魔族に生まれ変わって最も手ごわい敵が身内に居たなんて。
この人生の中で、最大のピンチだ。
ああ、そうだな……かって著名な詩人であるパイロンも妻に対して「すいぶん敵を持ったけれど、汝のようなものは居ない」と言ったとか言って無いとか……
日本では、面白おかしく「ずいぶん敵を持ったけれど、妻よお前のような奴は初めてだ」という風に結婚にまつわる名言として広まっているが。
それほどまでに、近しい女性というのは時として良くも悪くも、とんでもない衝撃を与えてくる。
その時、小さな手が俺の裾を引っ張る。
「パパどうしたの?」
割と大きな声で、こっちを見上げた辰子が問いかけてくる。
瞬間、ムカ娘がこっちをバッと振り返る。
それから、辰子を俺の顔を交互に見る。
「お嬢ちゃん? いまなんとおっしゃりました?」
青筋を立てたムカ娘がどうにかといった様子で、微笑みながら優しい声で辰子に声を掛ける。
辰子が一瞬ビクッと震えたあとで、俺の陰に隠れる。
「パパ……あの人怖い」
それから震えながら顔だけだして、ムカ娘を指さして俺に訴えかけてくる。
「パッ! パパ? パパとおっしゃりました? という事は、お嬢ちゃんはタナカ様の娘だというのですか?」
凄い勢いで、ムカデの下半身を伸ばして、辰子の目の前に顔を近づけて問い詰める。
「パパー! 助けて! この人怖いよー!」
とうとう辰子が声をあげて泣き出す。
なんという事だろう……確かに俺の娘だし、別にムカ娘と付き合っているわけでも無いのにこの後ろめたさはなんなんだ?
そもそも、ムカ娘って俺の元部下だよな?
なんで、部下にこんなに気を遣わないといけないんだ?
「ああ、大丈夫だ……この人はムカ娘って言ってな。前の俺の部下だった人だ。本当はとっても優しいだよ」
そう言って辰子の頭を優しく撫でながらムカ娘を紹介するが、紹介された当の本人は青い顔をしながらカサカサと……もといヨタヨタと後ずさっていく。
「そ……そんな……北の世界を旅立ってまだ数ヶ月も経っていないというのに、もう新しい女を見つけて、しかも子供まで」
それから大げさにその場に倒れ込む。
何やら盛大な勘違いをしていそうだが、突破口が見えて来たような、余計に状況が悪くなったような……取りあえずこのインパクトで先の俺の発言は無かった事に出来そうだな。
「ああ、紹介しよう……この子は辰子。龍の卵に純粋に俺の魔力を注ぎ込んで、俺が自重せずに能力を与えた俺の子供だ。母親はその卵を産んだ龍になるのだろうが、母龍はすでに居ないし、もともと無精卵で腐る定めだったものに、魂を吹き込んだんだ。実質俺による、俺だけで産んだ子供だな」
あっ! 今度こそ本当に不味ったかも……
ムカ娘が途端に元気になって弾けるような笑顔を、辰子に向けてくる。
「そう、辰子ちゃんって言うのね。ごめんね怖がらせて。大丈夫よ、タナカ様の子供なら私にとっても子供みたいなものですわね」
そう言って、分かりやすい猫撫で声で辰子にすり寄っていく。
今度は違った意味で、辰子が恐怖しているが、ムカ娘はそんな事気にする様子もなく辰子の頭を撫でまくっている。
「本当に可愛いお嬢ちゃんですね。食べちゃいたいくらい」
うん、顎をカチカチならしながそんなセリフを吐いても冗談に聞こえないからな!
というか、何を勝手な事を言っているんだ。
この子は確かに俺の子供みたいなもんだが、お前の子供じゃないぞ?
