表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に転生したけど人間に嫌われ過ぎて辛い  作者: へたまろ
最終章:最終決戦!神と魔神
164/172

創造神中条爆誕

「お……お前ら……」


 セオザラが、冷や汗を垂らしながら荒神たちの方に目を向ける。

 他の3人もゆっくりと、そして責めるような視線を配下に送る。

 だが、すぐに硬直する。

 

 全力で褒めてとばかりに、こちらをキラキラとした小動物のような眼で見つめてくる4人に。

 特に辰子は、田中の子供ということもあって無下にはできない。

 

 くっ……

 もう、これで良いんじゃないか?

 巨悪の根源はここに倒された訳だし。

 むしろ、異物(転生者)である自分ではなく、この地の戦士たちが終わらせたことが重要なのかもしれない。


 そんな風に諦めにも似た感情で、それぞれが4人の下にゆっくりと歩み寄っていく。

 荒神、蛇吉、絶倫が跪く。

 そして、辰子もそれにならって気をつけの姿勢で田中たちを待つ。


「よ……よくやっ


 その時、背後に巨大な神気が天上から降って来るのを感じる。

 激しい光の奔流が、ホールの天井から滝のように降り注ぎ中条の身体を直撃する。


「なっ!」

「何が!」

「【重力の墓場(シュバルツシルト)】!」


 セオザラと、マスカーレイドが期待に満ちた目で背後を振り返った瞬間に、絶倫の無情なる奥義がさく裂し中条の遺体が一瞬で圧縮される。


「ぜ……絶倫?」

「ふふ……相手に復活や変身の兆しが見えたら、出鼻をくじけとは田中様の基本ではないですか」


 全員の視線を集めた絶倫が、右手を中条の遺体があった場所に向けたままジョ○ョ立ち宜しく、疲れそうな角度で立って左手で顔を覆う。

 その左手の指の隙間から覗くニヤリと笑う姿が、恐ろしく邪悪である。

 

「いや、あってるけどね!」


 もはや、何を言っても無駄とばかりにマスカーレイドが大げさに溜息をつく。


「とはいえ……失敗したようですな……ほっほっほ」


 神気が圧縮されて、黒いピンポン球のようになった遺体だった何かに留まり続けると、その何かに罅が入る。

 そして、その罅から閃光のように放たれる光。


 カッコいいじゃないか……


 そしてセオザラ、マスカーレイド、絶倫が憧憬の眼差しを向ける何かが弾けると、6対の羽で体を隠し俯き加減で立ち上がる天使が現れる。

 頭頂部しか見えないので分からないが、どうやら中条が復活したのだろう。


 そして、バサッと開かれる6対の翼。

 周囲を金色の光を放ちながら、何枚かの羽がヒラヒラと舞う。

 全員の視線が、その雄々しくも儚い存在に集中する。


 両手を下方向に広げ、左足を気持ち後ろに下げて交差させ爪先を伸ばした状態で微妙に浮いた後光の差している大天使のような人物。

 閉じられた目がゆっくりと開かれる。

 そして現れる金色の双眸。


 ちょっと外人っぽくなった中条。


 そして、止まる周囲の時間。

 ざわつき。

 緊張感が辺りを包み込む。

 

 扉に殺到していた勇者や、天使達も壇上の中条を見て固まっている。

 中条が顔を上げると少し伸びた髪は白銀に変色し、煌めきを放ちながら一度広がったあとでまとまりを見せる。

 頭の上には2重になった天使の輪が、中に見慣れない文様を浮かべている。

 中条を襲った神気が、一度渦を描いて中条を飲み込んだかと思うと、その身体にピタリと収まるかのように収束し身体の表面を包み込む。


 神秘的な光景を体現した、復活のシーン。

 

 ゴクリと誰かが唾を飲む音が、静まり返ったホールでは大きく感じる。

 

