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魔王に転生したけど人間に嫌われ過ぎて辛い  作者: へたまろ
最終章:最終決戦!神と魔神

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中野VS全魔族&全人類? いいえ田中の独壇場です(食事回)

「これは不味い……いまここで魔族を作り出すには分が悪すぎる。

 確実に田中かその分身達に邪魔されるだろう。

 どうにかこの場を斬り抜けて……いや、逃げ場が無い。

 どこに逃げても確実に追い詰められる。

 他の世界……完全にこことは異なる世界に転移するべきか?

 他の世界への転移は不完全だから、どこに飛ばされるのかという不安はある。

 だが、例えそこが死の星だろうが、滅びた世界だろうが僕なら1からやり直せる。

 そうだな……もはやこの世界に僕の家族(魔族)は居ないんだ。

 

 だったら、他の世界で1から始めるのも悪くない。

 あとは、どうやって奴等の気を反らせるか……

 この転移には、準備に最低でも3分は居る。

 失敗したら、次元の狭間に飛ばされて脱出に数百年はかかるしな。

 いや、今なら数十年でいけるかもしれない。

 前回地球に戻ろうとして、失敗した時は焦った。

 

 そういえば、あの時はキタとイエヤスが助けに来てくれたんだっけ?」

「勝手に人の心を読むな!」


 等身大の語り口調で、中野の心情を説明したらいきなり攻撃された。

 酷いじゃないか。


 中野の手から放たれたのは、燃え盛る炎。

 ただし、色は黒い。


 いわゆる地獄の炎ってやつだろう。

 当然の如く、俺の魔法障壁によって阻まれるが。


「その程度の魔法、俺に効かない事くらい分かっているだろう? ついでに、炎に隠して放った対魔族用の捕縛網も消しておいたから」

「猪口才な!」


 普通の攻撃が俺に効かないのは当然中野も知っている。

 だから、魔法に隠して物理的に魔族の力を弱める網を仕掛けていたようだ。

 

 そもそもそう言った、ジャマー系の効果も完全状態異常無効によって消される。

 すなわち、中野が俺を倒すのは実質不可能。


 というか、この出鱈目な身体を壊せる存在っているのかな?

 基本的に完全状態異常無効って成長するし。

 スキル奪取系にも対応しちゃったしね。

 

 老化もしないし……

 俺って死ねない身体?

 いや、死ぬ方法は無きにしもあらず。


 それはだな……ダメだ今は思いつかない。


 先ほどから中野が色々なアイテムを試しているけど。

 

 魔法障壁や物理障壁を消し去る、光る玉とか。

 バフを全て打ち消す、凍てつきそうな波動とか。

 

 一瞬魔法障壁が消え去ったが、すぐに復活する。

 その隙を狙って攻撃をしかけても、完全状態異常無効に阻まれる。

 

 この状態なのに、超速再生まで持ってるとか。

 こんなのがRPGのラスボスで出てきたら、間違いなくコントローラーテレビにぶつけるわ。


「ドッカーン! バキバキバキ! ビリリリリ! チュドーン! シュイーン! チュン! ぐはっ! ドゴゴゴゴゴーン! ダンダン! ピキピキピキ! シュンシュンシュン! バリバリパリーン! !ズドドドドド! バガアーン! がはっ! ドゴン! コロコロコロ!」