「ねえ辰子ちゃん? ママが欲しいて思った事無い?」
「ない! パパとウララと、荒神が居れば十分! ママなんか居なくても平気」
身も蓋も無い……無邪気な子供だからなせる業か。
とはいえ、ムカ娘も負けていない。
「そうね、今はそうかもしれないけど、辰子ちゃんは女の子だから、いずれはママにしか相談出来ないような事も出てくるわよ?」
「そうなのパパ?」
辰子が不安そうにこっちを見てくるが、頼むから俺を巻き込まないでくれ。
かといって、このまま辰子とムカ娘にやり取りさせたら、きっとムカ娘の思うつぼだろうな……
「んー、まあ普通はそうかもしれないけどさ……ほら俺がパパなんだぞ? どんな事があっても魔法で助けてやれるさ」
「だって!」
俺の言葉に辰子が嬉しそうな表情を浮かべて、ムカ娘に満面の笑顔を向ける。
俺を信じてやまない辰子に対して、ムカ娘がどういった理論を展開するか楽しみでもあるが。
「まあ、確かにタナカ様ならたとえどのような事があっても、解決してくださるわ! それほどまでに貴方のお父上は素晴らしい方ですのよ! そこは誇っても良い事ですわ」
「だよねー! 辰子のパパは世界一だもんねー!」
ムカ娘の言葉に、辰子が心底嬉しそうにし無い胸を張って自慢する。
「でも……」
しかし、それをムカ娘が慈愛に満ちた表情で遮る。
こんな表情も出来るのか……中々に綺麗だとは思うが、綺麗だと思うがそれでも越えられない種族の壁。
元人間の俺からすれば、どんなに美しくても下半身が百足の女性はちょっとなー……
「でも?」
「パパは世界一でも、辰子ちゃんは女の子だからね……パパに言えばなんとかなる問題でも、女性としてデリケートな問題になって来ると、辰子ちゃんはそれをパパに相談できるかなー?」
なんて意地の悪い顔をしているんだ。
さっきまで、菩薩を思わせる表情を浮かべていた女性と同一人物だとは到底思えない、底意地の悪い笑みを浮かべている。
それから、6本の腕で優しく辰子を抱きあげる。
「きゃっ!」
急に抱き上げられた辰子が思わず小さな悲鳴をあげるが、すぐに心地よさそうにする。
あの腕が反則なんだよなー……俺も何度か膝枕の代わりに抱きかかえて貰った事があるが、その女性らしくしなやかで心地よい柔らかさと弾力を兼ね備えていながらも、しっかりとした力強さを感じる6本の腕で全身を包み込まれると、なんとも言えない安心感を感じる。
だが、厳密に言うと安心感に襲われると言った表現の方が適切かもしれない……
何故なら、その安心感が油断に繋がるからだ。
毎度その顎に襲われそうになり、結局は封印することになったムカ娘最大の奥義【菩薩の抱擁】……俺が勝手にそう呼んでいるだけだが。
「父親は頼りがいと強さ温もりで安心感を与えてくれるものですが……母親は同性でしか感じる事の出来ない絆と、温もり、そして強さで安心感を与えるものですよ。どうですか? 私の愛では物足りませんか?」
負けるな辰子! お前のお父さんは、どんな事だって対応してみせるぞ!
それに、龍人のお前にそんなにデリケートな問題なんて、起きようが無いだろう?
断れ、断るんだ。
「あっ、良い事思いつきましたわ!」
良い事を思いつくな! きっとそれは良い事じゃないから!
「この世界には乳母という存在がありますの。母親の代わりに名家の子供を世話する職業なのですが、まずは私を乳母として傍に置いて、もし辰子ちゃんが私を心から信頼する日が来れば、その時本当の母親になるっていうのはどうかしら?」
母親に昇進する乳母なんて聞いた事が無い!
俺の娘に出鱈目を教えるな!
「お試しお母さんってところかしら?」
全然違うから!
それ乳母じゃないから!
乳母じゃないから!
