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魔王に転生したけど人間に嫌われ過ぎて辛い  作者: へたまろ
最終章:最終決戦!神と魔神
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やっぱり結局田中

「いやあ……長かった……」

 

 遠い目をして、語りだす中野。

 隙だらけである。

 とはいえ、ここにはそんな無粋な真似をするやつ(絶倫)は居ない。


「思ったより、苦労して焦ったよ」


 少しだけ表情に憂いが浮かぶ。

 物憂げな表情で、遠くを見る中野。

 これはあれだろう……


 セオザラ達が目線で合図する。


「本当なら、もっと早くに戻って来るつもりだったんだけどね」


 チラッとセオザラ達の方に視線を向け軽く微笑むと、目を閉じて頷く。

 先ほど以上に隙だらけだ。


 確定だ。

 最初に中野と目があってしまったセオザラの元に、その場に居た全員の視線が向かう。

 物言わぬ視線が、セオザラにこれ以上ないプレッシャーを与える。


 言葉にせずとも、彼等が言わんとしていることを十全に理解するセオザラ。

 プレッシャーに気圧されつつ、全員の期待を裏切らない言葉が漏れる。


「ど……どうやって……」


 その場の全員のプレッシャーを受けたため、どもってしまったのは僥倖だった。

 折しもこの場に中野が現れたことによる、動揺ともとれる。

 そして、その通りに受け取った中野が嬉しそうに笑う。


 本人は気取っているつもりだろうが、いま彼の背後にはデカデカと「待ってました!」と伝わってくるオーラが立ち上っている。


 余程自信のある立ち回りだったのだろう。


 思わず誰かがゴクリと唾を飲む。

 果たしてそれは水分補給もせずに緊張感の中、連戦を繰り返してきた渇きからなのか、中野に期待してなのかは分からない。

 分からないが、中野は自分の言葉を期待してのものだと受け取ったらしい。

 

 少年のような顔が、喜色に輝いている。

 無邪気だ。


「魔王を倒した者の末路は知っているよね?当然」


 セオザラがマスカーレイドに目で合図する。

 倒置法まで使って演出しはじめたぞ?

 元は日本人だろ? よくもまあ、恥ずかしげもなくここまで自己陶酔できるよね。

 末期だな……

 そんなやり取りが聞こえてくる。


 自分の友人が異世界に飛ばされたと想像しよう。

 よく見知った一緒に馬鹿をした彼、もしくは彼女がナチュラルにそんなセリフを吐くような人間に変わってしまったら?

 友達を辞める自信があるものばかりではないだろうか。

 

 一言で言えば、イタい。


「ああ、そう言えばそんな設定もあったな」

「設定か……呪いと言って欲しいかな?」


 まあ、ここまでで中野が復活した理由がなんとなく分かった。

 ようは、中条は中野を倒したことで魔王の資質が備わってしまったと。

 しかも、それは大魔王のものだ。


「勿論、自分にもその呪いは掛けていたさ……ただ、保険として俺を倒した奴の魔核には俺の意志も転送されるように細工はしてあったけどね」


 他の魔王のもそうすれば良かったのに。


「いま、他の魔王はと考えたか? いや、親和性の問題でね……自身の核にしかこの細工は施せなかったのだよ」


 そう言って悲しそうな表情を浮かべる中野。

 まあ、彼にとって初代魔王たちは子供のようなものだったのだろう。

 その悲しみは……やべ、分からんわ。


「いやあ、流石は創造神……全身が神気の塊だからね。核は出来どもたちまち休眠状態……一向に芽吹く気配が無いから本当に焦ったよ」


 演技掛かった喋り方が癪に障るが、我慢だ。

 ここは、中野のターン。

 あー、絶倫戻って来ないかな。


 話を聞きつつも、周囲は若干ざわついている。

 中野復活のトリックは分かった。

 が、それはそれとしてここには重大な問題が一つある。


「でも、それも気に障る事だけど、田中の残した部下のお陰でなんとかなった。彼が中条の首を取ってくれたお陰で、ようやく表に出る事が出来たわけだ。ハッハッハッハ!」


 笑うところなのだろうか?