「なんだいきなり、アホな子供みたいなことを言い出して? おかしくなった……いや、田中の事だ嫌な予感が」


 俺が口で子供のバトルごっこに言葉にしそうな擬音を、大声で子供っぽく叫ぶと中野が一瞬呆けたあとすぐに何かを警戒する。

 流石中野。

 俺の事を分かっている。


 次の瞬間中野が立っていた場所が爆発し、中野は背後の壁を破壊しながら後ろに吹っ飛ばされる。

 そして止まった場所で感電し、爆発し空高く打ちあげられる。

 中野の向かった先に光が収縮し球状になると、そこから眩い光線が放たれると中野の胸を貫く。


「ぐはっ!」


 と同時に降り注ぐ、黒い稲妻。

 地面に叩きつけられた中野は、ダンダンと音を立てながら2回ほど弾んだあと地面から伸びる氷に閉じ込められる。

 そこに上空の光の玉からさらに音を立てながら罅を入れるそれは、弾けた瞬間にそれぞれの破片から光を放ち中野の居る場所へ集中する。

 それらがぶつかった瞬間に、激しい光の奔流とともに中野がさらに吹き飛ぶ。


「がはっ!」


 最後は光の玉がそのまま中野の腹に、振って来る。

 そのまま地面を転がっていく中野。

 白目を剥いて、口から煙を出しながら。


「ふふふ、新魔法【音響効果(サウンドエフェクト)】だ!」

「また、ふざけた魔法を……」

「相手のセリフ込みで展開を作る魔法とか……」

「いや、子供の遊びでしょう?」

 

 マスカーレイドと、セオザラが呆れている気がする。

 ついでに言うと、テキトウエルとひもろぎも。


「くそっ、なんでお前ばっかり……その魔法障壁も、物理障壁も……ふざけた身体も……大魔王の僕にこそふさ……わしい?」


 片膝をついて、頭から血を流した中野が起き上がると周囲を見渡して何やら驚いている。

 中野が起きた場所は、大講堂の檀上の上。

 そこから見下ろした先では、テーブルを並べて食事をする勇者、天使、カインを筆頭に魔族一行。


「いやあ、唐揚げとかマジ久しぶり」

「地方派遣されたときは、わたしのグループのお陰で食べられたけどさ」

「でも、再現度は高いけどあっちの調味料無いから、これほどじゃないけどね」

「うわあ、ファミチキ派だったからこれは嬉しい」

「ていうか、包装紙まで再現するとか少し自重した方が良いんじゃないですか?」


 そんな事を言いながら、舌鼓を打つ勇者達。

 何が起こっている?

 おそらく、中野はいまそんな心境だろう。


「セオザラ様! すいません、私……地元の小料理屋で幼い頃に食べた芋煮が食べたいんですけど。流石に無理ですよね?」

「出来ますよ?【三分調理(キューピー)】!」

「あっ!」


 セオザラにそんなリクエストをした、若い女勇者は目の前にだされた少しくすんだ器に盛られた煮物を見て、言葉を失い……泣き出す。


 器を愛おしそうにさすると、涙をポロポロと流しながらも笑顔でそれを口に運ぶ。


「器まで……懐かしい……でも、ちょっとしょっぱい……うぅ……ありがとう……ありがとう」

「大丈夫か?これを使って」


 そう言ってハンカチを差し出すセオザラ。


「これ……お父さんとお母さんがまだ一緒だったころに、お父さんが珍しくよく1人で飲みにいくお店に連れて行ってくれた時に食べたんです。お母さんの故郷の料理だって……うぅ」

「ふふ、いっぱいあるからたんとお食べ」

「! おかあさん!」


 いつの間にか横に立って頭を撫でながら慰めるひもろぎに、抱き着いて泣き出す女勇者。

 うんうん、ほっこり。


 中野が完全に固まってるけど大丈夫かな?


「一体……どういうことだ? いや、何が……どちらにしろ、こいつら嘗めやがって……このまま、全員ここで……!」


 そこまで言いかけて止まる中野。

 

「お父ちゃん……」

「これ、お袋がよく作ってくれたくっそ不味い肉野菜炒め……はは、こんなに不味いのに……なんで、こんなに心に染みるんだろう……お袋、元気かな?」

「おばあちゃんのおはぎ……いや、そんなバカな……でもアンコたっぷりで、餅の比率がおかしいこれは間違いなく……おばあちゃん。最後に喧嘩しちゃったけど、謝りたいよ」

「くそっ! 焦げ目まで娘が作ってくれたクッキーと一緒だ。忘れない……忘れるわけがない。うっかりチョコクッキーかと言って泣き出した娘を、一生懸命なだめたのは良い思い出だ。あれから8年か……娘ももう中学生くらいか? 日本に……戻りたい……愛元気かな?」

