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魔王に転生したけど人間に嫌われ過ぎて辛い  作者: へたまろ
最終章:最終決戦!神と魔神
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中条の誤算

「よくも絶倫殿を!」


 カインが地面を蹴って、一瞬で中条に肉薄する。


「人間風情が……頭が高い!」


 そのカインに向けて放たれる斬撃。

 セオザラ達の目には遅すぎる斬撃である……が。

 荒神達には十分に脅威になりうる速度。

 周囲の勇者達に至っては、一瞬煌めきが見えたくらいの認識。


 すなわち、北の世界級の攻撃を持って神気を纏った一撃がカインに放たれる。

 カインの身体が左右真っ二つに割れ……掻き消える。


「残像だ」


 即座に背後から聞こえた声に、中条が慌てた様子でその場を飛び退る。

 だがさらに先回りをしたカインによって、その背中に攻撃を加えられ吹き飛ばされる。


「ば……馬鹿な!」


 地面を転がり受け身を取った中条の眼前に、カインが迫る。


「ちょこざいな!」

「遅い!」


 突っ込んで来たカインに向かって、衝撃波を放つがそれすらもあっさりと躱される。


 ちょこざいなとか言う奴初めて見たわ。

 呑気にそんなことを考えながら、セオザラ達は一息つけそうだとばかりにその場に座り始める。

 いつの間にか用意された椅子の上に。


「お茶、入れますね」

「宜しく」


 テキトウエルがかいがいしく、ティーセットの準備を始めるその横では……


「ブレイブエクストリーム!」

「くそっ! 神を相手に聖気を放ってダメージが与えられ……なっ、闇属性だと!」

「すまんな……間違えたわ。イビルエクストリームだったか」


 中条を圧倒するカイン。


「凄いぞ! あの男!」

「勇者の剣技と、魔族の剣技を使う男か」

「やばい、痺れる」


 場が沸き始める。

 自分達に危害が来ないと知って、他の勇者達にも観戦する余裕が出て来たようだ。


「調子に乗るな!」

「おっと、カイン殿の邪魔はさせんよ?」


 そこに割って入ろうとしたスッピンに対して、荒神が矛を向ける。


「くそっ!」


 スッピンが苛立たし気に、向きを変えて荒神に剣を浴びせる。

 それをどうにか耐えた荒神が、お返しとばかりに鍔迫り合いの状況から電撃をお見舞いする。


「じゃあ、私が「チビコちゃんの相手は、わたし!」


 代わりにチビコが中条に助太刀しようとして、辰子に止められる。


「今度は本気で行かせてもらうから」

「えー、なんで邪魔するの!」


 辰子の肌に鱗が現れている。

 半竜化状態だ。


「拙者は?」


 出遅れた蛇吉が手持無沙汰にしていると、セオザラが手招きする。


「そこで、タキシードでも着て立ってろ。執事が居た方が映えるだろ?」


 指を鳴らして、蛇吉の衣装をタキシードへと早変わりさせると、傍に控えさせる。


「まあ、不満は無いですが」


 カインと激しい戦いを繰り広げている中条。

 スッピンと荒神も、なかなかにせっている。

 

「防御に専念すれば、防げなくもない」

「防御だけで、私が倒せると?」

「一応、攻撃もしているのだがな」


 矛をぶつけるたびに、スッピンの剣を通して電流が走る。

 地味に嫌がっているようだが、距離を取ったらそれこそ相手の思うつぼだ。


 堪えるように接近戦での決着を急ぐスッピンだが、ここに来て荒神の動きにキレが出始めている。


「前戦った時と、全然違うじゃん!」

「なんだか、力が沸いてくるみたい」


 辰子の攻撃は、チビコの【絶対障壁(タナカガード)】の前にダメージを入れる事は出来ていないが、衝撃だけでチビコの反撃を抑える程には力強い。

 徐々に加速する攻撃を前に、スッピンとは打って変わって防戦一方のチビコ。

 その表情は、苛立ちが隠せていない。


「なんだその光は! どこからそんな力が!」

 

 周囲の勇者達の声援を受ける程に、カインの漆黒の鎧が輝きを増していく。

 