 もはや、中野の現在の心理状態がさっぱり分からない。

 そんな雰囲気が辺りを漂い始める。


「さてと……世界を闇に染める時が来た」


 説明は終わったらしい。

 闇に染める時が来たのはいいのだが……


「どうやって?」

「はっ?」


 ストレートに聞いたやつ誰だ?


「いま、部下の魔族って誰も居ないっすよね?」


 ああ、普通の勇者か……

 急に出てくんな。

 脇役が、ドストレートに核心を突くんじゃない。

 全員が、驚愕に満ちた表情をしているじゃないか。


「全員で襲い掛かったら、流石に大魔王とはいえ一たまりもないんじゃ……」

「止めをさしたら、また復活するから封印かな?」

「そこは天使族の得意分野っしょ」


 盛り上がり始める勇者達。

 うんうん……

 まあ、魔族と戦うお仕事だからね。

 ようやく、自分達の出番とでも思ってるのかな?


「フフフ……僕を誰だと思っている? 世界には沢山の魔族が居るんだ……勿論、僕が復活したいま殆どが僕の支配下にあるのだよ……(各地の魔王と、北の魔族以外)」


 ボソッとなんか言ってる。

 北の魔族の支配権は、マイのままか。

 まあ、あいつらは俺の特別性だからね。


 そろそろかな?

 そろそろ、俺の出番かな?

 ワクワク。


「いや、今の話であって……」

「ここには、大魔王の貴方しか居ないよね?」

「行ってみたら、ラスボス戦だよね?」

「ここで、あんた倒せば終わるんじゃない?」


 勇者達が容赦なく現状を突きつける。

 その勇者達に向かって、やれやれと言った表情で溜息を吐いて下を向くと首を振る。

 やっぱり、ムカつくなこいつ。


「お前ら如きが僕に勝てると思ってるのが、ムカつくな」


 ここには、セオザラ達っていう俺の分身が4人も居るんだけど?

 ついでに言えば、俺も……


「だが、そんなに前座がお望みなら見せてやろう! 大魔王が大魔王たる所以を!」


 おお!

 中野の全身が禍々しく変化する。

 漆黒の翼が、天使のものから悪魔のものに変わる。

 そして、頭部から長く細い角が生えてくる。

 体を包み込む鎧も、黒いローブへと変わっていく。


 大魔王っぽい。


「魔族を造ったのは誰だと思ってるんだ?」


 そして右手を翳すと、周囲の黒いオーラが収束を始める。


「そうだよ……僕が生み出してるんだ!」


 いまだマスカーレイド!

 俺の念話に素早く反応したマスカーレイドが、体内から光る玉を射出する。

 形成を始めて黒いオーラに向かって。

 

 勿論光は最小限に抑え、色も黒くする。

 そして速度は亜光速。

 サイズ的にも、目で捉えられるはずはない。


 オーラが具現化を始めた瞬間に、胴体となるべく形成されたそれに玉が突き刺さる。


 そして、俺爆誕!


「パパ! 会いたかったよ!」


 そう言って、思いっきりグーパンを中野の顔に叩き込む。


 辺りが静寂を包み込む。


「パパ?」

「たっ……」


 たっ?


「た……たなかああああああああ!」

「そうです、俺が田中です!」


 想像通りの反応ありがとう。

 

「いやあ、俺も焦ったわ……いつ、登場出来るか心配でさ」

「ど……どうやって? というか、どこに居た!」


 おお、スムーズに聞いてきてくれた。

 どうやって?


「やだなあ、ずっと一緒に居たじゃん!」


 悲しいかな、俺も中野と同じことを考えてたんだよね。

 ただ俺の場合は乗っ取りじゃ無くて、中条が切り札的な必殺技を放ったら、それに乗じて出てこようかなと……

 でもって、その必殺技をマスカーレイドに喰らわせて、復活みたいな?