「おかあさん」

「おねえちゃん」


 テーブルのあちらこちら、料理を食べて泣き始める勇者達。

 泣いている勇者の殆どが現地勇者ではなく、召喚や転生勇者達だ。


「ほら、出来たわよ」

「えっ?」


 そう言って、中野の前に差し出されたのはカレーとみそ汁という組み合わせ。

 いや、割と多くの家庭で出される組み合わせかもしれない。


「ふざけるな!」

 

 だが中野はその手を払いのける。

 そして地面に落ちるカレー。


「……そうね。食べたくなんてないよね?」

「えっ! あっ……」


 中野が顔を上げると、そう言って悲しそうな表情を浮かべるテキトウエルが見えた。

 前に一度母親と大喧嘩をしたときに、部屋に籠った中野の為に母親が部屋まで持ってきてくれた料理。

 少し困ったようにでも不安そうにお盆を持って立つ母に、まだ怒りが収まって居なかった中野はその皿を叩き落とした。

 そして、後悔する。

 彼女の泣きそうな表情を見て。


 次の日の朝、なんとなく恥ずかしかったけど普通に挨拶して謝った。


「昨日はごめんなさい」

「ううん、お母さんが悪かったのよ」

「いや……そっちじゃなくて、カレー……美味しかった」

「ふふふ……知ってる」


 その後、母親が寝たのを確認した中野は自分で鍋を温めて、カレーを食べた。

 温かくて、優しくて、ちょっと寂しかった。


「ご……ごめんなさい」

「いいんですよ。私が悪かったですね……突然こんなことして」

「いや……食べ物に罪は無いから」

 

 そう言って、地面に触れていない部分のカレーをスプーンで掬って口に運んでみる。

 あの時のカレーの味だ。


「いや、ちょっと待て! なんだこの茶番は!」


 そこで我に返る中野。


「うん? いや、中野が全然起きないから、先にご飯にしようと思って」

「起きない?」

「ああ、俺の魔法で吹っ飛ばされたお前は、意識を失ってたんだけど?」


 全然記憶にない。

 気分的には、すぐに起き上がったはずだが。


「もう2時間経ってますよ?」

「うそだろ!」


 どうやら、2時間も寝かされて放置されていたらしい。

 

「もう良いんじゃないか?」

「中条!」


 神気を封じられた中条が、普通の恰好をして中野に声を掛けてくる。


「あいつには絶対に勝てないし……というか、俺も死んでスッキリしたというか」

「いや、おかしいだろ! さっきまで殺し合いしてたのに」

「ふふ、美味い飯の前には、争いなんて無駄な事だと気付いてさ」


 中野の背筋に冷たいものが流れる。

 いま田中とのわだかまりを解かなければ、完全に孤立する。

 中条も、神気を解放されても変な事はもう考えないだろうというほどに、顔がスッキリと穏やかなものに変わっている。


 なんだこれは……

 全人類が敵?

 というか、全人類を味方に引き込むとか……

 

 ば……化物め!


 魔族を含めた、全生命体に対する精神支配とか……神の所業じゃないか!

 目の前に広がる、作られた優しい世界は薄ら寒くもあり……異様で恐怖を煽ってくる。

 中野の唇が青ざめ、その表情は白い。

 肩を抱いて、ガタガタと震え始める中野。


「ていっ!」

「痛い! てかなんで痛いんだ!」


 そこに放たれるチョップ。


「失礼な事を考えていただろう? 俺はお前らと違って、精神支配なんて使ってないからな? 純粋に料理の力だからな?」


 そこには、腰に手を当ててこちらを見下ろしてくる田中が。


「ああ、肉団子の入ったカレーを食べて思い出したよ。純粋だったあの頃を……そして思い知ったさ。力での支配は確かに気持ち良かった……でも、あんなに寂しい事は無かったんだな」