「俺の、溢れ出るカリスマかな?」


 とぼけたことを言いながらも、徐々に中条を追い詰めていくカイン。

 そして、周囲の勇者達の期待が最高潮に達し羨望の眼差しが向けられた時、カインはまるで勇者達の力を受け継ぐかのように加速して、中条の喉元に剣を突き立てる。


「うおおおお! カイン様!」

「「「「カイン! カイン!」」」」


 会場にカインコールが巻き起こる。

 横で呑気にお茶を飲んでいるセオザラ達まで、立ち上がって「カイン! フー!」とかって叫んでいる。


 そのあまりの力強さ、神々しさに1人の勇者が呟く。


「王だ……あれこそ、勇者の王だ!」


 その呟きは徐々に周囲に伝染していき、他の勇者達も騒ぎ始める。


「我らの王だ!」

「おおおお! カイン様!」

「一生ついて行くぜ!」


 その場に居た全員が跪いて頭を垂れると、カインの腕が黄金の輝きを放つ。

 KNIGHTの文字姿を変え、KINGの文字が現れる。

 HとTはどこかに消えてしまったようだ。


 と同時に、カインの鎧が白く輝かしいものに変わる。


「これは……力が!」


 カインが自身の変化に戸惑っている間に、体勢を整えた中条が一旦距離を取る。

 そして、不意打ち気味に掌から、神気による光の一撃を放つ。

 目も眩むような光を放ち、一瞬で目標に到達する文字通りの光線。

 だが、その一撃すら今のカインには通用しない。


 簡単に弾かれる中条の攻撃。

 カインがゆっくりと手を振ると、先ほど中条が放ったものより強大な光線が放たれる。


「ふざけるな! たかが人間が神を超えるなど! あってなるものかあああああ!」


 光に包まれながら、中条が憤怒の雄たけびを上げる。

 だが、それは負け犬の遠吠え。

 叫ぶ以外に何かが出来るわけでもない。


 光が収まった後には全身から煙を上げ、皮膚を半分以上爛れさせた中条が片膝を付いて肩で息をする。

 その目の焦点は定まらず、誰の目からみても満身創痍だった。


 辺りを静寂が包み込む。

 

「クックック……」


 そして、突如漏れ聞こえる籠った笑い声。


「見事だ……」


 さしもの中条も敗北を認めざるを得なかったのだろう。

 どうにかカインに視線を定めると、満足そうに微笑みかける。


「それはどうも」


 対するカインは無情にも、そのまま中条に止めを刺しにかかる。

 

「なっ! カインやめろ!」


 スッピンが叫ぶが、荒神に阻まれて中条に向かう事は出来ない。

 そして、カインの剣が中条の首を刎ねる。


 これで、決着。

 誰もがそう思っただろう。


「グフッ……」


 カインが口から血を吐いて倒れるまで。

 スローモーションのように、カインがゆっくりと前に倒れ込む。

 カインの背中には、中条の手が抜き出ている。


「やばい!」

「ここに来て、まだ力を隠していたのか?」

「まあ、カインが良いとこを持っていくなんてありえないよね?」

「いや、助けないと」


 セオザラ達が慌てて立ち上がる。

 その瞬間にティーセットはどこかに消え去っていた。


「ていうか、いい加減しつこくないか?」

「そうだよね?」

「マヨヒガ!」


 カインを一瞬でマヨヒガが回収する。


「邪魔だ!」


 だが、次の瞬間巨大な腕が会場に転がり落ちる。

 中条がカインを回収しようとした腕を切り落としたのだ。

 初めてマヨヒガがダメージを受ける。

 

「痛いけど、腕は二本あるからね」


 聞きなれない声が周囲に響き渡る。

 重低音を利かせ、ずっしりと頭に直接響く声。

 そう、マヨヒガの声である。


 そしてなんでもないように、左腕を出してカインを回収するマヨヒガ。


「あと、基本的に腕はオプションだから、また生えるよ?」

「そうか……それが?」


 切られたはずの右腕が中空に現れ中条に襲い掛かるが、片手で簡単に払いのけられる。

 巨大な腕の渾身の一撃が、細身の男の腕で容易く逸らされたのだ。


「随分と()の身体を痛めつけてくれたね?」


 首の無い中条が、自分の頭があるあたりで手を振っている。


「まあ、お陰で取り戻す事が出来たから良いけどね」


 そして現れる新しい首。

 その顔を見て、セオザラとマスカーレイドがニヤリと笑う。


「ようやく真打登場か?」

「やっぱり生きていたか……」


 そうその顔は、あどけなさの残る少年のような顔つき。

 それでいて、どこか達観したかのような表情というアンバランスさ。


「中野!」

「どうも、田中の分身の皆さん……お久しぶりですね?」


 全身を黒と白が入り混じったオーラが包み込む青年。

 

「大魔王改め、創造神中野……いや、聖魔神中野とでも名乗っておこうかな?」


 神気と魔力の両方を纏った状態で、翼の半分を黒く染めあげた魔人。

 そう、そこに現れたのは大魔王中野だった。

 

個人的には中野も好きです。


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新作更新始めました!
(仮)邪神の左手 善神の右手
宜しくお願いしますm(__)m
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