「へ……」

「へん……」

「変態だー!」

「変態が出たー!」

「ヘンタイ! ヘンタイ!」

「うわぁ! 無いわー」

「ちょっ、創造主様……やっぱり」

「ちっちゃくね?」

「汚くて見られないよ!」


 そう……

 荘厳な復活にあって、彼は荒神達の総攻撃に加え、止めともいえる絶倫の一撃で衣服が消し飛んでいたのだ。


 その状態で、身を隠していた翼をバサッと広げる。

 これは、どう考えても夜道でコートをバサッと広げる変態さんだ。


「えっ?」


 思ったのと違う周囲の反応に、新生中条が慌てて辺りを見渡す。

 そして、変態という言葉に……いや、ちっちゃくね? という言葉に自分の身体を見る。


「なっ……なっ……」


 ここで、初めて自分の状態を確認したのだ。

 よく考えて欲しい。

 格好良く復活して、箔をつけるために翼バサーをやってみたら何も装備してなかったのだ。

 白磁のようだった肌が一瞬で真っ赤に染まり、そして青ざめる。


 直後……


「またか、このド変態がーーーー!」


 背後から放たれる、無詠唱のブレイブスラッシュ。


「へんたい♪ へんたい♪」


 そして、嬉しそうな女の子のはしゃぐ声。


「スッピン殿? とチビコ殿?」


 その存在に気付いた荒神が声を掛ける。


「あらあら、皆さんお揃いでっていうか、早く服を着ろこのド変態!」


 荒神の方に一瞬笑顔を向けたスッピンが、再度中条にブレイブスラッシュを手刀で放つ。

 

「無駄に頑丈になったみたいで、むかつきますね」


 だが、二発とも中条を包み込む神気に阻まれて今回はダメージが無かったようだ。


「あ……ああ、すまん」

  

 そして、わりかし素直な中条。

 一瞬で神衣を作り出す。

 純白のローブだ。


「やっぱり変態だった」

「今までの下半身事件はてっきり、間違いだったと思ってたのに」

「流石……人とは違うことを平然と「いや、変態だから」


 中条がざわつく部下達をキッと睨み付ける。

 それだけで、視線の先の勇者達が拭き飛ばされる。


「これは……」

「復活おめでとうございます……死の縁から舞い戻ったことで、真なる神格を手に入れたようですね」


 スッピンが片膝をついて、中条を迎える。


「そうか……これが、本当の神の力か」


 中条が手を閉じて広げるだけで、その手から神気が弾けて溢れ出る」


「クックック……」


 思わず笑いが込み上げる。


「フハハ……」


 俯いたまま、声を出して笑う。


「ハハハハハハッ! これが……これが、真なる力!」


 笑いの三段活用全開で、周囲に神気をまき散らす中条。


「スッピン! いつまでそっちに居るんだ!」

「そうですよ! スッピンさんは田中様の忠実な僕だったはず」

「チビコちゃんも、そんな奴から早く離れて!」


 蛇吉たちがスッピンと、チビコに声を掛けるが二人は特に気にした様子もなく中条の横に立って武器を構える。


「おいおい……」

「ああ……まあまあ強くなっちゃったけど」

「どうするの?」

「いやー、荒神達じゃ無理だろ……てか、俺達でもしんどいな」


 中条の能力を的確に把握したセオザラ達、田中sがこそこそと相談をする。


「流石に、これは……」

「頭が高い!」

「グッ!」

「ガハッ!」

「うっ!」

「あーあ、荒神達じゃ気合だけで、あの様か」


 中条が声を発すると、その場に居た田中s以外の面々が地面に磔にされる。


「これが……神の力……凄いじゃない」

「自画自賛だよ」


 思わずこぼした中条に、テキトウエルが苦笑いを浮かべる。


「黙れ、雑魚が」

「はっ」

「えっ?」

「おっ!」


 そして、テキトウエルに向かって唐突に放たれる無動作でのブレイブスラッシュ。

 いや、ゴッドブレイブスラッシュか?

 当然のように魔法障壁で防がれたが、その一撃で障壁が砕け散る。


「防がれたんだけど?」

「壊されたんだけど?」


 中条が不満そうに、スッピンに問いかける。

 同時に、テキトウエルも不満そうに他の3人に問いかける。

 流石日本人達。

 物凄く自信過剰である。


 といっても、テキトウエルは日本人ベースの現地人に近いが。

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作更新始めました!
(仮)邪神の左手 善神の右手
宜しくお願いしますm(__)m
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