 目を赤くしてそんな事を漏らす中条に、中野は何言ってんだこいつといった視線を向ける。


「お前も1人で居る時間が長すぎてこじらせたのは分かるけどさ、少しは素直になれよ」

「くっ! 子供扱いするな」


 中野の頭を撫でる田中の手を、イラついた様子で払いのける。


「やることなすこと幼稚すぎて、子供にしか見えないんだけど?」

「五月蠅い!」

「じゃあ、なんで泣いてるんだお前」

「えっ?」


 自分の頬を流れる涙に、気付いていなかった中野。

 田中の言葉に、ハッとした様子で頬を拭う。


 別に羨ましかったわけじゃない。

 ただ魔族達と、いや皆で楽しく食事をする景色を見て、自分と配下達もこうであったならと思わなかったわけでもない。


 眩しい景色に目をそらして、自分の感情を誤魔化していただけ。

 そんな事には、とっくに気付いていた。

 それを新参者の田中が作り上げた。

 だからこそ……認めたくない。


「認めたくないものだな……自分自身の若さゆえの過ちというものを」

「少しは真面目に出来ないのか? それに、それは自分で吐露するもんだろう」

「ハハハ! やっぱり日本人じゃないか! 良いつっこみだ」

「クソッ!」


 どうあっても勝てない。

 そう思わせる雰囲気が、田中にはある。

 出会った頃から。

 だから焦っていた。

 急いでいた。


『キサマラ! ナニヲナカヨクシテオル! コロシアエ!』


 突如天が割れる。

 そしてそこから姿を徐々に現す強烈な魔力を放つおぞましい右半身と、全てを包み込むようなあり得ない神気を内包する女神のような左半身を持つ謎の存在が現れ。


 その右半身は中野の全盛期を遥かに超える力を持つことが、容易に見て取れる。

 左半身は中条すら霞んで見えるほどの、神気。

 

 表現するなら、これが本当の神かとも言えるほどの強大な存在。


「あ……あれは……くっ、頭が!」


 突如頭を押さえて苦しみはじめる、中条。


「あいつ……あいつが、僕をこの世界に飛ばした諸悪の根源……」


 中野も忌々しいものを見るように、その存在を睨む。


「あいつを消すために、頑張って配下を作って来たのに……」


 だが、今の中野には配下の魔族は1人も居ない。

 その存在は、中野をもってしても1人でどうこう出来るものでは無い。

 

 流石に田中でもこれは……

 中野が歯噛みする。


「いま、良い所なんだから邪魔するな! ボンッ! パシュン! ギューン! シュー! ポン! ナッ ナンダコレハッ解ケナイゾ! コンナ強力ナ封印ガ! バカナアアア! カチャ!」

『ナッ』


 田中がおもむろに鍋の蓋を開ける。

 そこに吸い込まれる謎の襲撃者。

 

『ナンダコレハッ解ケナイゾ! コンナ強力ナ封印ガ!』


 必死に抵抗していたが、ポンという音とともに爪先まで収納される。 


『バカナアアア!』


 そして閉じられる蓋。


「えいっ!」


 それを空に現れた裂け目に放り込むと、指を鳴らして裂け目を閉じる。


「でさっ、そろそろ、物騒な考えはやめて皆が幸せになれる方法を考えないか? お前自身も含めて」

「いやいやいや、なにシレっと何も無かったことにしてんの?」

「えっ?」

「いや、なんか来ただろ! というか、なんだよその魔法!」

「【音響効果(サウンドエフェクト)】のことか? 口にした擬音と同じ結果が起こる魔法」

「セリフは音響とは言わないだろ!」

「いや、SEに笑い声とかあるじゃん?」

「……」


 ここで、初めて中野が膝を折ったのだった。

なかなか投稿できませんですみません。


でも、田中が一番好きです。

物語も、キャラクターも。

本当に物語が最終回に向かってます……寂しいですね。

まあ、閑話とか後日談がいっぱい書ける話なんで、終わらないけど。


張ったは良いけど、回収してない伏線もいっぱいあるしw

書きながら作者の意図を超えて話の展開が変わる物語で、伏線なんて張るもんじゃない。


こっちの方が面白いと思ったら、躊躇なくプロット無視してましたからwww


orz

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(仮)邪神の左手 善神の右手
宜しくお願いしますm(__)m
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