俺の心の声もむなしく、【菩薩の抱擁】ですでに正常な判断力を奪われている辰子がトロンとした目で、こっちを見てくる。
「それなら良いかな……」
「いや、良くないぞ辰子……しっかりと考えるんだ。お前の親は俺だけで十分じゃないか?」
「それはタナカ様のエゴというものですよ……やはり、幼子には母親の存在は重要ですわ! 特に女の子ですから、美しいレディになる為には男親だけでは難しいかと」
レディという言葉に、トロンとしていた辰子の目がカッと見開かれキラキラしたものに変わる。
そして、その目をムカ娘に向ける。
「お母さんが居たら、美しいレディになれるの?」
「ええ、なれますとも! やはり、女性らしさや女性としての必要な技術は母から学んだ方が良いかと、私は思いますわ」
「じゃあさ、美しいレディになったらパパと結婚出来る?」
『えっ? 』
突然の問題発言に、思わず俺もムカ娘もキョトンとする。
が、思わず嬉しさと可笑しさが込み上げてきて、声を上げて笑ってしまった。
「ああ、こんなに可愛い子だったらパパも是非お嫁さんにしたいな。でもな辰子、どこの世界も親子で結婚は出来ないんだぞ?」
そう言って辰子の頭をワシャワシャと撫でてやると、ムカ娘から辰子を受け取り抱き上げる。
「でも、きっとパパより素敵な男性と出会えるからな。その時までしっかりと育ってくれよ、俺の可愛いお姫様」
そう言って頬ずりすると、辰子が擽ったそうに眼を細める。
「なら、その素敵な男性を射止める為にも、是非母親が必要ですわね」
食い下がるなー……しかしまあ、今の俺は非常に気分が良い。
辰子が良いなら、ムカ娘を受け入れても良いかと思えてきたが、とはいえ辰子の乳母にするのは色々と危険だからな。
取りあえずは、従者という立場なら検討しよう。
「うーん、パパと結婚出来ないなら、せめて大きくなるまでは少しでもパパと一緒に居たいなー……だからお母さんは要らない!」
「はっはっは! 振られたなムカ娘! 諦めろ!」
「キー! 悔しいですわ! どうしてタナカ様は、そんなに素敵過ぎるのですか? しかも男手一つで、子供をこれだけ立派に育てるとか、どれほど女性に取って壁が高いのですか!」
ムカ娘が何やら騒いでいるが、どうやら元気も出たようで一安心だな。
「でも、ムカ娘さんも嫌いじゃないよ! その腕、とっても気持ち良かったし……なんだか、パパに抱かれてるみたいで凄く暖かくて……でも優しくて……また抱っこしてくれる?」
そう言って辰子が上目遣いでムカ娘を見つめると、ボンッと言う音がしてムカ娘の顔が真っ赤になって頭から湯気が出ているような錯覚に陥る。
「そうか……じゃあ、ムカ娘にはこれからも定期的に来て貰わないとな! なあ、ムカ娘、正直お前までこっちに来ると北の戦力が心配で中央での仕事が捗らないんだ。少しでも早く北の魔族達も招待したいからな……お前はあっちで防衛と魔王の補佐をしっかり務めてくれないか?」
「はあ……タナカ様のおっしゃる事は分かりました……でも、妾ももっとタナカ様の傍におりとうございます」
「なら、早くそうなる為にも、余計にあっちの憂いを取り除いてくれないか? そうすれば、こっちを手伝ってもらうのも吝かじゃないからさ」
俺の言葉に、ムカ娘が完全に諦めた様子で頷く。
どうにかなった。
―――――――――
それから数日後
「辰子ちゃーん! 今日も来ましたわよ!」
確かに定期的にとは言ったけどさ……毎日は来すぎじゃないか?
「ムカ娘小母ちゃん! いらっしゃい! 今日は何して遊ぶの?」
結局、取りあえずは小母というポジションに落ち着いたらしい。
あと、何やら北の世界でウロ子が荒れているとか居ないとか、不穏な噂も聞いているが俺は何も知らない。
知りたくない……
次回より、また侵攻編に戻ります。
日常を挟みながら、まったり進めます。
ブクマ、評価、感想頂けると幸せです。