 あー、俺の核はとっくに中野の身体に移してたんだけどね。

 中野戦でそれをやろうと思ったら、中条に邪魔されたし。

 でもって、取りあえずマスカーレイドに回収させてたって訳。


「ずっと?」

「そっ、お前の核が空気を読まずに復活しないように、ずっと優しく包み込んでてあげただろ?」

「なかなか復活出来なかったのって……」

「俺のせいだけど、何か?」

 

 おー、中野がプルプルと震えてる。

 

「それにしても、こいつも結構良いキャラしてたよね?」

「な……中条!」


 取り敢えず身体を作り出して、中条の意識を突っ込んだそれを持ちあげてプランプランと振ってみせる。

 思いっきり気を失ってるけど。

 ちなみに、神気は完全に封じてある。

 絶倫大好きダークマターで。


「お前ら、日本人の癖にこじらせすぎ」


 中条を横に置くと、黒い影が凄い速さでよじ登って来る。


「ウララも元気だったか?」

「キュッ!」


 そして、スッピンとチビコも駆け寄ってくる。


「お待ちしておりました、我が主よ」

「元魔王さまー! おかえりなさい!」


 二人は俺が、中条の中に居るのに気づいてたみたいだけどね。

 まあ、スッピンは神気を読むのに長けてたからね。

 当然、中野が潜んでいるのにも彼女は気付いてたけど。

 

 チビコは、なんとなくでスッピンに直接質問したらしい。

 俺のやりそうな嫌がらせを考えたら、中条の近くに居るんじゃないかという結論に至ったとか。

 恐ろしい。


 いや、俺が分かりやすいだけか?


 一人ぼっちが寂しくて三人称で中継ごっこしてたけど、とうとう我慢出来なくなったわ。

 いやいや、だってさ……

 こいつら、元々日本人なのに染まりすぎでしょ?


 でもって、滅茶苦茶近くで観察されてるのに気付かないとか。

 鈍すぎ。

 

 割と内部から、中条に精神的嫌がらせも出来たし。

 脳の近くに居座って一生懸命意識つなげようとしたけど、それはならなかった。

 ちょっとした精神支配は掛けられたけどね。


 あと、時々自然と俺に寄った考え方になってたりして、笑えた。

 

 中野大人しいな……

 やり過ぎたかな?


「くそがっ! こうなったら、他の世界の全魔族を持ってお前を殺してやる!」

「あっ、無理だと思うよ? 大分前にウロ子に頼んで、北の幹部と中央の幹部を各世界に派遣してもらってるから……今頃、ムカ娘やライ蔵、ヘシャゲ子、鬼の四天王や、ボクッコとか殆どの改造魔族達が制圧してんじゃないかな? それぞれの世界の魔族と人間を」


 俺の言葉にポカンとした表情を浮かべる中野。


「うわあ……これって、ガチのボッチって奴じゃないっすか」

「何これ? 酷くない?」

「北の元魔王ってのは悪魔か!」

「いや、悪魔の所業どころじゃないでしょ」


 勇者達がざわついている。

 そんなに俺って酷いことした?


「西野と南野はこっちに付くからね? ケビンが懇切丁寧に話し合いしてたから」

「ヨンダカ?」

「呼んでないっ! っていうか、どこから来た!」

「タナカ居るトコロに、ケビン現れる。コレ常識!」


 良く分からんが、ケビンの名前出した途端に空間が歪んで現れやがった。

 本当に、追跡魔法的なもんかけられてんじゃないか?


 あっ、中野の口からなんか出てる。

 眼も虚ろだし。

 大丈夫かな?


 おーい! 

 なかのー!

 帰ってこーい!


田中が戻ってきました。

なんか色々と酷い……

あっ、平常運行でした。

感想お待ちしてますm(__)m


下の方に、新作のリンク貼ってます。

見て頂けると嬉しいですm(__)m

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新作更新始めました!
(仮)邪神の左手 善神の右手
宜しくお願いしますm(__)m
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